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因果巡る10センチの差 日本ダービー2021

みなさん、ダービーですよ、ダービー!
今年の主役は無敗の皐月賞馬エフフォーリアと22歳の横山武史騎手。
運命のいたずらがお膳立てするつもりか、枠順は1枠1番と先行するエフフォーリアにうってつけの枠順。
これはもう無敗の2冠達成か、22歳のダービー制覇なるか。立ち向かうのはベテランジョッキーと底を見せていない素質馬たち。ダービーらしく、緊張感漂う一戦となりました。
激戦のダービーは、10センチを争うダービー史に残るような厳しい戦いが繰り広げられました。


ダービー情勢は別路線組が優勢?

注目はエフフォーリアですが、2番人気以降は混戦。意外や意外、皐月賞上位馬ではなく、別路線組の支持が厚く、また、これといった逃げ馬がおらず、展開の予想も難しくなりました。

エフフォーリア
皐月賞を無敗で制し、横山武史騎手に初G1を贈り、3歳世代をひっぱる存在です。皐月賞の着差は5馬身。一強ムード漂う中、父エピファネイアの果たせなかったダービーで、その実力をフルに発揮することができるのでしょうか。

皐月賞で勝負付けが済んだといことでしょうか、期待されたのは別路線組。

サトノレイナス。
ダービーに挑戦してきた牝馬です。牝馬戦線ではソダシにあと一歩迫った豪脚を見せるライバルです。ルメール騎手を背にウォッカ以来の戴冠を狙います。

シャフリヤール
皐月賞馬アルアインの弟です。毎日杯をレコードで制しました。キャリアはまだ3戦ですが、共同通信杯でエフフォーリアの3着と実力の片鱗をみせました。早いタイムになりがちの東京競馬場はもってこいの舞台です。鞍上は前年コントレイルで三冠制覇の福永騎手。

グレートマジシャン
キャリア3戦目の毎日杯シャフリヤールとレコード勝負を演じました。シャフリヤールが来るならこの馬もと思うところです。鞍上は戸崎騎手。

ワンダフルタウン
ダービートライアルなのにダービー制覇へは鬼門となる青葉賞を制しました。鞍上は和田竜二騎手。

皐月賞上位馬

タイトルホルダー
皐月賞2着ですが、6番人気に甘んじています。
ディープ記念弥生賞では、のちにNHKマイルカップを勝つシュネルマイスターを退けています。父ドゥラメンテ、父キングカメハメハもダービー馬、鞍上は田辺騎手。

ステラヴェローチェ
皐月賞3着。父バゴはクロノジェネシスの活躍で注目されている凱旋門賞馬です。当馬は皐月賞3着ですが、朝日杯2着と大舞台での好走経験があります。タフな流れや渋った馬場なら逆転もあるかも、と思いたくなります。鞍上はオークスで注目だった吉田隼人騎手。

このように、皐月賞上位馬と別路線組の評価がわかれました。

今年はどんなダービーになるのでしょうか。
鞍上の駆け引きも気になります。

ダービーらしい大接戦〜レース回顧

ダービーのスタートは綺麗にそろい、17頭が一斉に飛び出します。

例年の大歓声はありませんが、ささやかな拍手が湧き起ります。

スタート直後の最初の直線、1コーナーに向かって、白い帽子一番人気の①エフフォーリアが②ヴィクティファルスと馬群の先頭を伺おうとしますが、外からぐいぐいとやってくるのが⑰バスラットレオン、真ん中から⑭タイトルホルダーがエフフォーリアの前に出て、1コーナーをカーブしていきます。先頭はバスラットレオン。NHKマイルカップのスタート直後の落馬がウソのように、ダービーで、馬群をひっぱっていきます。

