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今のアナタはアナタが作ったんだよ

俳優プロダクション、ミッシングピースのあれやこれやをご紹介しています。
本日のnoteはミッシングピースってエキストラやるんだ〜って誤解されそうなので、慎重に書き進めさせていただきます。

ミッシングピースではエキストラはお受けしていません。

理由は幾つかあります。整理してみましょう!

1、経歴(実績)にならない
俳優の実績を作るために私たちはサポートしています。
2、エキストラの演出は監督は担当しない
映画なら助監督さん、ドラマならADさんが演出を指示します。演出というより動きとかタイミングとかです。演技の演出ではない(厳密には演技の演出ではないことはないのですが。。。)
3、撮影の詳細が前日の夜になることが多い。
俳優プロダクションなので基本的には24時間体制で動いていますが、エキストラ事務所ではないので、夜に詳細な情報を俳優に(エキストラの場合は大抵、大人数)送る体制をとっていません。前日の夜の詳細が来るとなると俳優の負担も大きいでしょう。また、俳優の仕事の大切な部分として「準備に重きを置くように」を常日頃から発信しているのに、これでは十分な準備ができると思えません
4、ギャラが安い
これはもう、かわいそうなくらいです。それでもエキストラ事務所が存在するのは登録料などで賄っているか、一現場に数十人のエキストラをシステマチックに派遣しているからでしょう。ミッシングピースの所属人数では採算が合わないのです。


例外:レギュラーエキストラ

映画・ドラマはオーディションが少ないし、結果が出せる人は本当に限られてる、そして1シーン1セリフの現場をいくつ経験しても中々、それが糧にならないのが現実です。

だから、ドラマのレギュラーエキストラはお引き受けすることがあります。
理由を整理してみましょう!

1、同じ現場に長くいるので、現場慣れします。
2、スタッフさんとどのようにコミュニケーション取ればいいのか、わかるようになります。(中には分からないままに終わってしまう人もいるかもしれませんが。。。)
3、別の現場に役付きで呼んでもらえたりして、次に繋がる人がいます。
4、撮影の総合スケジュールは事前にわかるので、予測が立ちます。ロケがあるから出演だなとか、スタジオ撮りで予備日がないから出演だなとか。通常、直前に連絡が来ることが多いのは通常のエキストラとあまり変わらないかもしれませんが。。。

そんなメリットもあるなら、やってみたらいいと思うのですが、実はレギュラーエキストラってハードルが割と高くて、オーディションがあることも多いし、演技力を問われるというより、見た目の特徴で選ばれるので、見た目が「普通の人」が多いミッシングピースの人は通りにくいのです。それにミッシングピースはエキストラを引き受けない事務所だということは業界で知られているので、レギュラーエキストラを探している情報が入りにくいのです。


挑戦してみる価値のある募集がありました!


そんな中、あるテレビドラマのレギュラーエキストラの募集がありました。それで、舞台から俳優の道に進んだ人で映像の現場で伸び悩んでいる俳優と、映画やドラマのオーディションで通ったことのない俳優、オーディションではなくミッシングピースから推薦で出演が決まった作品はあるものの、リピートが無い俳優に出演に関してどう思うか、意見を聞いてみました。

*ミッシングピースでは基本的に「エントリしますか?」と俳優に意見・判断を求めることはしていません。通常の出演であれば、スタッフ側で判断してどんどんエントリーしていきます。例えば、暴力シーンがあるとか、濡れ場があるとか(濡れ場はエントリーしないのが基本です)髪型を変えるとか、特殊な事情がある場合は俳優の意見を尊重しています。

改めて、出演に伴うメリット・デメリットを伝えた上で。さらに断っても悪くとらないから、自分で判断してみてねと。すると、舞台で実績のある俳優たちは快諾って感じでした。理由は「長く現場にいたい」から。

ちょとした役で出演すると、あっという間に撮影が終わって何もできなかった。と感じている人の如何に多いことか、よくわかりました。舞台に強い人は映像の、その瞬間瞬間に集中して作っていく演技のやり方に馴染むのが難しいようです。だから、いただいた役割を演じることはできるのですが、役を生きてる感覚になれないのかもしれません。

考えますと返事してきた女優に電話

一人、ちょっと躊躇してるんだろうなと思う女優がいました。予想通りでした。彼女に意見を聞いているんだから、彼女の返事を待たなきゃって自制するのですが、やっぱ、伝えたい!で、電話で話しました。

アナタが今の状況にあるのはアナタの選択の集積
私「アナタが今の状況に満足していない、苛立ちを覚えているよね。なんでだろう、こんなはずないって思ってるでしょ?私もアナタの状況には全く満足していない。もしかしたら、私の方がアナタより苛立ってるかもしれない。もっと上に行けるはず。もっとできるはずってね。

今のアナタはね。映画やドラマのオーディションは通らない、1シーン1セリフの出演はそつなく、こなして、クレームにはならない。けど、褒められることがない。リピートがない。舞台や自主映画のお誘いが多い。そして、それらに出演してきた。そんな感じよね。別の言い方だと、奪い取ってない。与えられてるだけ。

だけどさ、ちょっと待って。

もしかしたら、アナタはアナタの居心地の良いところだけで勝負してるってことじゃない?奪い取れないんだから仕方ない、もらえるところでってやってるうちに、自分で自分の居心地の悪い選択ができなくなっちゃったのかもしれないね。

私はさ、アナタのことが大好きだし、大事だし、ミッシングピースのみんながアナタの成長を待ち望んでる。だから、言っちゃうんだけど

一回、私の選択の中で泳いでみてくれないかな。

やったことないこと、やってみよう。

昔、Kって女優がいたでしょ。演技が上手くなりますか?どうやったら演技が上手くなりますか?ってTに聞いてた。そしたらTが、「みゆきさん(私)のそばにいればいい、突然に予想不可能な、無茶苦茶なボールを投げてくるから、それを受けて投げ返してたら、どんな現場に行っても大丈夫になるよ」って言ってるのよ。私の前で。失礼でしょ笑

私、この頃まで、あれはどういう意味だったんだろうって分からなかったんだけど、今のアナタに必要なのは私の”突然の予想不可能な、無茶苦茶なボール”を打ち返すことなんだって分かる。千本ノックやね笑笑」

*千本ノックというのは一つのシーンを一人の俳優が相手役を次々に変えて、演じ続ける演技の試行で、今までに3回ほど、セッション(ミッシングピースの演技の場)でやってみて、手応えを十分に感じている方法です。

千本ノックで相手役を演じて、コテンパンにできなかったと自覚している彼女は納得してくれたようです。レギュラーエキストラにエントリーしてみることになりました。

さて、結果はどうなるか、分かりません。
禅問答のようになりますが、結果がどう転んでも、一回、私の選択の中で泳いでみようと選択した彼女の未来はやっぱり、彼女の選択の集積であって、私の選択の集積ではないのですねー。