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梔子


7月21日

雨のち曇りのち晴れ。
暑い。

7月の暑さとは、こんなにきついものだっただろうか。
暑過ぎてこのところ1日1回は「死ぬ」と呟いているような気がする。

天候による災害で、各地が悲鳴を上げている。
最近は「地球がやばい」というワードがトレンド入りしているとか、していないとか。

・・・・・・・

日々の様々なことを憂いていたら、ついに顔まで険しくなってしまった。
慌てて《おとな電話相談室》に電話をする。

相談員のKEKKOさんは、低音のソフトな口調でこう言った。


「 美しいもののことを考えなさい
美しいものを見て、美しい音を聴きなさい
そして おいしいものを食べるの 」



それだけ言うとおもむろに
「そ・ん・だ・けー!!」
と耳をつんざくような高音で叫び、一方的に電話は切れた。

・・・・・・・

通話ボタンを「切」にして、テーブルにスマホを置く。
眉間のシワがさらに0.5ミリぐらい深くなったように感じたけれど、気を取り直して「美しいもの」のことを考えてみた。

朝つゆに濡れた梔子の白。
今朝見た蜥蜴の俊敏さ。

調べてみたら、トカゲは「神様の御使い」としてとても縁起が良いらしく、クチナシの花言葉は「とても幸せです」だった。

確かに、美しいものは人を幸せにする。

鏡を見たら相変わらず顔は険しいままだったけれど、心は幾分軽くなっていた。

夜は久々に茄子の揚げ浸しでも作ろうか。
椅子から立ち上がり、一つ伸びをして、エプロンを身につける。


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