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一般参賀の楽しみ

勿論、皇室の方々に手を振るお正月の行事のことではない。オーケストラの演奏会の終演後、カーテンコールで拍手が鳴り止まず、オケのプレイヤーが舞台上から退席した後も拍手が続いた場合、指揮者が再び登壇することがある。このことを一般参賀と呼ぶらしい。なぜ「らしい」のかというと、いつからそのように呼ばれ始めたか筆者は知らないからである。

一般参賀では、終演後に指揮者が降壇し、コンサートマスターが客席に向かって「ありがとうございました」とお辞儀をし、オケのプレイヤーも散り散りに帰っていき、お客さんも半数以上帰って行ったあとに行われることが殆どなので、サムネの写真のようにお客さんがまばらなことが、これもまた殆どである。

プレイヤーが降壇を始めたら、指揮者が舞い戻ってくることはほぼ無い。だから、これは終演後も席を立たずに拍手を送り続けたお客さんに送られるサプライズだ。一般参賀の参加者の大多数はスタンディングオベーションによりマエストロを出迎える。

この光景が良い。私がこの光景を目撃したのは、コロナ禍以前ではベルリンフィルとズービン・メータの名古屋公演の時が初めて。そして興味深いことに、コロナ禍以後に一般参賀の頻度が増えたように感じる。2020〜2021年にかけては、「この大変な時期に演奏会を催してくれてありがとう」という感謝が込められていることが多かった印象がある。

また、規模の大きい曲が演奏された場合(マーラー、ブルックナー、ショスタコーヴィチなど)、海外のオーケストラが来日して演奏した場合、一般参賀が発生する可能性が高くなる。

最近の私の経験では、サムネの写真にあるように、パリ管弦楽団とクラウス・マケラの公演、そして先日の名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でマーラーの「復活」が演奏された時だ。日本のプロオケの定期演奏会で一般参賀が行われるのは珍しいとされている。

それだけ上質な演奏会に居合わせることができたんだな、と確認されて、幸せな気分になる。一般参賀が行われたらラッキー!と思いたい。

追記: 
……と、このように書いた筆者だが、一般参賀そのものの自然発生については同意だけど、無理やり引き起こそうとする近年の潮流には極めて否定的である。コントラバスの人達とか片付けしてるのに、パラパラ拍手を続ける人には「ずっと拍手しとったら、そのうち出てくるやろ!」とでも言うような傲慢さが垣間見える。オーケストラの団員が引き下がったら、我々も帰路に着くのが礼儀だと個人的に思う。粘って無理やり指揮者を引き摺り出すのは、誰に対しても失礼だと思う。

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