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今年一番⚪️⚪️だったアルバム 2023

2023年最後の山ブラ企画です。

今年も1年間、みなさんも様々な音楽に出会ったことと思います。そしてそれぞれに異なる意味で印象的な作品があったはずです(無い?)。今回は今年一年の締めくくりとして、山形ブラジル音楽協会の会員/関係者、並びに関係アーティスト/ゲストの皆さんに、「今年一番〇〇だったアルバム」をセレクトしていただきました。「〇〇」の内容は各人自由に設定していただきました。たとえば「一番好きだった」でも「一番腹が立った」でも「一番エロかった」でもなんでも良いわけです。各人にとってある視点から「今年を代表する一枚」を選んでいただいたという訳です。今回はかなりブラジル音楽も多く、これこそ山ブラという面目を保つことができました(笑)。

色々な職種の様々な年代の方達に、多様なアルバムを選んでいただきました。結果的にかなりのヴォリューム(42アルバム)になりましたが、面白い内容なのでぜひ多くの方に読んでいただければ幸いです。

師走のお忙しい中、快くご協力いただいた方々に、改めてお礼を申し上げます。



今年一番印象に残ったアルバム: アイハラケンジ (株式会社Q1 取締役/プロデューサー)

横山起朗 / quiet new

やまがたクリエイティブシティセンターQ1でのベヒシュタインピアノライブが記憶に新しい横山起朗の最新アルバム。それまでピアノソロの音源など全くといっていいほど聴いたことのない僕にとって、ピアノの演奏というよりも、ピアノから紡ぎ出される音/残響のマチエールたちと静かに「対話」を重ねるアーティストの姿が浮かぶ不思議な一枚。CDに添えられた一枚の写真と英文も昨日と今日と明日の静かな「対話」を彷彿とさせる。


今年一番聴いて嬉しかったアルバム: 荒川弥男@ブラジル音楽落語浪曲愛好家

Joyce / Natureza

ジョイスのあの名盤に、こんな素敵なお姉さんアルバムがあったなんて!微睡む様なオーケストラアレンジの名手ラクラウス・オーガーマンが制作した1977年NY録音盤「NATUREZA」。特に1曲目10分超のロング「フェミニーナ」トゥッチとナナ・ヴァスコンセロスの力強いバチーダに、ジョイスの瑞々しい声とヴィオロン。ジョー・ファレルのフルートが朗々響き、マイク・マイニエリのヴィブラフォンが駆け巡る。録音から45年間お蔵入り、もし当時ちゃんとリリースされていたら凄いことになっていたはず!


今年一番待ち遠しかったアルバム: 石郷岡英子 (副会長)

haruka nakamura / 青い森

harukaさんの山形公演は、計5回していただいたのですが、6回目となるはずの公演はコロナ禍で中止になってしまいました。それ以来harukaくんには会ってもいないので、このアルバムはとても待ち遠しかったのです。シンセサイザーのみで製作された本作ですが、『青い森』というタイトルに相応しい、清冽で澄んだ空気感と、包み込むような暖かさを感じさせます。懐かしくて敬虔な気持ちをもたらす旋律は、心を整えてくれます。


今年一番ジャケットに裏切られたアルバム: 石郷岡学 (会長

UBIRATAN MARQUES / Dança do Tempo

本作はピアニスト/指揮者/作曲家/編曲家/教育者として知られるUbiratan Marquesのアルバム。彼はOrquestra Afrosinfonicaの創設者です。厳ついジャケットを見ればさぞハードな音楽かと思いきや、アフロブラジルのリズムは控えめに、とても優しい音楽ではありませんか。伝統を維持しつつ洗練されていて、音楽として面白いし実にカッコ良い。良い意味でジャケットに裏切られたアルバムでした。


今年一番大変だったアルバム: 江利川侑介 (diskunion / Think! Records)

