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2020年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

2020年度のブラジルディスク大賞、関係者投票に選んだアルバムです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてアーカイブしています。アルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。この年はなんといっても"GINGA, MÔNICA SALMASO, TECO CARDOSO, NAILOR PROVETA / Japan Tour 2019"です。山形でも公演を当会が主催しました。だからこの音源は僕にとっても一生ものです。改めてみるとやはりミナス勢が多いです。


総評:

ギンガ一行のライブ盤は、素晴らしい録音であの記憶を鮮やかに蘇らせてくれた。全般的にはミナスの音楽に今年も勢いがあったが、その方向性は様々に広がっており、シーンから目が離せない。ブルーナ・メンデスの儚さ、フェルナンダ・タカイの優しさが安らぎを与えてくれたし、ルイス・ヴーレイによるブラジリアン・ジャズの秀作、ルエジ・ルーナのクールなアフロ・ブラジル、そしてフォーキーなシコ・ベルナルデスも忘れられない。


1)  GINGA, MÔNICA SALMASO, TECO CARDOSO, NAILOR PROVETA / Japan Tour 2019

(全部をまとめて試聴できるリンクがないので6曲だけ)

さてそろそろ「昨年」に終止符を打とう。彼ら4人の歴史的日本公演を焼き付けた記念碑的作品。恐るべきクリアーな音はさすがSeigenさんです。やっぱり奇跡だったなぁ〜。色々書いても意味ないから、一般リリースされたらみんな聴いてくださいね。素晴らしい4人に、改めて敬意を表します。もちろんみんな素晴らしいけど、やっぱりGuingaが支配した公演でした。


2)  Davi Fonseca / Piramba

またまた超弩級のすごいのがミナスから登場しましたね。基本的にミナス新世代のあの路線だけど、アタックの強いプログレッシブな音像にぶっ飛びますね。Davi Fonsecaのもう乱暴なくらいに力強いピアノのタッチと、スモーキーな歌声、複雑でアグレッシブな演奏が圧倒的です。Alexandre Andresがsextetoの一員として全曲に参加。Monica SalmasoとRafael Martiniもゲストで参加しています。


3)  Marcos Ruffato / Vita

いかにもミナスらしい、色彩感に包まれた音楽です。SSWでギタリスト、アレンジャーのMarcos Ruggatoのアルバム。Sergio Santos、Leopoldina、Irene Bertachini、Toninho Horta、Cristóvão Bastos、Davi Fonsecaなどなど、素晴らしいメンバーの参加がその期待度を伺わせます。ミナスらしい旋律とハーモニーですが新世代ミナス・サウンドよりは、ひとつ前の世代の空気感を感じさせます。リズム面も力強く強調されていて、それが本作を一味違うヴァイタルな作品にしています。素晴らしい。これはブラジル・ディスク大賞候補ですね。ジャケットはちと厳ついけど。


4)  BURUNA MENDEZ / Corpo Possivel

リオでもサン・パウロでもサルヴァドールでもない、ゴイアニア出身の女性SSW。新世代、新世代ってそんなこと言ってたら、時間は流れるんだからそれはずっと新世代になっちゃうけど、このクールな響きは確かに新しさを感じる。ものすごくブラジル度が高い音楽性ではないけど、音の作りが趣味が良い範疇の中で未来志向ですね。そしてなんと言ってもこの儚なげでフェミニンな歌声が魅力的だなぁ。今年のベストの1枚です。


5) JOANA QUEIROZ / Tempo Sem Tempo

Joana Queirosのニュー・アルバム。Joanaは、着実に自身の世界観を確立しつつあると、そんな確信を与えてくれる作品だ。管の多重録音から始める、アブストラクトとも言えるTr.1から、原初的で神秘的な響きを内包した、彼女だけの色彩に包み込まれる。サンプラーやアナログシンセ、パンデイロやドラムと彼女自身の歌声。全てが有機的に組み合わせれ統合された、これは妖精達の奏でる音楽です。


6) FERNANDA TAKAI / Será Que Você Vai Acreditar?

Fernanda Takaiちゃんの最近作です。改めて本作では、彼女の歌の魅力に大いに感激しています。完全にやられています。ヘビロテです。こんな風に歌を歌える歌手、そんなにいないでしょ、と僕は思うのです。吐息のように儚くて、少し湿ったメランコリーがあって、柔らかない感情や、彼女の優しさがが伝わってくるではありませんか。ポップなサウンドと、キャッチーな旋律は多くのリスナーに受け入れられやすいと思います。今回も野宮真貴さんが1曲で参加されています。山形に来た時、実はあまりお話しできなかったんですよね。今思うと残念だなぁ〜。


7) MOONS / Dreaming Fully Awake

Monnsの最新作。白状しちまいますけど、大好きなMoonsだけど、これはねピンとこなかったんですよ。リリースされてすぐからストリーミングで聴いていたんですけどね。だってブルース・ハープなんかが聞こえてきちゃって、ちょっと今までと違うって思い込んでいたんですが、でも聴けば聴くほどにこれは素晴らしいと。今までのアルバムの中でも一番好きかも。メランコリックな旋律と、間のあるサウンドはやはり彼らならではでしょうが。ブラジルだのなんだの、関係な〜〜い。好きです。最高のオルタナ・ロック。


8) LOUISE WOOLLEY / Rascunhos

Louise Woolleyの3rd。これ最高だよ〜〜〜。メンバーは、Louise Woolley (p)のほか、Daniel De Paula (d)、Bruno Migotto (db)、Diego Garbin (tp/flgh)、Jota P (sax)、Lívia Nestrovski (voc)、Danielo Silva (ac-gtr)。これ以上ないセンシティブでヴィヴィッドな知的ブラジリアン・ジャズの極み。個々の技量もすごいけど、ユニットとしても鳥肌ものです。Lívia Nestrovskiの透明な歌声と楽器との絡みがもう〜〜、かっこいい!たまらん!


9) LUEJI LUNA / Bom Mesmo É Estar Debaixo D’Água

1st albumはもう2年も前になるんですね。私、その年のブラジル・ディスク大賞の1枚に選んでますよ、確か。Salvador出身の彼女、音楽はAfro-Brasilの魂で横溢しています。本作もその延長線上にあるエネルギッシュな音楽であることはことは間違いないのですが、少し洒脱で洗練された楽曲も増えた気がしますね。でもやはり彼女らしい、しなやかな凄みともいうべきAfro-Brasilならではの存在感が出色なんです。ええ、今年もブラジル・ディスク大賞に入れざるを得ないですよ。このアルバムは。


10) CHICO BERNARDES / S.T.

なんとTim Bernardesの弟なのかぁ〜。才能のある兄弟だけど、音楽のもつ空気感、感触はが似ている気はするなぁ。この弟さんの方は、基本的にブラジリアン・フォーク、といって良い音楽性だけど、ちょっとベールに包まれた感じの残響のある音像、メランコリックで内省的な旋律が、またお兄さんとは違う方向性を示しているね。声は兄にそっくりだけど、震えるようなヴィブラートはデヴェ様みたいだな。個人的には今年のベストに入れたい一枚。



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