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2009年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

LATINA誌のブラジルディスク大賞、2009年度の関係者投票に僕が選んだディスクです。2004年から2021年度まで、徐々に試聴リンクをつけてアップしています。この年からアルバムを10枚選ぶようになりました。アルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。したがってコメントが古いのはご愛嬌ということで。この年は2位に現在復活活動中のショーロクラブのアルバムを推していますね。

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総評:

1位はリオの粋を凝縮。感動的です。2位は日本が誇る初老3人組の充実作。20周年おめでとう。3位はミナスのサラブレットの才能が開花。4位は正統かつ古風なサンバを書く才能に。5位はサンパウロらしい屈折した才能。6位、8位は今年度を代表する洗練された音。7位にはロス・エルマーノスの面影を懐かしみ、9位には大きな期待をした。10位は少しとぼけた彼らを。DVDは色物かと思う程超絶面白かった本作を選出。

1位: Marcos Sacramento / Na Cabeça

私的には今のところ今年の一押しかなぁ。Marcos SacramentoのNew Albumです。backはLuiz Flávio Alcofra (Violão 6 cordas)、Zé Paulo Becker (Violão 6 cordas)、Rogerio Caetano (Violão 7 cordas)の3人のviolãoのみという潔さ。Violãoのみによるensembleと、Marcos Sacramentoの歌のみで聴かせるalbum。現代を代表するviolonistaの共演は、超絶技巧は言うまでもないが、さらに流麗なる美しさも特筆すべきである。この華麗なbackを従えたMarcos Sacramentoの歌が、泣けてくる程に感動的である。こんな質の高いalbumは、滅多にあるもんじゃない。


2位: Choro Club / Trilogia

Choro Club、4年(注:2009年当時)ぶりの新譜です。じっくり練り上げられた本作は、改めてこの3人の初老たちが創り上げる音楽の質の高さを証明する、充実した作品です。ここにあるのは確かに今まで通りのChoro Clubの音楽にして、紛れも無く彼らの音なのだけれど、熟成された香りの様なものが滲み出て来たなぁ、と思う。1曲1曲が実に個性的で、albumとしてdramaticである。Carlos Aguirre Grupoの音に惚れ込んでいる私ですが、彼らの音楽が聴くものを雄大な自然へと誘うのに対して、Choro Clubの音楽は聴くものを自らの内なる宇宙へと誘います。我々のすぐ側にこういう良質の音楽がある事を再認識致しました。Guestに、佐藤芳明 (accord.)、岡部洋一 (perc.)、ヤマカミヒトミ (flute)など。そういえばLeo Minaxも、Choro Clubの音、凄く好きだって言ってました。


3位: Robertinho Brant / Filme Imaginário

詩人Fernando Brantの息子として、注目されていたRobertinho Brant。その後あまり名前を聞かなかった彼の、なんと13年ぶりのnew album。驚くべき進化を遂げて、正に真価を問うに相応しい秀作です。Minas的透明感、色彩感、sentimentalismを凝縮したsoundに、Robertinhoのgentleなhigh tone。Seu Jorgeとのcolaborateによって培われた音楽的幅が加わって、これは本年度一押しではないかと。


4位: Edu Krieger / Correnteza

Edu Kriegerの良さって何だろう?勿論よい曲を書く事は、Maria Rita等が彼の曲を多く取り上げている事から自明である。ただ「良い曲」といっても彼の曲は非常に古典的だ。まるでSamba classicの様な、典雅で懐かしい旋律が、彼の曲の特徴であろう。そして自身のalbumにおいては、その古典的に美しい曲を、simpleでありながら、新しいsambaの感覚で解釈するのである。その中には、programmingや、rhodesや、electricalな要素が盛り込まれている。しかしそれでも古典的曲想が浮かび上がって来るところが、彼の貴重な個性である。