Ana Frango Elétrico / Me Chama de Gato que Eu Sou Sua

予定通りにコツコツ進める日本人と、やると決めたら短期間で集中して進めるブラジル人。そんな国民性の違いに最も悩まされたのが、今年担当したこのCD&レコードのリリースでした。レコードにはZINEを付けてくれ、色は蛍光緑の特色で、このブックレットをCD仕様に組み直して(入稿は明日だけど)などなど…。聞いていなかった仕様を〆切間近で次々に出され、スケジュールはぐちゃぐちゃ、予算も大幅オーバー!それでも今年屈指の話題作になってくれたからこそ、今となっては笑い話にできるというもの。まだの方は是非フィジカルを手に取ってもらえると嬉しいです。


今年一番部屋の雰囲気を変えてくれたアルバム: 榎本善一郎 (Yama-bra東京支部事務局)

塙正貴 / サイレンス

アクリル画家でもある若手サックス奏者塙正貴のファーストアルバム。佐藤浩一pf、小西佑果b、福盛進也drという個人的にも最高のメンバーを迎えながらも描かれる音像はストイックさが貫かれた独自のもの。「豊かである」という言葉を「サイレンス」に使いたいという気持ちになることは本当に贅沢な体験。アンビエント音楽ということとも違う存在感で僕の部屋を何度も満たしてくれました。

*配信リンクはありません。


今年一番心地よいと感じたアルバム: 奥山心一朗

民謡クルセイダーズ / 民謡珍道中

民謡クルセイダーズのワールドツアーを撮影したドキュメンタリー映画『ブリング・ミンヨー・バック!』。映画が面白かったので、1stアルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』を聴くと耳馴染みのある民謡「真室川音頭」や「会津磐梯山」がラテンのリズムで演奏されている。それがなんとも心地よい。先日リリースされた『民謡珍道中』も期待を裏切ることなく、ワールド・ミュージックを聴く感覚で日本各地の民謡が楽しめる。


今年一番惚れたアルバム: garimpeiro2

Julia Mestre / Arrepiada

今夏、来日して好評だったBala Desejoでも一際目立っていたジュリア様の新作はタイトル通り「鳥肌」もの。多様なリズム、サウダージなメロディ、ロマンティックなハーモニー、懐かしいMPBのエッセンスがギュッと詰め込まれてポップにアップデートされ、近頃ブラジルもので味わえなかった心地良さが満載です。ちょっとコケティッシュな彼女に鼻にかかった甘い声で「口の端にほんの少しキスして」「私の楽園をあなたに見せてあげる」なんて歌われたら、もうメロメロ(笑)


今年一番聴いたアルバム: 川上 直

RHYMESTER/ Open The Window

ヒップホップ生誕50周年の今年、もっとも多く聴いたアーティストは結成34年となる日本のヒップホップグループ、ライムスターでした。コロナ禍、世界情勢、ヘイト…心の中の様々な閉塞感にタイトルどおり窓を開け、風を通してくれたアルバムです。今年はライブも2回観賞でき、来年の2月にはツアー締めくくりとなる武道館。もちろん行きます!


今年一番短期間に超聴いたアルバム: 倉嶋 英子(東京支部長)

Agust D(SUGA) / D-DAY

幸運にも東京とソウル両方のコンサートチケットを手にする事が出来、それに向けて歌詞を覚えるため短期間に朝から晩まで聴き続けたアルバムです。 結局全部覚えきれずデタラメを叫んで来たけれど最高の推し活になりました。 全員が入隊した今、ユンギバージョンのLife goes onは何度聞いても泣けます。


今年一番聴いたアルバム: gota

Zé Ibarra / Marquês, 256.

