ビジネスの閉塞感を突破する鍵は「サイエンス」よりも「アート」?
みなさんは、仕事や経営に「美意識」の視点を取り入れていますか?
「美意識」の視点を仕事に取り入れる、と聞くと、ファッション業界や美容業界などの話のように感じる方も多いのではないかと思います。しかし実は、「美意識」は業界を問わず誰しもが意識したほうがいい視点なのです。
このビジネスにおける「美意識」の重要性を中心に伝えている本に、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(著:山口周、2017年、光文社新書)という一冊があります。
この本では、経営に必要なものに「アート」と「サイエンス」の2つを挙げており、この両者なら、実は「アート」のほうこそが大切だ、ということを述べています。
ビジネスでの「サイエンス」偏重の思わぬ落とし穴
とはいえ、「アート」と「サイエンス」なら、私たちがビジネスでの重要性を感じやすいのは「サイエンス」のほうではないでしょうか。
「サイエンス」の重要な要素は「論理」と「理性」です。その中でも「論理思考」は、ビジネスの現場での必須能力であるように語られることが多いものです。
しかし、ビジネスでの「サイエンス」重視には、いくつかの落とし穴があります。まず、「サイエンス」の肝である論理思考のスキルは、問題を構成する因子が複雑に変化してしまう「VUCA(※)」の時代では機能しにくくなっている現状があります。
※「Volatility(変動性・不安定さ)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった単語です。
また、そんな時代状況では、論理的な判断を下すために必要な情報を集めることも困難になってきており、組織の意思決定が停滞しやすい状況もしばしば起こりがちです。
そして、もう一つ。「論理」と「理性」の世界では、突き詰めると他の人と同じ答えしか導けなくなりやすく、「差別化」に苦しむという問題に直面しなければなりません。結果、「論理」偏重・「感性」軽視のビジネスは、レッドオーシャン(競争が激しい既存市場)に飲み込まれてしまうのです。
最先端のビジネスシーンで注目を集める「感性」と「直観」
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』が提示するのは、論理的にシロクロをはっきりできない問題に答えを出すとき、頼れるものこそが個人の「美意識」であり「アート」だ、という考え方です。
「アート」の重要な要素は、「感性」と「直感」。「感性」の意思決定の基準は、「美しさ」や「楽しさ」など、感情に訴えかけるものです。本書では、ビジネスにおける「感性」を重視した経営者として、ソニーの井深大氏とアップルのスティーブ・ジョブズ氏を挙げています。
また本書では、
・欧州のエリート養成校では特に「哲学」に代表される「美意識の育成」が重んじられてきたこと、
・ハーバード・ビジネス・レビューの記事によればMBAに比べてMFA(芸術学修士)の価値が上がってきていること、
・美術系の大学院大学がグローバル企業の幹部トレーニングを始めてきていること、
・2015年にマッキンゼー&カンパニーが大手デザイン会社を買収したこと、
・そして「デザイン思考」がビジネスの現場で存在感を高めつつあること
など近年のビジネスと「アート」にまつわる世界的なトレンドを紹介しています。
ビジネスで「アート」と「サイエンス」のバランスをとるためには?
経営学者のヘンリー・ミンツバーグは、「アートは組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ステークホルダーをワクワクさせるようなビジョンを生み出す」と言っています。
また、「サイエンス」側が「アート」側を批判するのが非常に容易であるのに対して、その逆が難しいことについての警鐘も鳴らしてもいます。
ビジネスにおいて「アート」と「サイエンス」のバランスをとるために大切なのは、まずトップに「アート」を捉えて脇を「サイエンス」で固める、という方針をとることです。
トップが「アート」の担い手であることで歴史的に強力なリーダーシップを発揮した事例として、ウィンストン・チャーチルとアドルフ・ヒットラーという二人の政治家が、共に本格的な絵描きであったことは注目に値します。
いかがでしょう?ご自分や組織が「美意識」や「アート」をどのように取り入れているかを改めて考えてみると、「ビジネスの閉塞感」を突破する鍵が見つかるかもしれません。
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