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衣裳?衣装?衣小合わせ???

いしょうあわせはどの表記が本当なんだ!?

衣装合わせ(ややこしいので便宜上、この表記をここでは採用します)はマネージャーにとっても、俳優にとってもとても大切な仕事です。
とりあえず、「衣装合わせ」の表記で話を進めますね。


衣装合わせって??

映画では衣装合わせはほぼほぼ、行われ、ドラマは映画ほどでないですが、行われます。(撮影当日に、現場合わせになることもあります)


衣装を合わせるだけなのに、なんで大切なの??

通常の衣装合わせは俳優にとっては、制作スタッフのオールスタッフ(映画制作において、初めてスタッフ全員が集まる顔合わせ)に近い、ご挨拶の場でもあります。

監督、衣装さんはもとより、制作部からプロデューサーや助監督、撮影部(大抵は撮影部の代表として第一カメラマン)、メイク、持ち道具が集まっています。(ちなみにほぼ、いらっしゃらないのは照明部、録音部。あとは編集関連スタッフ)

俳優は役名と俳優名で助監督さんから紹介され、拍手で迎えられます。そして、そこにいるスタッフ全員が名前と担当部門を名乗ります。俳優は一人一人に「よろしくお願いします」とお辞儀します。

それが終わると、監督の前に用意されている席に俳優が座って、役のディーテイルについてお話があります。俳優は台本を持って対峙して、質問したり意見を伝えたりします。

ここで俳優がどこまで役を捉えているか、問われてると言っても過言ではありません。ここで、監督がどんな方か把握する機会でもあります。

そして、衣装が1点、あるいは数点、提示され、監督がどれを一番に着るか選んでお着替えです。


スケジューラーさん

しばらく、何も起こらない時間ができますので、このタイミングで、私たちマネージャーはまずはスケジューラーさん(大抵は第二助監督と思われます。衣装合わせを仕切っているのは第一助監督の場合が多いのかな。)と名刺交換します。私の主な目的はここです。

私たちは大抵、キャスティングさんかプロデューサーが仕事の窓口で衣装合わせでスケジュールに関しては演技事務さんがスケジューラーさんに窓口が変更になります。演技事務さんはスケジュールの問い合わせ窓口ではありますが、スケジュールを決めるのはスケジューラーさんなので、できるだけスケジューラーさんと直接やり取りする方が話が早いし、スムーズなことが多いです。スケジューラーさんのタイプを見極め、好印象を持っていただくのが私たちの仕事です。

ただ、スケジューラーさんは現場に張り付いているので、クランクイン後は連絡が取りにくいし、衣装合わせにスケジューラーさんがいらっしゃらないこともあるので、そういう時はので演技事務さんに頼るしかないのですが。

映画でもドラマでも出演日数に関係なく、出演依頼があった際に空いている撮影期間中のスケジュールを一旦、お渡しします。つまり、出演が1日でも、キープは2ヶ月に及ぶこともあります。それだと他のお仕事が受けられないので俳優も事務所も困ってしまいます。

まずは総合スケジュールから、施設を借りているだろうなと思われるロケが確実な日や、メインの方のNGが出てるなとわかる日などを確認しておいて、
スケジューラーさんに一部の日程を返していただきます。


監督がどこまでこだわっている?監督と制作陣との関係性は?

着替えてきた俳優が監督の前に立ちます。監督がコメントします。衣装を着た状態で写真が撮られます。

その時に、監督の意見で、さらに役が深まったり、第一監督からの助言があったりするので、監督や制作陣の作品の捉え方がわかってきます。

俳優は棒立ちというわけではなく、例えば役にあわせて、腕まくりしたり、髪をちょっとかきあげたり、厳しい顔で登場したりして役作りの案を体と表情で示します。

持ち道具(眼鏡、時計、かばんなど)が加えられ、そこにも監督が意見を伝えます。眼鏡などは俳優が前もって自前のものを持ってきていたりします。


髪型などの指示と判断

ここで、髪型の指示も入ります。髪を切って欲しいとか、染めてほしいなどの要望が入ることもあります。髭を伸ばして欲しいとか。(日焼けして欲しいとか、ネイルして欲しいとかもあります)

さあ、私たちの仕事です。
俳優はその作品だけに専念できるわけではないので、他の作品とのつながりでむやみに髭を伸ばす(剃る)髪型を変える、など決められません。他の作品のスケジュールなどと兼ね合いを考えて、返事をしなければなりません。

マネージャー不在の時は俳優に直接、依頼があるのですが、俳優には事務所に確認お願いしますと言うように普段から啓蒙しています。(髪をカットする場合でも、どこの美容院で誰の費用で、つまり領収書名は誰にするかなど確認する必要があります)

で、本題

「衣装合わせ」?「衣裳合わせ」?「衣小合わせ」?

衣装合わせの詳細が届く時、上記3つの表記が使われています。何が違うんだろうって気になっていました。

なぜかというと、こだわっている方がいらっしゃるだろうと想像できるからです。

例えば録音部さん、音声さん、間違えると叱られます!!

映画では録音部さん、テレビドラマでは音声さんです。
音声さんに録音部さんって呼びかけても叱られませんが、録音部さんに音声さんって呼びかけると…

気まずい空気が流れます。

だから、ってわけでもないのですが、衣小合わせ詳細って届いているメールに対して、衣裳合わせって返すのはなんだか、よろしくないのではないだろうかと思っているので、相手に合わせて表記に気を付けてきました。が、そもそもその違いってなんやねん!って思っていたので、

とても尊敬している、業界で長く自分らしく活躍されてるプロデューサーMさんに思い切ってメールで尋ねてみました。


私は衣裳・小道具合わせが好みです。

Mさん「衣裳合わせ 衣装合わせ 衣小合わせ は、どれも間違いではなく、今では演出部の好みの域といいますか。。

一応、衣小合わせ の表記は

衣裳・小道具合わせ

の略で、「小」と「しょう」をかけて、「衣小合わせ」という表記をする人が増えたイメージです。

衣裳だけでなく小道具(持ち道具)も、合わせるので、小道具に気を使う演出部は「衣裳・小道具合わせ」と表記をし、それが崩れて「衣小合わせ」となっていったと認識しています。

スタイリスが全部セットして用意する場合を除いては、通常、着るものは衣裳部、履物や刀、鞄などは小道具と分かれているので

私の想像ですが、昔は着物が多かったので「衣裳合わせ」で良かったのが、現代になるにつれ洋服になり、小道具で用意するものが増え、

小道具さんが「衣裳合わせるだけじゃないんだけどな!」など、拗ねはじめたのではないかと

衣裳にしても、衣裳部さんによっては、「衣装」じゃなくて「衣裳」だから! とか

「衣裳部」だけど、僕は「スタイリスト」だから! でも、用意するのは着るものだけなので とか

それぞれの おこだわり があるので、表記がマチマチになってしまっているという理解で良いかと思います。

私個人としては「衣裳・小道具合わせ」とするのが、いちばん好みではありますが。。


文字に歴史あり!

衣裳は着物で、衣装は洋服のイメージなんでしょうね。

それにしても、私のちょっとした質問「衣装合わせ、衣裳合わせ、衣小合わせはどれが正しいのでしょうか」に対して、このような長文でしっかりと答えてくださるMさんに感謝ですし、見習わなきゃって思いました。

そして、やっぱり文字に秘められた、込められた思いがあるかもしれないから、これからも衣装合わせには衣装合わせ、衣裳合わせには衣裳合わせ、衣小合わせには衣小合わせの文字を使うぞと頭に刻みました!