二番手以下は、外にタイトルホルダーと内にエフフォーリア。エフフォーリアは枠順を味方にかなり前、続いてヴィクティファルス、⑦グラティアスと⑥バジオウが並んでいます。その一列後ろの外に紅一点⑯サトノレイナス、内には人気馬の一角、⑩シャフリヤール、ラチ沿いにタイムトゥヘヴンと3頭並んでいます。さらにすぐ後ろにも⑫ワンダフルタウン、⑨ラーゴム、⑤ディープモンスターと3頭並び、⑬グレートマジシャン。このあたりが混み入って入れ替わりがあります。少し離れて⑮アドマイヤハダル、最後に一頭離れて④レッドジェネシス。レッドジェネシスはついていけてません。

先頭は2コーナーをカーブして、バスラットレオンが快調に3馬身リードをつけて逃げています。

エフフォーリアは5番手に控えて、落ち着いています。
そこへ、シャフリヤールがすぐ後ろにつけ、外からはサトノレイナスがエフフォーリアをマークするように並びます。ダービーの一番人気の圧が鞍上にかかります。

1000m通過が60秒3。バスラットレオンのリードはすでに1馬身と馬群はひとかたまりになっており、どんな勝負になるか、まだ見えません。

動きの少ないダービーかもしれません。しかし、鞍上の駆け引きはきわどいのだろうと推察できます。

3コーナー、馬群は一団ですが、ポジション争いに、先行馬、後続馬ともに動き出していきます。
一番人気エフフォーリアはじっとインで待機しています。中団まで、ポジションを落としても慌てません。

4コーナー、ピンクの帽子が先頭に目立ちます。
インからバスラットレオン、外からサトノレイナス。
青い帽子のグラティアスも食らいついてきます。

直線に入って、バスラットレオンとグラティアスががんばっている脇から、グレートマジシャンが顔をのぞかせます。そして、その後ろのエフフォーリアに鞭が入ります。
残り400m。

バスラットレオンは失速、グラティアスがんばっているところに襲いかかるのはグレートマジシャン、エフフォーリア、サトノレイナスです。

ここで、エフフォーリアが抜け出して、単独の先頭に躍り出ます。
サトノレイナスは勢い今一つです。
残り200m。

馬群を割って、一気に突っ込んでくる馬がいます。シャフリヤールです。
怒涛の差し脚で加速して、先頭のエフフォーリアに接近。
併せ馬になり、マッチレースのように激しい争いのまま、ゴールに雪崩れ込んでいきます。
勝ったのは、エフフォーリアかシャフリヤールか。

掲示板に表示されたのは、
⑩シャフリヤールでした。

その差、わずか10cmと言われています。

ダービーらしい接戦、熱戦を制したのは、
シャフリヤールと前年の三冠ジョッキー福永騎手でした。

2着の因果は巡るのか

エフフォーリアも強い競馬をしました。
しかし、先にゴールした馬が優勝するという事実に応えたのがシャフリヤールでした。
シャフリヤールを管理する藤原調教師はレース後のインタビューで「武史は今夜は寝られないだろう」とのコメントが印象的でした。
22歳で1番人気のダービーチャレンジがベテランにより10cm差で阻まれる。
かつて、福永騎手もエピファネイアで2着。
なんの因果か、エフフォーリアの父はエピファネイア。
馬の方で言えば、シャフリヤールの父はディープインパクトですから、こちらは有名な格言『ダービー馬はダービー馬から』を地でいきました。
対するエフフォーリアは父エピファネイアは前述通り2着、父父シンボリクリスエスも2着、母父ハーツクライも2着。こちらはダービー2着馬はダービー2着馬からという不名誉な結果に。

競馬の因果は巡って、やがて横山武史騎手がダービーを勝ち、ベテラントップジョッキーとなっている頃に、新進気鋭の若手騎手を僅差で阻むかもしれません。
それがエフフォーリアやシャフリヤールの子で勝ち負けとなると、見ているこちらの目頭が熱くなりそうです。

ダービーを勝つ、というの毎年のことではありますが、熱いドラマを必ず含んでいるのを今年も味合わせてもらいました。

また競馬が面白くなった気がします。

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