お題を決めたときから今年はこのアルバムだろうなと思っていたら、案の定、Spotifyの再生回数でも収録曲が上位独占でした。 声よし、曲よし、アレンジよしで、何回聴いてもうっとりしてしまいます。


今年一番気に入ったアルバム: ゴナイカワマコト

Emma Frank / Interiors

「引っ越しした日に、がらんとした部屋で荷解きしている途中、手を休めてふと周りを見渡した時」みたいな景色が頭に浮かんで来ました。まだカーテンのない窓から差し込む昼過ぎの光、ふわりと通り過ぎるいつもとはすこし違う風の匂い。風景が浮かぶ音楽はいいなあ。


今年一番 エモかったアルバム: kayoko konnno (食堂店主)

はじまりの夜 / 江﨑文武

陰翳礼讃がコンセプトだそうです。 暗闇の中、小さな灯りが作る陰影が、暗いだけの空間に奥行きを感じさせてくれるように、優しい音の響きが、静寂をより際立たせてくれるようです。 その音色は、何処か懐かしいような温かみが感じられて、心の奥の深いところから、古い記憶を連れてきてくれます。ノスタルジア…今は「エモい」っていうのかな。


今年一番妻を喜ばせたアルバム: 佐藤琢雄(河北新報社)

Michael Pipoquinha / Um Novo Tom

このアルバムを聴いていると、いつも「これ、いいね」と妻から声がかかる。「なんて人?」「ミシェル・ピポキーニャっていうブラジル人ベーシスト」。珍しく熱心に検索しているなと思ったら「あっ!」と歓声が。10年以上も前、ピポキーニャが少年だった頃の動画を妻はよく見ていたらしい。
わたしの方が最初に見つけた!と鼻高々&満面の笑み。夫婦そろって、彼の超絶プレイと複雑ながらけれん味のない良曲の虜になっています。


今年一番気になったアルバム: Takashi Sato (Kei)@そば吉里吉里

民謡クルセイダーズ / 日本民謡珍道中

彼等の新譜を首を長〜くして 待っていた2023年 満を持してリリース 全曲民謡クルセイダーズ 節 全開‼︎


今年一番高額だったアルバム: S木007

LENINE & SUZANO / OLHO DE PEIXE (VINYL)

今年リリースという趣旨にハズれるというか、ズルしてるみたいで恐縮ですが、言わずと知れたMPB史に残る名盤。ブラジルで小冊子付きのLPが出たと知り物欲ムラムラとしてたらDISK UNIONさんが輸入したとの報。そのお値段13200円に一瞬怯みつつもエイッとポチり購入。楽曲、ギター、パーカッションの組み合わせが最高に素晴らしく、大げさに言うと音楽人生変わったぐらいの衝撃を追体験した次第であります。


今年一番ひとに薦められてハマったアルバム: 鈴木伸夫(Instagram @nobgatta)

FACE / FLAT FACE

モダンロック系バンド「葡萄畑」のドラマー武末充敏と妻の高取淑子によるユニットが1986年にリリースした一枚きりのアルバム「FACE」を知ったのは、再発した同作について友人らが立て続けに「ジャケ買いしたけど中身も最高」とポストしていたのがきっかけ。発売から10年以上経ってから“90年代渋谷系リスナー”の話題をさらい、そして37年後のいま三たび注目されているアーバンポップが今日も私の部屋に響き渡っています。


今年一番夏に必要だったアルバム: 高橋悠 (KAKULULU 店主)

Jack Johnson / In Between Dub

サーフ・ロックというジャンル自体、一番自分から遠いんじゃないかと思っていた。「ジャック・ジョンソン」が今年出したダブ・リミックス集は余りにも長い暑い夏を支えてくれた一枚。リー・“スクラッチ”・ペリー、マッド・プロフェッサー…。ライトな楽曲が重低音に変わるマジック・スパイス集。どうせ来年以降も暑い長い夏になるだろう、今後沢山聴くことになるマスターピースな夏の一枚が見つかった。


今年観たライブで一番印象的だったピアニストの2023年のアルバム: 武田吉晴 (音楽家

Sullivan Fortner / Solo Games

今年6月にセシル・マクロリン・サルヴァントとサリヴァン・フォートナーのデュオのライブを観て度肝を抜かれました。 その場で曲を決める余裕さもありながら圧倒的な歌とピアノでした。 彼のピアノのハーモニーや弾き方は先進的で最高です。大ファンです。 こちらは今年の10月にリリースされたソロ名義のアルバムで、1-9曲目はソロピアノ、以降はピアノ以外の楽器も多く使われていて前衛的なところもあり面白いです。


