ラスト・ワルツ

部屋が暗い。何も電燈をつけていないせいじゃない。

裸電球まぶしくても、その光、差し込む瞳の奥が暗いのだ。

懊悩でもなければ絶望でもない。もちろん恋の類いでもない。意味深に森田童子を聴いて、その意味ふかく考えるあまりに、すべての答えはからっぽの中にただよっている二酸化炭素なのだと知る。

ねえあなた、おどりましょうよ。

椅子に深く腰掛けて或る夏の日を思う。それはとてもありふれた一日だった。つまりはなんにもない一日だった。その一日が今ではこんなに恋しいの、どうしてだろう。

明日は金曜日だ。明後日は土曜日だ。そんなあたりまえのこと、いちいち確認しなきゃ、夜をゆけない。はあ、ふう、ため息なんて、数えてもきりがない。そんなもの、呼吸のすべてだから。

どうしたって今夜は雨が降るみたい。

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