見出し画像

2017年LATIN AMERICA以外の10枚

ブログから古い記事を移行しています。ブログを見ると言う奇特な方はもうほとんどおりませんので。今回の記事は2017年のアルバムからLatin America以外のものを10作品選んでいます。


今年は圧倒的な作品が多かったと思います。まだまだ音楽の可能性には際限がないのだと、心底感じた年でした。音楽がグローバルになっていくことは、ちちろん素晴らしいことですが、その多様性は少しも失われず、それどころか、さらに独創的な音楽が誕生しているようです。まずはラテンアメリカ以外のディスク10枚を選びました(ラテンアメリカは近々アップ予定)。もちろん例年以上に10枚に絞り込むことは困難でしたが、今年を代表する作品を選んだつもりです。テキストは以前ブログで紹介したものを若干改変したものです。



ALFA MIST / Antiphon

Alfa Mistはロンドンを拠点とする。作曲家/プロデューサー/キーボード奏者。Hip Hopやsoulの香りも強く残しているが、基本的にジャズのフォーマット。キーボードを中心に、エッジの効いたギターと、タイトなドラムが、鮮烈な空間を作り上げているけれど、どこかセンシティブな印象の作品。そういう印象を感じさせるのは、全編を通して漂うメランコリア故か。


ARTO LINDSAY / Cuidado Madame

Arto Lindsayの13年ぶりのオリジナル・アルバム。盟友Melvin Gibbs、Kassa Overall、Paul WilsonなどのNYの若手、Dadi、Lucas Santanaブラジル勢、SalvadorのAfro-Brasilのリズム陣、Mike Kingのハモンドオルガン、そしてArtoのnoise guitarと儚い歌声。多様で多彩な組み合わせから生まれた本作は、実験的でスリリング、しかも無上に美しい。


CHRIS THILE & BRAD MEHLDAU / S.T.

Punch BrothersのChris Thile (mand., vo.)とBrad Mehldau (p., vo,.)のデュオ。言わずもがなの名手二人ということで、また「ジャンルを超えたコラボ」的な紹介をしがちだけど、もうジャンル云々は不要でしょう。二人の才能豊かな音楽家の共演は芳醇でいてデリケート、そしてスリリングで熱い。


FABIAN ALMAZAN & RHIZOME / Alcanza

これはまさに疾風怒濤の会心作。ピアノ・トリオと、弦楽四重奏と、Camila Mezaの歌が複雑かつ渾然と、しかしどれも過不足なく完全に統一されて、重層的な音楽が形成されている。力強く縦横無尽に空間を駈るFabianのピアノ、Linda Ohの強力にして印象的なベース、Henry Coleの強烈なリズム、ドラマチックにうねる楽曲は限りなく衝撃的。


JANE BIRKIN / Birkin Gainsbourg Le Symphonique

Jane Birkinが、亡き夫Serge Gainsbourgの楽曲をオーケストラで綴った作品。ピアノと編曲は中島ノブユキさん。Janeの愛らしさ、情感、改めてGainsbourgの楽曲の魅力を再認識させられた。本作の白眉は、なんといっても中島さんのアレンジ。繊細で劇的で、古城に響くように典雅である。


KAMASI WASHINGTON / Harmony of Difference

このエネルギーは凄い。音の洪水が、聴くもののテンションを、否応が無しに引き上げる。ソウルフルでメロウな主題、Kamasiの豪快でスピリチュアルなブロウ、複雑でダイナミックなリズムの躍動と、分厚く濃密なサウンドには、誰もが熱くならずにはいられない。疾風怒濤の音の嵐。その先に待ち受けるのは甘美なるカタルシス。


KURT ROSENWINKEL / Caipi

Milton Nascimentoを敬愛するというKurtが、Pedro Martins、Antonio Loureiro、Frederuco Heliodoroなどミナス新世代の参加を得て作り上げた本作、ヴォーカルもフィーチャーされた幅広い音楽性は、「自分を深く動かした音楽への長いラヴレター」なのだという。色彩と創造に溢れた、躍動感あふれた傑作。


LAETITIA SADIER SOURCE ENSEMBLE / Finding Me Finding You

STEREOLABのLaetitia Sadierのユニット。古いジャズやポップ・ミュージック、そして映画音楽を思わせる、小粋なノスタルジアを、エレクトロニカも用いた、斬新でキラキラ輝くドリーミーなサウンドで構築した素晴らしい作品。懐かしくて新しく、そして心地よい。Laetitia Sadierのくっそ落ち着いた歌声がとてもクール。


MOONCHILD / Voyager

Rhodes、 Wrurlitzer、 piano、synths、drum programmingなどを混じえつつ作り出す、究極に甘美なサウンドと、複雑でいて軽やかなリズム。そしておじさん達のハートを確実にくすぐるAmber Navranの、舌足らずでキュートな歌声。暑苦しさのない軽やかな音楽性は、ソウルでありながらどこまでも爽やかで清々しい。


NAI PALM / Needle Paw

Hiatus Kaiyoteのvocal/guitarのNai Palmのソロ・アルバム。彼女の歌とギターとコーラスのみで構成された、芳醇にして鋭利な音楽。Hiatus Kaiyoteの楽曲から、Jimi HendrixやDavid Bowieをカバー。ソリッドなギターのサウンドと、力強くソウルフルな歌とコーラス、このシンプルな編成で、このカラフルでグルーヴを創造してしまう彼女は、とてつもないタレントだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?