ZOZO狂が浪費をやめて節約にめざめた話

 私はZOZOTOWNを回遊したり、お買い物するのがすきだ。新卒で会社に入ってからずっとつづいているので、かれこれ10年ほどずっと。一番多い月で10万円ほどはつぎこんでいるプラットフォームで、100万円の合計購入金額に達していた年もある。いつだったか、1年前くらいに試算したときには累計購入金額が200万円を超えていた記憶がある。今の価値観に照らすと、200万円あったら世界に旅に出かけていたかもしれないとも思うけど、まとまったお金というよりは毎月の収入を少しずつ(あまり少しの金額ではないけど)崩しながら、その分の幸福を味わうのに必要な金額だったんだとも思う。

 ZOZOTOWNで購入していたのは洋服、靴、小物、食器、雑貨、ネイル、メイク品などさまざま。あるときのお買い物内容はこんなかんじで、ほしいものをお気に入りやかごにストックしておいて、まとめてドカっと購入。というのを平均月2回くらいしていた。

2024年5月のお買い物内容

 ZOZOTOWNに訪れるのは手元が空いたときにとにかくという感じ。あのお気に入りした商品安くなってるかな.. と”あなただけのタイムセール”という不定期に開催されるお気に入り商品の値引きタイミングを見計らって訪れたり、ブランド単位でのクーポン配布がないかをチェックしにいったり、その延長でみるつもりのなかった「あなたへのおすすめ」で類似商品をみては、今カートに入れている商品と比較して浸ったり。滞在中はみるともなくみてしまうコンテンツやおすすめ商品に引き留められ、なかなか抜け出せない。そんなこんなで、休日の長いときで3時間くらいはZOZOTOWNを見て過ごしていた日もあった。

 そして、買い替え割にZOZOクレジットカード、ツケ払い、Yahoo!ショッピングのZOZO店と。ZOZOユーザーならわかると思うが、ほしいものをほしいときに、お得に買うためのサービスなどはひととおり使ってきたと思う。ZOZOでお得にお買い物する方法という5,000文字以上の記事を書ける自信もあるほど。

 タイトルにもあるようにZOZO狂とはまさにこの状態のこと。お金と時間を満足いくまで投資し、ときとして無意識にZOZO開いてドーパミンがでているような感覚すらあるなんて一種の依存症だと思う。狂よりも依存症のほうがひびきが良いなぁと今更思う。

 そして浪費というのは何もただただZOZOで無駄遣いしていたという話ではない。少なからずこの年間100万円、毎週10時間以上ZOZOTOWNで過ごした時間と手元にZOZOのダンボールが届いてそれをあけるときのワクワク感、タイムセールが開催されたときや欲しかった商品の再入荷通知に胸が高鳴る瞬間、それぞれに意味があり自分の幸福度をあげるために必要なものであったと思うし、後悔はないという前提をまず添えておく。その上で浪費と表現しているのは、自分がもっと幸福度をあげられるほかの選択肢を知らずにお金と時間を消費していた点にある。

 話は変わるが、私は今無職だ。体調不良で会社を退職し、仕事をさがしながら過ごしている。8月から仕事を休職していてその間は無給なので、3ヶ月ほどほぼ収入がない状態だ。収入0円で毎月10万円の大盤振る舞いをできるほどの貯蓄や資産もないので、自ずと自制することとなった。加えて、会社にいかない、働かない=人と会わない時間のほうが長く、気心知れた家族くらいしか会う相手もいないので(友達もあまりいないので)洋服にお金をかけても、それを着ていく先がないという事態がいっしょに引き起こされた。

 休みに入って少しのあいだは相変わらずZOZOを眺めて、収入が増えたら欲しいものを探そうと探索をつづけていたのだけど、ほしいときにほしいものが手に入る快感のために滞在していたことに気づきつつ、虚しくて仕方なくなるのでやめることにした。代わりに、どうしても欲しい商品を吟味して、どのSHOPが一番やすいかを見極め、どのセールで買うのが一番安いのかを観察するために定期的に訪れるようにした。

 洋服や靴をまったく買わなくなったかと言えばそんなことはなく、選択肢が一定限られていて価格も一定圏内を大きく超えない中価格帯水準のブランドを選んで買うようにした。結果、UNIQLOやH&M、ZARAなどがメインになった。スタンダードな形のアイテムを選ぶことを心がけ、微妙な違いでも気に入ったフォルムのアイテムがあればまとめ買いをして、購入する商品を吟味する時間をなるべく増やさないよう心がけた。

 ZOZO愛用者としては苦肉の策であり、最初はZOZOTOWNに手がのびそうな自分の手癖を治すために、『minimalistphone』という有料アプリで、ZOZOTOWNを開くまえに警告が表示され宣言した滞在時間を超えるとまた警告が表示される、といった方法でコントロールしたほどだった。(minimalistphone:Android / 公式サイト)ただ葛藤は絶えなかった。

 自分の左脳は「これ以上ZOZOをみてしまうと、欲しくて欲しくて仕方ないものが増える一方で、本来比例して触れる楽しさを上回るレベルでの”それを買えない自分”という虚しさが露呈するのでどうかやめよう」と制止し

