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2011年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

2011年度ブラジルディスク大賞、関係者投票に選んだアルバムです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてアーカイブしています。アルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。「これは今年のベスト!」といいコメントが多いのは、この年も実際は順位をつけられないほど素晴らしい作品が多いからです。しかし10位のJambraってその後アルバム出してないのかな?

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総評:

①簡潔で革新的なサンバ。心地よく感染。②前衛的で審美的。美しくも面白い。③サンパウロとブエノスアイレスの邂逅。無類の透明感。④この声この旋律、そしてバタつくリズムが最高。⑤ジスモンチの世界を彼女らしい表現で。⑥色香と包容力。歌にも安定感が。⑦メローでファンキーで下品で最高。⑧サンパウロらしい一癖が素敵。⑨独特の旋律が要注目の若者。⑩若造3人によるグルーヴィな好盤。DVDはハバナのドナートに感涙。

1. Adriana Calcanhotto / O micróbio do Samba

AdrianaがSambaに挑戦、ということで話題となっているアルバム。もちろんAdrianaだけに、普通のSambaなどということはあり得ない。Adriana流の極めて進化したSambaなのだ。基本的にAdrianaと、Alberto Continentino (baixo)、Domenico Lancellotti (perc.)の3人の演奏を主体として、Davi Moras, Rodrigo Amarante, Moreno Velosoなどが花を添えるシンプルな構成。クールな色彩に統一された彼女のSambaは、勿論Sambaのリズムを基調としていても、紛れもないAdrianaならではの音楽なのだ。これ今年のベスト。今のところ。


2. Telebossa / S.T.

Berlinを中心に活動するブラジル人Chico Melloと、Berlin出身のドイツ人Nicholas Bussmannとのユニット、"Telebossa"のアルバム。実験的でいてまた無類に美しい音を追求するChicoと、チェロ奏者であり、エレクトロニカにも通じるNicholasの組み合わせは、お互いの求めるところであった様だ。ミニマルな弦のアンサンブルと、Chico の繊細な歌声、極めて控えめな打楽器とエレクトロニカによって、知的でいて感覚的な世界を創り上げている。実験的でありながら全く難解さを感じさせないのは、二人の美意識の故であろう。これ絶対的推薦盤!


3. Tatiana Parra & Andrés Beeuwsaert / Aqui

これは参った。予想はしてたけれど。予想以上に参った。どう考えても今年のベストだな。São Pauloの歌姫Tatiana Parraと、Aca Seca Trioのpianist、Andres Beeuwsaertとのduo。Tatianaのデビュー盤、そしてAndresの“D'os Rios”での共演が、こうして二人の作品として結実した。この二人、美意識が極めて近い。故にかくも親密で透明な世界を構築し得たのだ。「美しい」という言葉で表現したのでは、凄く陳腐に感じてしまう。それほどに珠玉の作品です。


4. Marcelo Camelo / Toque Dela

Marcelo Cameloのソロ2作目。最初に言っときます。私Marcelo Cameloの大大大ファンでありまして、冷静な判断は大凡出来かねます。磨き抜かれた切ないメロディー・ライン、余韻を残す甘い歌声を聴いただけで、もうこれはすでに今年のベスト(キッパリ)。シンプルでタイトなサウンドはLos Hermanosの延長線上のそれですが、よりきっちりアレンジされていて気持ちがよい。期待を裏切らない素晴らしい出来に、もうさっき届いてから聴きっぱなし。


5. Delia Fisher / Saudações Egberto

昨年の“Presente”に続くDelia Fischerの3枚目のアルバム。今回は彼女が敬愛し、師匠とも言えるEgberto Gismonti集。もちろん期待を裏切ることなどあろうはずが無い。"O Sonho", “Loro”, “Saudações”, “Frevo”, Agua e Vinho"など、Gismontiの名曲の数々が、Delia Fischerのpianoとvocal、そして彼女のgroupの端正なバッキングによって演奏されている。彼女はもちろん素晴らしいピアニストである。しかし歌にも独特の儚い魅力があって、その歌とピアノでこの大音楽家の音楽に好ましい軽やかさを与えている。御大本人が10弦ギターで1曲に参加、またMoskaもゲストで軽やかな歌を添えている。本年のベストの一つ。


6. Maria Rita / Elo

待望の4枚目。基本的路線は1st、2ndに戻り、Thago Costa (p.)、Sylvinho Mazzucca (b.)を中心としたJazzの香りを漂わせたsound。選曲は気鋭の若手の曲をセレクトして今までとは少し違って、Lula Queiroga, Fred Martins, Davi Moraes, Daniel Jobim, Caetano Veloso, Djavan, Edu Lobo /Chico Buarque, Monarco, Maecelo Camelo, Rita Leeといった名の有るアーティスト達を取り上げているが、選曲のセンスの良さはいつも通り。歌の不安定さはますます無くなって、柔らかな肌触りの歌には力強さも漂っている。5/11曲でThiagoがRhodesを弾いていて、これがもう鳥肌もの。充実の新譜。


7. Seu Jorge / Músicas para Churrasco

「シュハスコのための音楽」と題されたSeu Jorgeのnew album。タイトル通りの如何にも肉食の音楽だけど、これはとてもとても良い。いつもながら切れ味鋭いenergishなfunkやsamba、ごった煮の風味は変わらずに、さらにmellowな曲が加わって素晴らしい出来。汗だくだけではない新機軸。これがもう出色にカッコ良いのだ。vol.1って言うからには少なくともvol.2は出るだろうって期待も待たせつつ。まあJacketだけは勘弁してね。


8. Romulo Fróes / Um Labitinto em Cada Pé

Romulo FroesはSao PauloのSSW。以前から私的には注目して来たアーティストで、本作は彼の4作目。ちょっと3枚目には入り込めなかったのだが、本作はもうこれは素晴らしい。基本路線は変わっていない。Sao Pauloのお婆ちゃん歌手Dona Inahの歌で始まる本作も、sambaをベースにはしているが、翳りのある曲想、斬新な音作りは如何にも彼らしい。独特の感性とサウンドで、彼だけのどこか凄みのある音に溢れている。ChorusでNina Becker、guitarでRodrigo Campos等が参加。


9. Alexandre Andrés / Águaluz

何だこの若造。正直驚くしかないぞ。このqualityの高さは一体なんなのだろう。曲はすべてAlexandre Andrésの作曲と、Bernardo Maranhãoの詩によるもの。複雑で壮大な楽曲はちょっと、比べるべき者が居ない。ジャケをみると、このBernardo君も若造みたい。素晴らしいコンビである。重層的で色彩感溢れるアレンジメントと、超高品質の演奏は驚くべきもの。立派でも魅力的ではないって言う場合もあるけれど、これは極めて魅力的。その上Andre Mehmariや、Monica Salmasoも参加しているなんて、やはり驚くしか無い。


10. Jambra / Folha de Laranjeira

これは素晴らしい。Guilherme Bandeira (vo), Danilo Silva (violao), Fabio Faustino (bateria)3人による、全員が19-21歳という若造達によるユニット、"Jambra"。都会的で洗練された音楽性はただ者ではない。Thiago Espirito Santoがproduceとbassで全面的にバックアップ。Mellowで、groovyで、若々しくて、勢いがあって、これは要注目です。 Thiagoのバックアップも凄い。目立っちゃってます。目立ち過ぎです。


DVD João Donato / Nasci Para Bailar

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