今年一番印象的だったアルバム: 田仲 昌之 (fete musique)

https://www.instagram.com/fete_musique/  
https://www.instagram.com/idyllic1970/

The Japanese House / In the End It Always Does

今年は、繰り返し聴き続けたアルバムがあまり無く、 少し物足りない1年でした。
 その中でも今年印象に残った1枚は、 THE JAPANESE HOUSEのこのとてもシンプルで美しい アルバムです。 楽曲や演奏から垣間見える姿勢の良さがとても好きです。 アンバー・ベインの歌声とメロディセンスは、 キャロル・キングやリッキー・リー・ジョーンズと 言った正統派女性SSWの系譜にあるアーティストだと思います。


今年一番一人の時に聴いたアルバム: ダッチョ若 (http://toda-ya.com

VINCENT / FKJ

家族や子供がいると常にチャンネル権やカーステレオ権は子供に奪われます。つまり趣味の音楽は必然的に一人の時にゆっくりと聴く事になります。 そんな一人の時にゆっくりと聴いたアルバム。今年一番のヘビロテです。


今年一番嬉しかったアルバム: haruka nakamura (haruka nakamura)

Meshell Ndegeocello / The Omnichord Real Book

8/8の誕生日に1枚のレコードが届いた。 送り主は、共にバンド活動をしていた幼馴染。 ベーシストだった。 今は青森で「ハマカレー」という、とても美味しい人気のスパイス・カレー屋を営んでいる。 5歳からの付き合いで、10代でバンドを組み学校が終わっては放課後、車庫で練習を繰り返した。 彼の家は地元の銭湯「日の出湯」だったので、僕らは毎日のように通い、風呂掃除を手伝う代わりにタダで入れてもらった。 時々、オロナミンCもくれた。 東京に上京して、仲間たちが次々に音楽を離れていっても彼だけはずっと音楽を共にした。 僕は彼の音楽的趣向をとても参考にしていたし、その独特な光るセンスを中学の頃から持ち合わせていた。 20代前半の頃、僕らは毎週、笹塚の音楽スタジオで深夜リハーサルを繰り返していた。kadanというバンド名で、のちにアルバムもリリースしたのだが、その頃は全員アルバイトをしながら働いた後に深夜練、朝の電車で帰り、昼からまたバイトという生活。 そんな時に憧れて聴いていたミュージシャンの1人がアメリカの女性黒人ベーシストMeshell Ndegeocelloである。特に彼女とドラマー・クリスデイヴのセッションが輝かしい教材で、スタジオに向かう時にイヤホンで聞きながら自分を奮い立たせていた。 それがこのYouTube動画。

我々の「青春の音楽」と言っていい。 ある酒場で、あなたの青春の音楽は?と聞かれてこのセッションを提示したら笑われたが、僕らにとって懐メロでもなんでもなく、今も紛れもなくこれが青春の一ページなのである。 そんなミシェルの5年ぶりの新作を、誕生日に送ってくれた一枚のLP。 これほど嬉しいレコードは記憶にない。


今年一番新しい風景を見せてくれたアルバム: 中正美香 (resonance music)

Fabiano do Nascimento / Lendas

リオ・デ・ジャネイロ生まれ育ち、LAで本格的に音楽活動を始めたFabiano do Nascimentoは、大都会にいながらも自然を愛するアーティスト。そのサウンドからはミナスやアルゼンチンの音楽や景色を思い起こさせる。まるでからだの一部のようにやすやすとギターを扱うテクニックと図抜けた音楽センスによって生み出されたメロディとギターサウンドが、Vittor Santosアレンジのオーケストレーションによって美しい風景を描きだす。


今年いちばん栞なアルバム: 中畑 宏幸

FABIANO DO NASCIMENTO / Das Nuvens

レコードは人生のしおり。そのワンフレーズを聴いただけでも当時の風景が瞬時に蘇る。今秋ファビアーノ・ド・ナシメントがジャパンツアーを敢行。変則チューニングの多弦ギターで淀みないアルペジオ、ハーモニックス、またエフェクターを駆使して繰り出すギターサウンド。この3ヶ月で4度のライブに立ち会えた。その間にも新作を続々発表。解放弦のハーモニックス。それが 2023年秋のしおり。