 自分の右脳は「あさこ、あなたの大きな幸せのひとつを自らで摘み取って良いの?ストレスが溜まったらまた爆買いしてしまうんじゃない?そんなのあまりに非効率だし自分のためによくないわ」と誘惑してくる。

 そうしてたどり着いたのは、ニュートラルの自分は両方の声をシャットダウンすることにして、もはやZOZOを開かないことは自分にとって「良いこと」でも「悪いこと」でもないと、とにかく評価することをやめるという方法だった。ーこれは自分が通っているピラティスで、好きな先生がよくレッスン中に指導してくれるものなのだけど「今うまくいかないこのポーズに対して、良いとか悪いとか評価をせず、ただうまくいかなくて身体の一部がこうなっているなという感覚を受け入れ味わいましょう」と。

 話は脇道にそれたけど、いったん自分を無にして、ZOZOがどうかを考えないというトライをしたという話に差し戻すけどー 『minimalistphone』の力を借りつつ、それをチミチミとつづけてみたら、ある日突然、右脳か左脳かどこからともなく「なんでこんなに執着していたんだろう」という気持ちが湧いてきた。湧くというよりは、ふっと舞い降りてきたという表現が近いだろうか。「先生、私自分のこの感覚を受け入れられました」と目を閉じて胸に手をあて、心のなかでそっと唱えたくなるような、なんだか神聖な感覚だった。ー 試しにZOZOTOWNを開いてみる。

 は…!こんなときに限って”あなただけのタイムセール”が…!ほしかったadidasのHANDBALL SPZLの黒が10%OFF…!このときのために貯めていた保有ポイントつかえば1万円で買えるじゃない!御殿場のアウトレットで買うのを我慢してZOZOのタイムセールを待ってたのよ!

(うるさいw)

 最初は舞い上がって動揺したけど、不思議と「まぁだとしたら今買うのが得策なのか、そのアイテムがほしいのはわかったけど、実際手に入れた後に本当に履き続けて、手に入れたものによって幸せな気持ちはつづくのか」と問いかける新キャラが心のなかに現れた。今までだと、仮にそういった優等生な左脳的思考が現れると官能的な右脳が覆い被さって止めるので、盲目的に欲求を満たす行動に走っていた。でもこのときは、どちらが現れるでもなく、ぽっと問いが生まれ、考えてみる価値はあるかもしれないと思い、心がどちらに動くこともなく立ち止まる流れが自然と生み出されたのだった。そしてその変化に気づき味わうことができたとき。転機のきっかけは「お金がない」というシンプルな問題に端を発したけど、具体的な転機はこのとき訪れた。

 最終的には、このニュートラルな問いによってもたらされた思考回路によってたどりついたのはコーディネート組み立てができるアプリを利用し、ほしいアイテムと手持ちのアイテムとでコーディネートし、それをまとった自分を想像したときに魅力的だと思えるかということをぐるぐる考えることを習慣とすることにした。『XZ(クローゼット)』とか『A Closet』(iOS / Android)をつかってみたけど、コーディネートつくるのにお金がかからない『A Closet』を継続的に使うことにした。ときを同じくして、『minimalistphone』を解約することもできた。

 結果として、@520円 * 2ヶ月=1,040円の投資によって、10万円のコスト削減ー正確にはadidasのHANDBALL SPZLは試行錯誤とあらゆるお得なサービスハックの末に約1.1万円で購入したので8.9万円のーに成功できたと言ってよさそうな着地となった。途中、謎に現れたピラティスの先生の助言もコストに入れるとしたら、Zenplaceの月額16,940円も必要になるけどまぁ細かいことはいいでしょう。年間で80万円以上のコスト削減になったのだし。

何度も何度もみたHANDBALL SPZLのZOZO商品詳細

 ZOZOに投下するお金と時間は減ってしまった。でもZOZOは、本当に自分がほしくて妥協したくないものを手にいれるときに訪れるプラットフォームとして、お金に余裕ができて楽しいお買い物体験がしたくなったときに時間を浪費する場所として定期的に訪れたいと思っている。

 今まで個人の収支管理はザルで、ほしいときに、ただその欲望を鵜呑みにしていたのだけど、このZOZOTOWNの体験の仕方が変わったことで、過程の体験を味わいながら、しっかり比較検討したうえで満ち足りた結末を迎えることができるようになっていると感じる。欲望の扱い方にバリエーションが増えて、ただ消費するだけではなく消費しない、そしてその決断をするに至った理由に価値を感じられるような思考回路が少しだけ育ったのかもしれない。大味も悪くないのだけど、ときとして細やかな風味があるのも粋かも知れない。

 次の記事では、題名に書いているのに触れなかった「節約」についてもう少し深ぼっていきたい(気が向いたら)。書いていて改めて、ZOZOTOWNという素晴らしい体験ができるプラットフォームをつくってくれたことに最大の感謝とリスペクトを感ぜざるを得ないし、そんなコンテンツや場所をつくれるマーケターになりたいなぁ(独り言)

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