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『死者の書』と當麻曼荼羅

唸りながら本を読み進めるのがどうも苦手で、どうしても読みやすい本に走りがちだ。考えながら少しずつ読み進める本はエネルギーが要るので、腰を据えないと読めない。その結果部屋の本棚には読みかけで止まっている本が何冊か並んでいる。読もうと思って数十ページ進んでみたものの、そこで挫折してそのままになっている状態だ。

その中の1冊に折口信夫『死者の書』がある。當麻寺に伝わる中将姫の伝説をもとに書かれた小説だ。

安田登さんの寺子屋(@瑞泉寺)でこの小説の一部分の朗読を聴き、當麻曼荼羅図を見て、場面ごとの登場人物をわかりやすく書いた紙をもらって、読めそうだし、読んでみたいと思って手に取ったのが冬のことだった。
本を開いてまず思ったのが「読めない漢字ばかりだ、黙読は無理かな…」ということ。
お風呂で音読(朗読)をすることにした。
ただ、自分が長時間お風呂に浸かっていられない人間だということを忘れていた。そして、読めない漢字は調べないと読めないから、お風呂で辞書無しで読むのは難しかった。つまり、お風呂で朗読は3回ほどで頓挫してしまったのだった。
カフェで朗読するわけにもいかないし、家の座布団に座って読みたいとは思わないし…などと言い訳を重ね、結局本棚の肥やしになって数ヶ月。

綴織當麻曼荼羅(国宝、奈良・當麻寺蔵)の修理完成を記念して実物の展示が行われるという情報が。綴織當麻曼荼羅を生で見られるとのこと。これは行くしかない、と、人が少ないであろう平日を狙って行ってきた。

巨大な曼荼羅を前にして、経を唱えている人、全体が見える位置からじっと見つめている人、ギリギリまで近づいて細部をどうにか見ようとしている人、色んな人が居た。もちろん、色は茶色く変色していて、当時の姿のままではなかった。それでも、その時代に作られた他の仏像(織)や天寿国繡帳や刺繡釈迦如来説法図で、色が鮮やかに残っているものがあって、そちらを元に、現代に再現した織が見られた。それはそれは色鮮やかだった。

また、読み進められそうな気がしている。

(サムネイルは瑞泉寺にある當麻曼荼羅図)


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