5位: Carlos Careqa / Tudo Que Respira Quer Comer

これは、或る方に強烈にレコメンを受けました。そもそもSão Pauloの、ちと捻くれた、そして知性的な音楽が好物の私にはそれは見事にツボなのです。伝統的なBrasil的な音楽的要素を軽くデフォルメし、少しの前衛と、Rock魂とでpopにまとめ上げた音楽は、喜劇役者でもあるという、Carlos Careqaという男の哀愁でもって、一つの個性的な音楽として完結しているのです。São Pauloな捻くれた音を演出している重要人物はMusica Ligeiraでもお馴染みのMario Manga。その他Monica Salmaso, Toinho Ferragutti, Guello, Sylvio Mazzuca, Maria Alcinaなど。とぼけたJacket workも素晴らしい。レコメン頂いた方の思惑とおり、今年の重要作品の一つに、私もカウント致します。


6位: Verônica Ferriani / Verônica Ferriani

最初に言っときます。こりゃ、素晴らしい。São Pauloを拠点とする女性歌手Verônica Ferrianiのalbumです。素晴らしい才能だと思います。soundはBIDのproduceによる最先端のSão Paulo的それなのですが、Fender Rhoesも効いとります。本人がこだわり抜いたと言う選曲の妙。Gonzaguinha, Marcos Valle, Palinho da Viola, Assis Valenteなどなど新旧取り混ぜつつも、彼女らしさで統一されて、ちょっとsmokyで、saudadeな歌声は超絶的に魅力的。目下今年度一押しです。


7位: Little Joy / Little Joy

元Los HermanosのRodrigo Amaranteの新project、Little Joy。米国debutというわけです。The Strokes (これって凄いbandなんすか?ワシこの辺りまぁ〜〜ったく疎いのですが)のdrummer、Fabrizio Morettiと、その彼女(らしい)Binki Shapiroとの3人。そしてBrasilものとの関わりも深い王子Devendra Banhartが絡んでいるのだ。聴く側の立場に依って聴こえ方も違うのだろうが、私はこの音楽にLos Hermanos的部分を濃厚に感じるのです。これ、かなり良い。


8位: Dani Gurgel / Agora

Debut Album、”Nosso"から注目の彼女なのです。そしてこの2作目もその期待や注目に値するalbumであります。本作も、Vinicius Calderoni 、Tó Brandileone、Michi Ruzitschka、Debora Gurgelなどなど(ご覧の通りたくさん)彼女の回りのall starsが参加。さらにRicardo Tete やDanilo Moraesなど、現代のSao Pauloの若手が結集した洗練の極みなのです。


9位: Maria Gadú / Maria Gadú

「期待の新人」と呼ばれるartistは、一体1年に何人ぐらいいるのでしょう。まぁなかなか統計としては成立しない話ではあるのですが。そしてこのMaria Gadúもそういう期待の新人。São Paulo出身の22歳なのだそうだ。そして「期待の新人」の多くは忘れ去られて行くのだけれど、彼女の将来は違ったものになるだろう。Originalの曲が、すでに彼女独特の個性を漂わせているし、声も歌唱も、彼女らしさと言うものが出来上がっている。出来上がっているけれど十二分に新鮮でもある。SupportにDadi, Stephane San Juan, Marcelo Costaなど。これは、イケてます。


10位: Forro In The Dark / Light A Candle

1st以来2年ぶりとなる"Forro in the Dark"の2nd。彼のやっている事は、言ってみればブラジルのど田舎の音楽Forroを、NYのdance floorに引きずりだして、さらにはカッコいいとまで思わせてしまうのである。もともとForroもdancableな音楽ではある訳だけれど、もちろん其処は、そのまんまやってしまっている訳ではない。だからこそ彼らは注目に値するのだが。さてnew albumもほぼ前作の路線の継承で、恍けた味と、素敵なgrooveのごった煮なのである。


DVD: Silvia Machete / Eu Não Sou Nenhuma Santa


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