Youth 18 ticket

 青色の絵の具を水に落として、薄く広がってゆく水色を眺めながら、私はふと涙してしまった。あまりにまぶしい季節の中で、目も開けられずに顔を背けたその先に広がっていた海。線路際に立って、誰もが旅立ちを見送るその駅で、私と、あなたと、そのほかのすべての人達とが、笑顔でハンカチーフを振って、私だけが睫毛を濡らして、いいえ決してかなしい訳ではないんです、あなたの大人になるのさえ、きっと春から夏に変わるような、当然のあたりまえのことで、私は季節の過ぎるという逃れようのない事実の前で、わがまま言って、時計の針にしがみついて明日を憂う、懐古の病の重症患者で……。
 スカートがみじかくなったのも、爪の色がうつくしくなったのも、髪がつややかになったのも、衣服の色が目にまぶしいのも、私には関わりのないことです。私に関わりのない外の世界で、私に何の目くばせもなく、ただ勝手気儘に過ぎてゆくすべての物事がこわい。ただそれだけだ。私は救いようのないほどに変化を恐れてる。停滞を愛して、そうして過去を愛し、今が過去になることにさえ気づかずに、懐古するだけの今日を刻んでゆく。
 ああ、まったく、飛び跳ねた君の姿はうつくしかった。乱れた髪と振り回した腕と、そうして曲げた膝と地平線とのあいだに、海が見えた。煌めいていて穏やかで切ないブルー、私の好きな深いブルーだ。青春はきょうも私にしらんぷり。

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