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7-5. 円環を生きる 【ユクスキュル / 大槻香奈考】

「『世界全体』は、物のような客観的な対象ではない、だから答えが決まらないのだ」カントの言葉を借りるなら、このような結論になるでしょう。

これは美術においても類似点があると考えられます。作家の思い描く「世界」を描いても、そこにはアンチノミー(二律背反)が発生し、明確な答えは(その時点では作家自身が「これだ」と思っているものがあったとしても)無いからです。

むしろ時間が経つことで別の意味を持ち始めることも多くあります。作品は、制作が終わり鑑賞者と出会った段階から、新たに個を持ち得るとも言えるかもしれません。作品ごとに個別の道を歩み始めるのです。

制作と研究はよく似ています。一つの制作ははじまりにすぎず、作り続けることで答えを探し続けていく長い長い旅路です。

作家として生きるということは、蛹化と羽化を繰り返す円環を生きることから目を逸らさず、何度でも何度でも覚悟を持って繰り返し挑み続けることと言えるのではないでしょうか。答えが出ないとしても、少しでも「その時の自分自身にとっての答え」に近づくために。【了】

2020年11月 / 文責:ナツメミオ

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