仲本直輝の漫画家もがき紀行その12(8/22)
この紀行文は、漫画活動継続の危機を迎えたしあわせジョンの作者仲本直輝のもがき旅の記録です。
■20240822
6:00ごろ起き。昨日は近くの部屋に独り言を言っている人がいたので、過酷だな、と思い部屋の移動をしにフロントに行ったら、来たときは空いてなかった鍵付の部屋が空いていたのでそれなりに寝ることはできた。ネットカフェというのは不思議な空間で、店員は小綺麗に整っているが、なんとも言えない空気が漂っている。久々にネットカフェで寝たが、非常にみぢめな気持ちになる。そもそもこれはやむを得ずであり、本来当然ながら寝る場所ではない。今回は実験のつもりも多少あったが、やはり快適のためには出し渋らないということの重要性を感じる。
洗濯して近場の喫茶でモー。昨日の晩は固形物を食べてない。ブレンドコーヒーに付くモーの内容は、サラダに加え、玉子は珍しく出汁入りの半熟玉子。ダブルトーストにして、450円也。トーストのトッピングが選べるので、ツナとジャムにした。眠れたとはいえいつもより短いので閑散とした店内を眺めぽやぽやする。岐阜は穏やかだ。岡山でも感じたが、このぐらいでも十分に都市である。東京や大阪の中心部は、都市を超えて、混沌とした何かになってしまっていると思う。
電車に乗る。中津川行きで居眠り。なぜ普通に寝るより居眠りの方が気持ちいいのか。今回の18切符大阪東京間は、東海道本線ではなく高山本線ルートをとる。10時すぎ中津川着。着くととても風情のある駅で思わず笑みがこぼれた。旅はこうでなきゃ!駅そば屋のとなりに、コーヒースタンドという素敵な喫茶店がある。なんて素晴らしい並びだろう。とりあえず撮影するけど、決してこの雰囲気は写真に写らない。写らないところに旅はあると思う。私が景色の中に存在するということは、画面には決して捉えられない。それは救いではないか。モーニング「サービース」は付けずホットコーヒーだけ注文して休憩する。駅前ではなく駅直結なので、他の喫茶とは趣も違う。マスターはここで何本の列車と旅人を見送ってきたのだろうか。中津川では2時間ほどの待ち時間がある。ここで松本清張の「点と線」を読み終えたが、これは電車で途切れ途切れ読むものでもなかった。また読み直そう…。
駅周辺を少し歩く。駅そばに加え、焼きそば屋、お食事処、喫茶などあるが、どれもここにしかない味というわけでもなさそうだ。中津川といえばフォークジャンボリーがあったが、その記念館は臨時休業らしい。長旅になるのであまり不用意に歩くのは避ける。大きな物産館に色々あって歓喜した。友だちにお土産でも、とプラプラ見歩く。栗焼酎なるものがあったが、小瓶は売り切れていた。これがあまりに気になったため、他の若鮎や栗きんとんを買う気がなくなってしまい、他の土産屋も見たが、結局栗焼酎はなく、飯も食わず土産も買わず中津川を発つことにしてしまった。12:00発松本行。約1時間半電車に揺られることになる。風景は美しい鉄橋と川、夏休みの山々といった趣である。ぽつぽつと点在するだけの民家がかえって、人がそこに生きているという感覚を多分に感じさせる。ネブソク、ハラペコ。
14:00ごろ塩尻駅着。駅そばにて、山賊焼きという鶏の唐揚げみたいのが載ったそばを頼もうとしたら売り切れていて、鹿肉が少し入ったものにしたが、しっくりこなくて山賊焼きの単品を別の店で注文して食べた。う〜ん、贅沢してしまった。旅先で欲張らないのが大事と自分で書いておきながら!その店には山賊焼きの定食があったので、そちらにすればよかったのである。やはり旅の食事は、駅周辺を何軒か見てから決めるべきだった。食べすぎたし、夜は抜きだな。
だんだんと判断力が衰えているのは、無意識の疲れかもしれない。今日はもう派手なことはしないでおこう。
長坂、日野春あたりは山深く、標高も高そうだ。天気は曇っている。甲府での30分ほどの待ち時間がありがたい。
勝沼ぶどう郷あたりで雨。初狩付近の山々の深い青緑を神々しく包むような濃い霧が立ち込めていた。中津川の夏休みのような陽射しを経て、今日一日の風景の変化とは思えない。甲府でお土産のお酒を買って、都内某所の和泉眞生の家に直行した。まおくんと少しお酒を飲んで、哲学話などうだうだとした。こういうときだけ余計なことを忘れられる。
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