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外国産馬の逆襲 NHKマイルカップ2021

◯外って、いつからか意識しなくなりました。
ご存じかと思いますが、〇(マル)外とは、外国産馬のことです。(表記上わかりにくいので(外)にとします。)
外国産馬だからって仕上がりが早くて短距離戦に強いってのはいつの時代の話ですか。いや、今でもその傾向はあるとは思いますが、国内の繁殖事情がかなり変わってきたため、以前ほど気にならなくなったのだと思います。

NHKマイルカップの創立当初から数年間は(外)の馬で上位が占められ、当時クラシックに出られない(外)のための残念ダービーとまで揶揄されていました。第一回なんて17頭中14頭が(外)でした。

それが2021年にもなると、⑭ショックアクション、⑮シュネルマイスターの2頭だけ。

日本に根付いたサンデーサイレンスなどの海外の種牡馬、あるいは繁殖牝馬が大きな血統の流れとなり、(外)の馬だから3歳春に強いと言わせない状況が作られました。

数年で勢力図を塗り替えるところがブラッドスポーツとも呼ばれる、競馬の面白さでもあります。
今年のNHKマイルカップはどういった血統の馬が活躍したのも触れていきながら、振り返ります。

絶対的エース不在で混戦の3歳短距離路線

人気が集中したのは3頭でした。
朝日杯フューチュリティステークスをレコードで制したグレナディアガーズ前哨戦ニュージーランドトロフィーを圧勝したバスラットレオン
そして、ディープインパクト記念弥生賞でタイトルホルダーの2着だった(外)のシュネルマイスター。

まずはグレナディアガーズ
2歳時に朝日杯フューチュリティステークスを7番人気の伏兵としてレコードで勝ちました。しかし、休み明け初戦をルークズネストに敗れて2着。
レコードで勝っているので、今の高速馬場の東京の芝には合いそうです。
父Frankel(フランケル)はイギリスの名馬。大種牡馬ガリレオの子で、14戦無敗、G1を9連勝した恐るべき馬です。ガリレオ産駒は日本で今一つですが、Frankelといえば、ソウルスターリングが阪神JFとオークスを勝っています。

次にバスラットレオン
朝日杯4着ながら、シンザン記念で3着と好走を続けながらも賞金不足で1勝クラスから出直すこと。しかし、そこは余裕の手応えで勝利してオープン入り。新人女性騎手の古川菜穂騎手を背に乗せて初勝利を演出しました。
その後、乗り替わりを経てニュージーランドトロフィーではこれまた5馬身差の圧勝。
父はダービー馬キズナ。ここまではディープインパクトの血を受け継ぐ、最近の血統らしいですが、不思議なことに母父はNew Approach、これはガリレオの子です。グレナディアガーズと以外な共通点をみせます。血統のハイブリットが新しい能力を目ざませるのでしょうか。

そして、(外)のシュネルマイスター
キャリア3戦といえど、前走ディープインパクト記念弥生賞で2着が光ります。このレースの勝ち馬タイトルホルダーは皐月賞で2着に入りましたから、結果だけを見るに皐月賞2着馬と同等ともいえます。早い時計は経験がありませんので、そこは試金石。でも鞍上はルメール騎手ですから、安心感がオッズに反映して、1番人気に近い2番人気となりました。
父Kingman(キングマン)はイギリスの種牡馬です。グリーンデザート→ダンチヒと繋がるラインですから、日本でもおなじみのノーザンダンサー系です。ダンチヒ系といえば夏の高速馬場で走るデインヒルのイメージがありますがどうでしょうか。今年が初年度産駒で同期のエリザベスタワーがチューリップ賞を勝ちましたね。

さて、紹介が長くなってきましたので、血統込みはこのへんにして、
あとは、アーリントンカップを勝ったホウオウアマゾン。グレナディアガーズを破ったルークズネスト、シンザン記念を勝ったピクシーナイト。

過去には前哨戦の2着馬、3着馬が穴をあけていることもあるので、リッケンバッカー、タイムトゥヘブン、レイモンドバローズ、シティレインボーなど虎視眈々と上位を狙っています。

抜きつ、抜かれつの大攻防~レース回顧

スタートしてすぐに事件が起きました。
スタート自体はそろったものの、すぐに④バスラットレオンが大きくつまずいてしまい、落馬のアクシデント。人気の一角であるバスラットレオンが開始早々のリタイア。無観客のスタンドへ、力のこもった実況が響きます。

