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ゲーム開発会社における業務命令無効確認等請求事件(令和4年3月29日東京地裁)

概要

被告会社と期間の定めのない労働契約を締結していた原告が、被告から原告が担当していたゲーム開発のディレクター業務の職務停止等を命じられたところ、本件業務命令は権利の濫用として違法、無効であると主張して、被告に対し、本件業務命令に原告が従う義務がないことの確認と、違法な本件業務命令によって多大な精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づき、慰謝料等の支払を求めた。

結論

一部棄却、一部却下

判旨

本件業務命令の有効性について,元従業員は,会社との間で本件労働契約を締結し,会社の指揮命令に従って労務を提供することを約したものであるから,会社は,本件労働契約に基づき,元従業員に対し,業務上の必要性に基づき業務命令を発することができ,そして,本件業務命令には本件ゲームを発売予定日までに完成,発売するという明らかな業務上の必要性や合理的な目的が認められ,本件業務命令の内容は上記目的を実現するために必要で相当なものであると認められること,会社は,本件業務命令により元従業員が会社の業務に従事していなかった間も賃金を全額支払っていること,本件業務命令後も,対外的には元従業員を本件ゲームのディレクターとして扱い,本件ゲームのスタッフロールにも載せたり,元従業員が雑誌などのインタビューに応じることができないことについても「体調不良」を理由にするなど,元従業員の名誉を守るための配慮をしていたことが認められることに照らすと,本件業務命令に元従業員が主張するような動機・目的があったと認めることはできないこと等から,本件業務命令は,有効かつ適法である。

本件業務命令は,会社の人事権の行使として適法であると認められるから,これが違法であることを前提とする元従業員の不法行為に基づく損害賠償請求は,理由がない。

元従業員は,本件業務命令に元従業員が従う義務のないことの確認も求めているが,元従業員は令和3年4月30日をもって会社を解雇されており,上記確認請求は,本件口頭弁論終結時において過去の法律関係の確認を求めるものとなっているところ,本件で,過去の法律関係であるにもかかわらず,解雇後に本件業務命令に従う義務のないことの確認を求めなければ元従業員の現在の法律関係をめぐる紛争の抜本的解決を適切に図ることができないといった事情は認められないから,元従業員の請求のうち,会社がした本件業務命令に元従業員が従う義務のないことの確認を求める部分は,確認の利益を欠き,不適法である。

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