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ステイホームで貯めたもの

今年は2023年。
コロナ禍が完全に明けたわけではないけれど、行動の制限はほぼなくなった。

2020年の春、突然家から出られなくなった。
こんなことが起こるのか、ということが起こってしまった。

自宅と職場、自宅と生活必需品を買いに行く、くらいの必要最小限の外出をする程度で、ほぼ家での生活になった。

元々どちらかというと出不精なので、家から出られないことはそれほど苦にはならなかった。
マスクが足りない状況だったので、手持ちの布でミシンを使ってつくってみたり、庭のプランターで野菜を植えてみたり、持て余した時間を埋めるために、出かけられず何となく重石を乗せられたような気持ちを払うために、家でのあれやこれやをやってみていた。

そんな中、楽しみがあった。
それは、プロ野球の試合をテレビで見ることだった。

たまたま、かつて高校野球に出場して、その時になかなかおもしろいピッチングをしていて応援していた子が、実はそのまま大学でも野球を続けており、プロ野球チームの育成選手として2018年に入団し(全く知らなかった)、その年の8月に支配下登録されたよ、と夫から聞き驚いた。

え?あのピッチャー、プロになったの!?

そこから、私のプロ野球観戦が始まった。

小さい頃は、父がテレビで巨人戦をよく見ていたのを覚えている。
当時は、現在の巨人の原監督が若手選手だったような…。
中学高校生になって、桑田や清原くらいが同世代だったので、何となく目立つ選手だけを知っている程度だった。

野球のルールは何となくは分かるものの、同じ対戦相手と何度もやっているプロ野球のペナントレースは、毎回1回勝負の高校野球に比べて、何となく真剣味が足りないように感じられて、あまり興味が持てなかった。

しかも、やはり野球は男性が見るものと相場が決まっていた時代。中には緒方が好き!という強者の職場の先輩もおられたが、あまり好きな球団を口にする女性には出会ったことがなく、私自身もどこが勝とうが負けようが、そんなに興味関心がなかったのである。

応援したい選手ができたことで、その選手が出てくる試合を見るようになった。すると、同じチームの選手の名前を少しずつ覚えられるようになった。

すでにこのチームを応援してます、という人は、そのチームの選手をあだ名や呼び捨てで呼んだりしている。私はまだまだプロ野球の何を知っているわけでもないのに、いきなり選手をあだ名で呼べるほどではないと恥ずかしさがあって、「○○選手いいよね。」などと言っていた。

応援していたピッチャーは、2018年、2019年こそ活躍できていたが、段々出番が回ってこなくなっていた。
2020年、コロナ禍になり、4月には緊急事態宣言が発令され、ステイホームを余儀なくされた。プロ野球は開幕が3ヶ月延期になった。しかも無観客での試合となった。

する事がない中、少しずつ変化のあるもの、その場で打ち込めるものがあるのは精神的に救われる部分があることを感じた。
例えば朝ドラだったり、連続ドラマだったり、草花や植えた野菜の成長、そしてほぼ毎日行われる野球のペナントレースであった。

そして、1軍にあがれない選手は、2軍戦をやっていることを知った。2軍のことを「ファーム」ということすらしらなかった。

推しのピッチャーは、今どんな具合なんだろう?そろそろ1軍に出られるのだろうか。そんなことを気にしながら、ファーム戦も見るようになっていた。

その頃には、ピッチャーの特徴や継投、バッターの打順の役割、審判のくせ、1イニングことの投球の組み立てなど、見所はあちらこちらにあることを知った。

また、オフシーズンになればNHK-BSで球辞苑という、ややマニアックな番組があったおかげで、さらに野球のことを詳しく知ることができるようになった。

かくして、ここ2、3年でようやく一般的な野球好きの人のように、野球の観戦ができるようになったのだった。

そうなると、ぽろぽろ聞こえてくる、野球に敏感な人たちの声。
今の時代、SNSやインターネットの発達で、自分の好きなことしか見聞きしなくなっていると言われているが、まさに、急に野球関連のものが自分の周りに浮き出てくる感覚である。

それぞれの人が持っている興味の輪。その人を取り囲んでいて、その人を浮かび上がらせる。

コロナ禍で外にでられなかった間に、それぞれが自分の中で思い巡らせ、強めていった興味の輪があったに違いない。じっとしていたからこそ先鋭化していったというか。より研ぎ澄まされていったもの。
それ以前には、外で行われているあれこれに時間を奪われ、意識も拡散され、集中はあまりできていなかったかもしれない。

今はまだマスクをしたりしなかったりではあるが、再び外に出られるようになり、人々は前のように、それぞれ元の生活に近い生活を始めている。

元々出不精の私にはそれほど変わらない毎日だけれども、ほぼゼロだったのに、振り返るとコロナ禍に随分と野球貯金が貯まったものだなあと感じている。

どこまで続く変わらないけれど、しばらくは見続けて応援してみようと思っている。

#野球の応援
#プロ野球観戦

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