今年一番聴いたアルバム: 根本理恵/ヴィオリニスト

Julien Marchal / Insight II

サポート奏者として様々なアーティストの音楽と向き合う機会が多いので、身体に一定の音楽が染み込みすぎると、なかなか次の一歩が踏み出せなくなる。そんな時は、ドライブ中や就寝前にこの作品をリピート再生。脳内の感覚を真っ新にしてくれる私の特効薬。2023年もお世話になった。内緒話のような、彼とピアノの対話のような、穏やかで繊細なタッチが、凝り固まった脳を癒してくれる。シリーズⅣまであるがⅡがお気に入り◯


今年一番全MPBファンに味わっていただきたいアルバム: 花田勝暁

Chico Buarque / Que Tal Um Samba? (Ao Vivo)

モニカ・サウマーゾをゲストに迎えシコが2022年9月から2023年4月まで行なったツアーの内容を録音したライヴアルバム(期間中に、ボルソナロ政権からルーラ政権に!)。より詳細には、2023年2月(録音時シコ、78歳)にリオで録音。全31曲中、ソロ(冒頭5曲)とデュエット合わせて17曲でモニカが歌唱、シコに馴染みのない人でも聴き易いはず。曲目は、シコの生涯ベスト的。最後の録音になりませぬよう[祈]


今年一番『季節』を感じたアルバム: 廣瀬俊介 (元東北芸術工科大学教員。ブログ「東北風景ノート」)

Oscilation Circuit / Série Réflexion 1

1984年に発表され、未発表曲を加えて今年再発された本作は、日本のアンビエント/ミニマルミュージック史において高く評価される作品であるといい、デジタルシンセサイザーの普及期にエレクトリックピアノ、オルガン、サックス、パーカッションの演奏によって制作されています。山の麓で暮らす私にとって季節の鳥や虫の声との重なりも心地好く、17歳と多感だった1984年当時の音楽の諸相が知れた、印象深い作品そしてリイシューでした。


今年一番気になったアルバム: 腹山正貼(代表取締役シマチョウ)

羊文学 / 12hungs(like butterflies)

近頃、何かでたまたま耳に。 最初は名前からして村上春樹の小説の様で何か関係ある?と思ったら何も関係なかった。 若い息吹、旋律、歌詞が何となく気に入った。アンチノミーが内包されている(と、思う)。 周りは声を張らない感じがあまり好きになれないと宣うがそれは嗜好。食べものと一緒でそこに優劣、上下も左右もないのは音楽も宇宙空間と一緒だろう。何処に行くかはその人次第。 先ずは少しお耳になさってみてください。


今年一番素敵なリリースライブだったアルバム: 藤本一馬(ギタリスト、コンポーザー)

WOLFGANG MUTHSPIEL TRIO with BRIAN BLADE & SCOTT COLLEY / Angular Blues

今年の4月の新作リリースの来日公演を観に行きました。自分もちょうど九州での演奏ツアーだったタイミングで、福岡のSHIKIORIというインティメイトなスペースでこのお三方の演奏が聴けたことは大きく、極上のトリオ演奏を堪能。ちょうどドラムのブライアン・ブレイドの真後ろの席でその繊細なフィーリングを浴びて、またCDをプレイバックしてもその情景を思い浮かべるように聴いていたので、今年の思い出と共に印象に残った1枚となりました。


今年一番余韻が長かったアルバム: まくらこ

Blake Mills / Jelly Road

LA拠点のギタリスト、SW、ブレイク・ミルズ。ブルースなど米国音楽の本質をゆったりと底流に置きつつ織り交ぜるエスニックな味付けや、どこにどのような響きを配するか、その幻想的で緻密な音設計は、プロデューサーとしても名高い所以か、モダンで構築的な美しさがみなぎる。エレアコのクラフト・ギター(その名もParadis=天国)とツールを使い倒して創作される、イマジネイティヴで温もりある音色にただ浸っているだけで、感覚が解き放たれ、遠く桃源へ誘う。


