見出し画像

偏愛音楽。 その7:夜の音楽。

偏愛音楽。その7は夜に聴く音楽。夜に相応しい音楽を選びました。

正確に言えば、ただ僕が夜に聴きたい、僕はこういう音楽が夜に似合うと思う、偏愛する音楽をセレクトしました。「夜に聴く」ものだからあまり騒がしくなく静謐で、自ずと内省的なものに惹かれます。まだまだ暑い夜が続いていますが、身も心もコームダウンしてくれるような、そんなアルバムを選びました。年代も国籍も、もちろん音楽的なカテゴリーもバラバラです。

あまりたくさんのディスクを紹介しても聴く気にならないと思うので、今回も10枚だけに絞りました。また各々に簡単なコメントを付しました。気がつくとすべて歌物を選んでいます。夜は人の声が恋しくなるのかもしれません。

ちなみにこれまでの「偏愛音楽。」はこちらにマガジンとしてまとめています。




Beach Fossils - THE OTHER SIDE OF LIFE: PIANO BALLADS

本作はBeach Fossilsが、自身の楽曲をピアノと歌を中心にジャズ・バラードにアレンジしたもの。ちょっとノスタルジックなピアノの音色、Dustin Payseurの少し鼻にかかった残響を残すスウィートな歌声、ミニマルなベースやドラムと暖かい音色のサックス。柔らかく夢の様に甘美なバラード集。


Ben Gortmaker - All's Lost, All'S Found

NashvilleのSSW、Ben Gortmakerのアルバムです。このアルバムは僕にとって間違いなく生涯ベストの1枚。夜に一人でじっくり聴き込みたい作品。心の中に響く哀愁に溢れた旋律と、振り絞る様な切ない歌声は、とてもシンプルだけれど、誠実に真摯に作られ、心の隙間を満たしてくれるものです。


Chico Feitosa - Chico Fim De Noite

「夜の終わりのシコ」だから、夜というより明け方っていうことになってしまいますが、ボソッとした感じのChico Feitosaの歌声とOscar Castro-Nevesのロマンチックなオーケストレーションの作り出す音楽自体は「夜」を感じさせるものです。ぜひ深夜に聴いてほしい。


Ellen Doty - Every Little Scene

カナダのシンガー・ソングライター、Ellen Dotyの3作目。ストリングスが静謐で柔らかなピアノ・トリオの音に、色彩や立体感や物語性を加えています。彼女の最大の魅力は歌の力。儚い余韻を伴う歌唱、過剰にならない繊細な感情表現は彼女らしさそのものです。


Ghostly Kisses - Darkroom

ケベック州のシンガー・ソングライター、Margaux Sauvéのセカンド・アルバム。吐息のような歌声、揺れる余韻と消えゆく気配は聴くものに非現実感をもたらしてくれます。氷のような冷たさを感じさせながらも柔らかな肌触りも感じられます。美しく儚い傑作です。夜に吸い込まれそう。


João Gilberto - Voz e Violão

本作は2000年のJoão Gilberto。声(voz)とギター(violão)だけの、とことん潔い作品をproduceしたのは同じBahiaの出身で、音楽家としてJoãoをこの上なく尊敬するCaetano Velosoでした。吐息の一つも逃さぬ程の、静かな気合いを感じる録音。Joãoが隣で歌っている様な素敵なアルバムです。


Peter Broderick - How They Are

ピアノ/ギターと歌によるPeter Broderickの傑作。ポートランドのスタジオでのライヴ・レコーディングで、演奏はすべてひとりで行っている。極めてシンプルな形態で「間」のある音楽です。彼の率直な歌声が聴くものの記憶の中へと響いていく。夜の瞑想的気分に相応しい。


Radka Toneff & Steve Dobrogosz - Fairytales

夜の音楽として最もふさわしいのは、1982年に亡くなったノルウェーのシンガー、Radka Toneffのこのラスト・アルバムでしょう。ピアノにSteve Dobrogoszを配して、繊細でいて魂に響く傑作です。夜に一人では聴かないほうがよいかもしれません。切なすぎる作品です。


William Fitzsimmons - The Sparrow

ナッシュビルを拠点とするシンガー・ソングライターです。その振り絞るような、しかし優しく切ない歌声と旋律は、まさに「琴線に触れる」というべきものです。深夜に一人でじっくり聴いてみてください。彼の音楽に身も心も包み込まれていくでしょう。


Zé Ibarra - Marquês, 256

BALA DESEJOのメンバーでもある、Zé Ibarraのソロ・アルバムです。明瞭なギターの音色と、少し鼻にかかった柔らかなハイトーンによる、シンプルで静謐な作品であり、聴くほどに彼の魅力が滲み出てくるようなスルメ的アルバムです。実に魅力的な「歌」のアルバムです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?