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●●●●ステーション事件(平成25年7月17日東京地裁)

概要

会社の従業員が会社に対し、会社が従業員に対し残業代請求を断念させる目的で弁護士をして警告書を送付させたことにより、従業員の裁判を受ける権利が侵害され、精神的苦痛を被ったとして不法行為に基づく損害賠償金、時間外手当及びこれと同額の付加金の各支払を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

元従業員は店長として店の運営を委ねられていたほか,会社の指示により,オーナー研修,フランチャイズアドバイザー業務,数名の部下の運営する店舗の売上げ管理や指導育成,人事考課等の業務,幹部会への出席等を行っていたものと認められるが,少なくとも元従業員・会社間の役務提供契約においては,契約書が締結されていないこともあって,報酬と対価関係に立つ委託業務の範囲が明確でないというほかないし,会社が貢献手当,社長賞等の名目で別途対価を支払っているというオーナー研修,アドバイザー業務,会社代表者が元従業員に特に依頼した日常業務以外の業務等について,元従業員に諾否の自由があったとうかがうことはできず,少なくとも元従業員・会社間の役務提供契約については,なお雇用契約としての性質を有するものと認めるのが相当である。

元従業員・会社間の役務提供契約は雇用契約であると認めるのが相当であるところ,労働基準法37条1項の「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」の基礎となる賃金には,同条5項,同法施行規則21条に限定列挙されたいわゆる除外賃金に実質的に該当するもの,時間外手当の弁済として支払われたもの(いわゆる固定残業代を含む)を除き,会社から元従業員に対し労務提供の対価として支払われたすべての金員が含まれるものと解される。

元従業員が営業時間(平日7時間,土曜日6時間)の定めがある店を一人で運営しているという当事者間に争いのない事実に照らせば,少なくとも元従業員には管理監督者に該当するというほどの労働時間についての裁量があるものと認めることはできないから,元従業員が管理監督者に当たるものと認めることはできない。

会社は,従業員との契約について,一般及び特級という2種類の雇用契約とは別に,インターン契約という類型を設け,業務委託類似の契約として,一般の雇用契約とは異なる処遇をしていたこと,一般の雇用契約においては,遅くとも平成22年3月から固定残業代制度が採用されていたこと,元従業員はインターン契約の契約者として扱われていたことが認められ,これらの事実によれば,本件において,時間外手当の未払金と同額の付加金を課すまでの必要はないというべきである。

元従業員は,本件警告書受領後も,会社に対する時間外手当の請求に向けた行為を精力的に行っているのであって,本件警告書により畏怖するなどして精神的苦痛を被ったこともうかがわれない等から,元従業員の不法行為に基づく損害賠償請求は,理由がない。

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