今年一番まさか!だったアルバム: まつ

João Gilberto / Ao vivo no SESC 1998

自分にとって大切なアーティストが次々にこの世を去った2023年。そんな中でまさかのジョアンの未発表ライブの知らせ。胸躍らせて予約したものの、まさかのユニオンからの予約キャンセルの連絡。心に空いた穴が大きかった分入荷の連絡を受けた時の喜びは大きかった。今までのジョアンのライブアルバム以上の音の良さとライブ自体の素晴らしさ以上に手に入れるまでのハラハラ感が忘れられない一枚となった。


今年一番の風を吹かせてくれたアルバム: マツーラユタカ(物書き料理家・「manoma」2人店主のうちのひとり

RHYMESTER / Open The Window

今は息苦しい時代だよね。経済のコトも、政治の状況も、そして戦争も…… 「海のムコウ」の出来事も、すべてがすべて「地続き」で、どんよりと時代の空気を覆っているワケ。 そんな時代だからこそ、あたらしい「窓」を開けてみる。異なる言葉、異なる立場、異なる音が混ざり合ってぶつかり合う… ライムスターが届けてくれた風は、こんなセッションでジャンクション。そしてカンバセイション。世の中にHIP HOPが必要!と思った2023年の一枚でした。


今年一番ピコーンときたアルバム: 松木和久

Anna Setton/ O futuro é mais bonito

リラックスしながらでも、気合を入れても、両方で聴けるアルバム。透明感あると評される歌声は、僅かなカスレを感じ情緒を揺さぶる。バックの音はデジタルをブラジルのリズムが支え、情景が移り変わっていく。 先の見えない現状、「未来はもっと美しい」なんていうタイトルも良いではないか。


今年の一番は韓国ドラマだったので好きなドラマの曲でプレイリストにしたアルバム: ミハラヒデアキ

韓国ドラマ / プレイリスト

今年の初めにマイディアミスターを見たのが韓国ドラマにハマるきっかけだったのかな。会長の影響が大です。韓国ドラマは挿入歌がまたいいんです。 私の好きな韓国ドラマ:
1.マイディアミスター
2.私たちのブルース
3.二十五、二十一
4.この恋は初めてだから
5.ウ・ヨンウ弁護士は天才肌
6.還魂
7.ムービング
8.悪鬼

https://open.spotify.com/playlist/549OHaMX2OBzmPgfS2Qj5F?si=4fb2bca1a1e04633


今年いちばん買えなかったアルバム: メロウ野郎 

João Gilberto / Ao vivo no SESC 1998

最近では、歌詞や訳詞が欲しいとか以外はもっぱらサブスクで済ませてしまう意識低いリスナーのわたしも、これはやはりフィジカルで欲しいと思ったんですよ。しかし心がやさぐれているので「完全限定盤とか言ってそのうち尼とかで普通に買えて、なんなら国内盤も出るんでしょ」と斜に構えていたら皆様ご存知のように後のカルナヴァル。これはひとえに信心が足りなかったせいと反省しきりです。入手できた皆様は徳が高い。


今年一番嬉しかったアルバム: メロ子

Toninho Horta & Dorota Miskiewicz / Bons Amigos

Dorotaの過去作にも収録されていた「Nuce,gwizdze sobie」、軽やかで心地よく散歩に出かけたくなるような曲です。ずっと愛聴していたのでこのデュオでの再演もワクワクしながら聴きました。全作を通してトニーニョが楽しそうに歌う姿が目に浮かび、文翔館のライブでのあの笑顔を思い出し胸が熱くなります。


今年一番リピートしたアルバム: Tetsuo Moriya

HANIA RANI / Ghost

2019年のpiano era来日公演以来新作出てたら反射で購入する音楽家の1人。HANIA RANI。毎回ハズレなしを出し続ける彼女の本作は怪しくも美しい歌声が溶け込むような至高のアンビエント。1枚通しで聴くうちに水底にゆっくりと静かに沈んでいくような心持ちにさせてくれる。疲労困憊の折りにかけっぱなしでVinylのA面終わる前にそのまま寝落ちすること数知れず。


