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2019年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

2019年度のブラジルディスク大賞、関係者投票に選んだアルバムです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてアーカイブしています。アルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。この年の一位には久々にサンバのアルバムを選びました。Alfredo Del-Penhoの弾き語りによるシンプルなサンバ。名盤です。そしてコロナ禍で残念ながら山形公演が中止になったLeonardo Marquesのアルバムも素晴らしかった。なぜか"ANDRÉ MEHMARI, BERNARDO MARANHÃO, ALEXANDRE ANDRÉS / RÃ"だけはブログでの紹介をしていなかったようです。


総評:

1)弾き語りによる真っ直ぐなサンバ。圧倒的です。2)ヴィンテージ感溢れる極上の宅録サウンド。3)ヴィヴラフォンとアフロブラジルの組み合わせが斬新。4)と5)期待に違わぬ大御所たちの充実した新作。6)音の立体感と色彩感が素晴らしい。7)シネマチックでドラマチック。8)アーシーな楽曲から、洗練された楽曲まで幅広く。9)コンテンポラリーなジャズ。でもかなりポップな仕上がり。10)実に正統な歌い手です。

1) ALFRED DEL PENHO / Samba Só

衒いのない、まっすぐなアルバムです。ラパ地区を代表するサンビスタ、Alfredo Del-Penhoの弾き語りによる作品。自曲を中心に、JoyceやZelia Duncanや、Nei Lopes、Chico Cezar、Pauro Cezar Oinheiroなどとの共作を収録。伝統的なサンバのマナーにのっとった楽曲の中に、彼らしい新しさを交えながら、堂々としたストレートな歌声と、流麗で粋なセッチの響きが、サンバという音楽の持つ伝統と、底力を信じさせてくれるのだ。やっぱりサンバは良いねと、皆に言いたくなる作品です。


2) LEONARDO MARQUES / Early Bird

これはもう完全に次年度のベストだよね。Leonardo Marquesの3枚目のアルバムです。ブラジル的なリズムも余分を切り落として換骨奪胎し、ポップでキャッチーな旋律を乗せて、ヴィンテージ感溢れるミニマルで甘いサウンドと、とどめはやわらか〜い歌声でもって、まさに夢のような、極上の空間を創り上げています。う〜〜む、うっとりしちゃうね。


3) RICARDO VALVERDE / Xiré de Vibrafone

最近ずっとライブの準備に追われていて全くdisk紹介ができておりませんが、やっとひと段落ついたので、まずこれ。これはもう超絶面白いし、クールです。Ricardo Valverdeと言うヴィブラフォン奏者のアルバムです。彼を中心に、温かな管を配した、ラウンジーでジャジーなアンサンブルに、アフロブラジルのアタバキによるワイルドな打楽器隊を組み合わせたと言う、とても斬新なアルバムです。ミスマッチの様でいて、極めて絶妙。緩くてクールでグルーヴィと言う、ほとんどなさそうな音を実現してます。これはベスト入りです。


4) TONINHO HORTA & ORQUESTRA FANTASMA / Belo Horizonte

見事にタイミングを外した紹介ではありますが、Toninhの新譜です。みんなとっくに買ってるよね。ディスク1では自身の有名曲を、リサさんなどのゲストを迎えて、トニーニョのファンにはたまらない内容。そしてディスク2ではデビュー・アルバム”Terra Dos Pássaros”でのToninhoのバンド、Orquestra Fantasmaのメンバーとの未発表曲を収録。こちらは貴重なだけではないすばらいい演奏集。Toninho、「このメンバーで来日するゼェ」って、言ってたよ。


5) ADRIANA CALCANHOTTO / Margem

Adrianaの4年ぶりの新作です。彼女らしい歌と斬新な音楽性を維持しながら意欲的な作品を作りました。サウンドを担うのはBem Gilを中心としたTonoのメンバーですが、kassinもなんとシタールで参加していたりして、リオらしい明るさの中に刺激的なサウンドを作り上げています。まだまだチャレンジングなAdianaの姿勢が素晴らしい。


6) ANDRÉ MEHMARI, BERNARDO MARANHÃO, ALEXANDRE ANDRÉS / RÃ

なんと本作はその当時ブログで紹介していないようです。そういうこともあったんだなぁ


7) O TERNO / Atrás/Além

昨年ソロアルバムで、非常に注目を集めたTim Bernardes率いるO Ternoのアルバムです。ソロ作と、音楽性は同じ方向だと思いますが、本作はオーケストレーションがより深度をまして、ダイナミックでドラマチックです。ブラジルということにあまりこだわらずに聞いてほしいですね。シネマチックなポップ・ミュージック。坂本慎太郎さんと、デヴェ様が1曲参加してますが、ソロ作のコメントで述べたように、デヴェ様との親和性がとても高いです。これもっと話題にならんといかんです。


8) SAULO DUARTE / Avante Delirio

Sauro Duarteはnorte出身、現在はSao Pauloを拠点として活動しているSSWなのだそうです。正直なところ、全然知らんかった。土煙の香りがするアーシーな楽曲から、都会的な洗練を帯びた楽曲、さらには実験的な楽曲まで非常に幅広い。そういう世代の人なんだと思う。これが一つのアルバムとして統一されて、それがなかなか素晴らしんだな。


9) PEDRO MARTINS / Vox

最近ディスク紹介をさっぱりできていないので、これも完全にタイミングを逃してしまってます。今やKurt Rosenwinkelのお墨付きといえばこの人、Pedro Martinsです。メンバーはKurtのほか、Antonio Loureiro、Frederico Heliodoro、Brad Mehldau、Chris Potterとうとうというすごいメンツです。もちろん基本はコンテンポラリーなジャズですが、本作はとてもポップな仕上がりです。良い意味で軽いです。Pedroのハイ・トーンのうた、決してうまくないです。でもどこか惹きつけられる魅力がありますね。


10) ANNA SETTON / S.T.

拾い物、などという言い方が失礼だとはもちろん承知しているけれど、これはホント拾い物です。Swami Jr.のプロデュースによる、Anna Settonという女性歌手のアルバムです。かなりジャズ寄りの、でもとても趣味の良いサウンドに、このAnna Settonの麗しくも明瞭な歌声が、実に映えます。いやほんとにあまり期待してなかったんで、これは嬉しい。



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