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【三田紀房インタビュー】時代もまちも急速に変わる。その変化を前向きに捉え、受け入れていきたい

※この記事は武蔵野市が発刊する『季刊むさしの』春号に掲載されたものを再掲載しています。

ドラマ化もされ大ヒットした漫画
『ドラゴン桜』などで知られる三田紀房さん。
吉祥寺に仕事場兼自宅を構えて12年、変化する時代や社会、
まちをどう見つめているのでしょうか。

三田紀房:
 吉祥寺駅から徒歩圏内にちょうどいい土地を見つけて、仕事場兼自宅を建てたのが2008年のこと。

 駆け出しの頃、先輩の漫画家に「住むところだけはケチってはダメだ」と言われたことがずっと心に残っていました。漫画家は家にこもって仕事をする時間も長いので、その環境をしっかり整えることが次の作品を生み出すベースにもなる。思い切って投資することが必要なのだな、と思いました。

 住む前は、吉祥寺は時々買い物や食事に出かけるまちという感じで、自分が住むイメージはなかったのですが、住んでみると想像以上に居心地がいい。前は吉祥寺で食事をするともっぱらバスで練馬区の自宅に帰っていたのですが、今はサンダルでぶらっと出かけて行って、歩いて帰って来られる。
「そうだ、もうバスに乗って帰らなくていいんだ」という解放感は得難いものがあります(笑)。

 現在、2本の漫画を並行して連載していますが、1本は自宅の仕事場に若いアシスタントたちが集まって手描きで作業をします。今は漫画に限らず、どの分野でも若い人たちが働きやすい環境をいかに整えるのかが、ものをつくる以前に大切です。

三田先生が連載している2作品。


 漫画業界では珍しいと思いますが、ウチは基本的に残業はナシ、そして週休3日なので年間でいうと160日程度休暇をとれる体制をとっています。空いた時間を自分の創作やインプットに充ててほしいんです。

 社会や時代は急速に変わるし、働き方も変わる。まちも同じく、変わっていくものです。

 いつも通っていたあの店がなくなったとか、人は変化を嘆き、恐れるものですが、僕は時代や社会の変化を受け入れて、そこで自分が何を感じるのかが重要だと思っています。

 地方も含めて多くの繁華街は大通りを行き来するだけで完結してしまうケースが多いのですが、吉祥寺の駅前は碁盤の目状に配置された道に個性的な店が連なり、回遊する楽しさが味わえる全国でも珍しい構造のまちです。

 これからこのまちがどう変わっていくのか、住民の一人として、その変化を受け入れながら楽しみたいと思いますね。

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三田紀房(みた のりふさ)
1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。2005年、『ドラゴン桜』で講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。現在、『アルキメデスの大戦』『ドラゴン桜2』を連載中。

「写真/千倉志野 取材・文/さくらい伸」


武蔵野市「季刊むさしの春号」:
http://www.city.musashino.lg.jp/koho/kikan_musashino/index.html

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この記事は、『季刊むさし』の春号に掲載された記事です。

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