レースは淡々と進行していきます。
①レイモンドバローズのスタートがよくなく、後方から。
先頭を伺うのは⑫ランドオブリバティ。今日は落ち着いていられるでしょうか。内から③ルークズネスト、外から⑱ピクシーナイト。間から⑬ホウオウアマゾンと直後に⑧グレナディアガーズと、人気馬がそろい踏みで先行争いです。⑰グレイイングリーンがついていこうとして、グレナディアガーズの前につけます。グレナディアガーズから一馬身差で⑦タイムトゥヘブン、⑩ソングラインと続きます。

徐々に縦長になり、第二集団の先頭は⑮シュネルマイスター、②アナザーリリック、ショックアクションと続きます。二馬身離れて、⑯ロードマックス、⑨ゴールドチャリスと⑪ヴェイルネビュラそして⑤リッケンバッカーと⑥シティレインボーが控えます。最後方は5馬身以上離れて①レイモンドバローズ。出遅れが響いてついていけてません。

最初の600m、通過タイムが33秒7とハイラップを刻みます。

3コーナーのカーブに入るところで馬群がぎゅっと詰まります。先頭はピクシーナイトに替わっています。すぐ後ろにはランドオブリバティとホウオウアマゾン。するすると外から青い帽子のグレナディアガーズがまくっていきます。

運命の直線、先行した人気馬たちは競り合いながらもホウオウアマゾンが抜け出そうという構えですが、伸び脚いま一つ。

残り400m、外から伸びてくるのはグレナディアガーズ。
しかし、内のピクシーナイト、ホウオウアマゾンもがんばっています。
グレナディアガーズも一気に突き放すことができないでいると、外から手応えがいいのはソングラインです。その後ろにはシュネルマイスターもいます。グレナディアガーズを間に内に切り込んでくるのはタイムトゥヘブン。

横一直線に7頭並んで残り200m。

先行していたピクシーナイト、ルークズネスト、ホウオウアマゾンの脚色が鈍ると同時にグレナディアガーズとソングラインが叩きあいながら伸びてきます。追いかけるのはシュネルマイスター。

グレナディアガーズとソングラインが馬体を合わせますが、なんと7番人気ソングラインがグレナディアガーズを振り切ります。グレナディアガーズの脚色が鈍っていきます。替わって外から一気に突っ込んでくるのはシュネルマイスター。グレナディアガーズをかわして、2馬身先で単独の先頭を走るソングラインに迫ります。

シュネルマイスターが届くか、ソングラインが振り切れるか。

ゴール前、並んで、そのままゴールイン!

結果はハナ差を差し切ってシュネルマイスターの優勝。鞍上はルメール騎手です。さすがの手綱さばきでした!
2着には大舞台に強いと言われた池添騎手鞍上の七番人気ソングライン。
3着にはグレナディアガーズ。後方から追い込んできたリッケンバッカーを抑えてなんとかの確保です。

クロフネ以来の(外)の勝利、楽しみな逸材

勝った(外)シュネルマイスターは前述したとおり、ドイツ産の外国産馬です。たった二頭しか出走していなかった、そのうちの人気のある方が実績通りに結果を残しました。皐月賞をパスし、こちらに照準を合わせてきた甲斐があったというものです。

タイムは1分31秒6。
高速馬場らしい、早いタイムでの決着にその能力の高さを示しました。

G1タイトルを手にし、父Kingmanの名声を新たに広げることができそうです。黎明期のNHKマイルカップを見ているかのような、(外)の強さを見せてくれました。(外)の勝利は2001年あのクロフネ以来というのが時代を感じさせます。さて、シュネルマイスターが今後、種牡馬として血を残せるか、新たなサイアーラインを根付かせることができるのかは将来の話にはなりますが、今後に夢が膨らむ勝利となりました。

2着ソングラインは惜しい競馬でした。父はキズナ。古馬のスタミナレースである天皇賞でディープボンドは3200mで2着、今週は3歳1600mのG1でソングラインが2着とコンスタントに距離不問な優秀な産駒を送り込むことがまた証明されたわけです。

こうして勝った馬、負けた馬からも今後の競馬界への期待も膨らむのが血統の面白さでもあります。

3歳春のマイルG1NHKマイルカップは外国産馬シュネルマイスターが父の名を世に広めた一戦でもありました。

(余談ですが、4着11番人気リッケンバッカー、5着15馬人気ロードマックスの追い込みも隠れた見所でした!)

さて、来週は同じ舞台で古馬牝馬のマイルG1ヴィクトリアマイルが行われます。春のG1連戦はまだ始まったばかりです。

また来週もお会いしましょう!

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