今年一番衝撃的だったアルバム: 安井源之新 (パーカッショニスト、プロデューサー)

BOKANTE / History

マイケルリーグ(スナーキーパピー)と精鋭達によるボカンテ第3作。グラミーノミネート。4人のパーカッション、アンドレ(スウェーデン)、ジェイミー(レバノン)、ウィーディー(ガーナ)、小川慶太による独自性に富む変幻自在なリズムにヤられる。中米の小島グアドプール出身のマリカが「勝者でない他者の視点から書き直す歴史」をクレオール語で歌う。エンジニアはニックハード。全ての音が立体的、重層的に聴こえる。神業!


今年一番懐かしくどきどきしたアルバム: 山本英之(へしこ先生)

En Vivo En Buenos Aires / Dos Orientales

今年10月にウーゴ・ファトルーソとヤヒロ・トモヒロによるデュオ、ドス・オリエンタレスのライブに富山まで行ってきました。ライブはヤヒロさんの超絶パーカッションとウーゴが奏でる繊細かつ大胆な旋律が見事に融合し、まったく別の世界、異邦へと連れていかれる感覚を呼び覚ますものでした。海外旅行からこの10年遠ざかっていた私にとって、久しぶりにあの異国を一人で旅する時のようなどきどきを感じさせる貴重な体験となりました。このアルバムはライブ会場で購入したものです。(もちろんウーゴとヤヒロさんのサインも入っています。)レコードに針を落とすとライブの感動が蘇り、異世界への扉を開くことができます。  ちなみにヤヒロさんの演奏をはじめて聴いたのは、おそらく2003年に当時岐阜県関市にあったプラッサ11で、ピエール・バルーのコーディネートによる中村善郎さんとのライブだったと記憶しています。店も無くなりピエールも数年前に亡くなりました。当時まだ10代だったピエールの娘のマヤちゃんも一緒に来ていましたが、今も元気かなと思いを馳せつつ聴いています。


今年一番のサプライズからのアルバム: Yukitão (@zooiiooz)

Andre Marques / Tempo de Criança

今年一番のサプライズは青森でのエルメート・パスコアル&グルッポのライブ。そのピアニストであるアンドレ・マルケスが12月にリリースしたアルバムを。ドラムはグルッポの盟友ヂガォン、ベースはマルセロ・ボターロ。M6)Trem-Bala(新幹線の意)は変拍子たっぷり。新幹線というより車窓の移り変わりを楽しんでいるような良曲。自身のVintenaやCurupiraともまた一味違うアンドレが聞けます。


今年一番 “このアーティストのほかの作品も聴き直してみよう”と思わされたアルバム: Lissa

Mariana de Moraes / Vinicius de Mariana

古い作品を聴き入ったりして新譜チェックを全然しておらず会長にダメ出しされそうですが、クラリネットのJoana Queirozが「とても思い出に残った仕事だった」と投稿しているの見て目に留まったのがこのアルバムでした。Marianaは言わずと知れたブラジルで最も著名なViniciusの孫娘。新旧の素晴らしいアーティストの名前が並んでおり、プロデューサーのGuto Wirtti(中堅のベーシスト)の手腕が素晴らしいです。


今年一番メロメロウになったアルバム: 脇田洋二 (コピーライター)

Christine Bougie / SOFT START

映画『カーマイン・ストリート・ギター』で聴いて以来、このカナダのギタリスト・作曲家がラップスティール・ギターで奏でる音楽が大好きになりCDを集めています。今作は、ゆったりとした音の波間に浮かんでは消える幻の影を追うような不思議な感覚が全体を覆い、夢の中で空をフワフワ飛ぶような心地よさ。CD購入時に、日本であなたが見たいとメッセージを添えたら、「日本でショーをするのは私の人生の夢のひとつ」と返信が!


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