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2008年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

LATINA誌のブラジルディスク大賞、2008年度の関係者投票に僕が選んだディスクです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてnoteにアップしています。アルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。したがってコメントが古いのはご愛嬌ということで。

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総評:

単純によく聴いたアルバムを選んだ。1はベルモンド兄弟の作品という意見もあるが、素晴らしい「共作」だ。奥行きと色彩感が凄い。2はソロとしてのスタートにしては超「おセンチ」な作品。でもやはり素敵だ。3、4は音楽的にはルーツを追い求めながら、実に新しくカッコいいサウンドを創り上げている。5は古典的とも言える曲の魅力と、新しいサウンドがマッチしていた。しかし毎度ながら5枚に絞るのは実にきつい。

1: Milton Nascimento & Belmondo

Milton Nascimentoと、France人LionelとChristopheのBelmondo兄弟とのco-laborate作。目下私的に今年一番感動している。年齢的に涙腺が緩んでいる所為だけではないと思う。"Ponta de Areia", “Canção do Sol”, “Travessia"などなど、曲はお馴染みのMiltonの名曲だが、Belmondo兄弟の手によって、新しい響きがもたらされている。実に典雅で奥行きがあり、Jazzyであるがどこか宗教的なarrangementは、Europe人であればこそなし得たももので、逆にBrasil人には無い発想に思える。 Miltonの古木から発せられるが如き声と、見事に溶け合っている。これ傑作です。


2: Marcelo Camelo / Sou

待ちに待った、という方が多いのではないでしょ〜か。私もスゴ〜く待ってました。ex-Los Hermanos、Marcelo Cameloの待望のsolo albumです。Los Hermanos色がもっと強いかなぁと思っておりましたが、Los Hermanos的なRockerな部分はほとんど顔を出しません。非常に内省的で、「おセンチ」なアルバムです。でもMarcelo Cameloらしい、胸に沁みるmelodyは健在です。泣けます。とてもとても内向きな作品ではありますが、じわりと響いて来ます。共感出来ます。やはりone and onlyの世界を持った人だなぁと、感心してしまいます。


3: Nicolas Krassik e Cordestinos

Nicolas KrassikはFrance出身のviolin奏者。classicを学んだ後、Jazzの演奏者としてプロのcarreerをstart。現在はRioに定住し、Beth Carvalho、Marisa Monte、Yamandu Costaなど、数多くのartistとの共演で、もはやsamba/choro界を代表するviolin奏者と言って良いでしょう。通算3枚目となる本作は、自身のband"Cordestinos"を率いてのalbum。自身のviolinの他、Marcos Molettaのrabeca、Guto Wirttiのcontrabaixo、そして2人のpercussionという編成。北東部のrhythmを多用したNicolas本人によるarrangeは、知的で洗練されたものですが、思わず体が動いてしまうような原初的興奮も失われていません。個性的な楽器編成も、各々の個性が実に良く生かされていて、これは理屈抜きでカッコ良い作品。


4: Kiko Dinucci e bando / Afromacarronico

以前も紹介しました。Kiko Dinucciです。自らのbandを率いての本作、やはりAfro-Brasilに根ざした、無骨でどっしりした作品です。Bandの編成はcavacoと、violãoと、percussãoという全く基本的なものなのですが、志が違うとこうなるわけだ。Kiko Dinucciの低音を強調したviolãoと、cavacoとの対比、そしてAfro-Brasil的percussãoの作り出す音場は、かつてないearthyかつ斬新なsoundを創出しています。エキセントリックなmelody lineも実に耳に残りますな。


5: Edu Krieger

Roberta Sa, Maria Rita, Pedro Luiz e a Paredeなどへの楽曲提供で注目されています。Edu Kriegerのdebut albumです。なるほど確かに良い曲を書きます。sound面はいわゆる新世代の音で、programmingもelectricalな部分と、acousticな部分が自然に調和していてかっこよいのでありますが、やはりこの人は曲でしょう。アレンジが違えば古典的な曲にすら聞こえる普遍性が、この人の曲にはあるように感じます。さらに端正で、若々しくsoftな歌声も特筆でしょう。これも早くもディスク大賞候補です。


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