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2005年ブラジル・ディスク大賞関係者投票(yamabra archive)

LATINA誌のブラジルディスク大賞、2005年度の関係者投票に僕が選んだディスクです。振り返ってみるという機会もあまりないので、2004年から2021年度まで、試聴リンクをつけてnoteに掲載いたします。またアルバムごとに、その当時ブログに掲載した紹介コメントも付します。したがってコメントが古いのはご愛嬌ということで。

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総評:

今年(2005年)は魅力的な作品が多く5枚に絞るのは酷だ。タイトなサウンドも抜群の①は文句無し。凄いバックに恵まれ充実の②。あんたほんとアルゼンチン人? MPBの王道③。無垢で純粋、穴があったら入りたい④。新世代の旗手は、ずーっと先へ行ってしまった⑤。フォホーなトニーニョ、お爺ちゃん凄いトン・ゼー、充実のシコ・ピニェイロ、ヤマンドゥの舎弟チアゴ、そしておじちゃんの心が痛むホベルト・サーなど、泣く泣く落選。

1 MARIA RITA / SEGUNDO

Maria Rita待望の2nd。Lenineとの共同produceによる本作は、もはや今年のbest!っと言い切ってしまおう。久々にホントにワクワク、うっとりして聴けた作品。Maria Ritaの歌は不安定さが減って、独特の包容力は健在。なんとsaudadeな声であろうか。PianoのTiago Costaを中心とした、simpleなarrangeも彼女の魅力を引き出している。その上なんとも上品なgrooveに満ち溢れているのだ。"Segundo"という、そのものの潔いtitleに、むしろ彼女の本作に対する自信が感じられる。もう誰かの娘という冠は不要!!



2 LENINE / IN CITE

Lenineの新譜はParisでの熱狂的live盤。DVDも同時発売のようですが、残念ながらまだ見ておりません。base、vocalにYusa、percussionにRamiro Musottoという極めてsimpleな編成での、この迫力は凄い。Tr.1から注目のRamiro Musottoが大迫力!今はなき(?)Lenine-Suzano並の興奮です。さらにbaseのYusaも要注目です。 髪の毛が長いのは相変わらずのLenineですが、音楽は更に進化を続けております。


3 BETO CALETTI / EUQUINAS

さてただいま来日中(注:2005年の話です)のBeto Caletti、昨日Club Ikspiariまで行って聴いて参りました。残念ながら多いとは言えない観客でしたが、生のBeto Calettiの音楽に触れて、あらためて感激でした。この作品はすでに旧Web版disc2, No.57で紹介しておりますが、今回紹介するのはRip Curl Recordingsからの国内盤で、live映像が3曲分付いておるのです(jacketも微妙に違う!)。ArgentinoでありながらBrasil音楽を愛し、研鑽してきたBetoの音楽は、まさに正統なMPBの系譜の中に存在しながら、彼独特のSaudadeがあります。Liveでも実に軽やかなguitarと、切ないvocalが最高でした。original曲の素晴らしさも特筆に値します。もっと多くの人に認知されるべきartistです!


4 RENATO MOTHA E PATRICIA LOBATO / PLANOS

Renato Motha待望の新譜です!彼と奥様Patricia Lobatoのコンビは、今最も良質なMPBを届けてくれるartistだと私は思っていますが、本作もその期待を全く裏切らない素晴らしい作品です。基本的には今までの作品の延長線上にありますが、本作はよりBossa tasteの曲が多く、かつsimpleな編成で演じられています。しかしこういういわば奇を衒わない普通の音楽でいながら、彼らしかない個性が表現されているのは凄いことです。Renato Mothaの美しいsong-writingと、二人の歌が浮かび上がらせる音は、Rioの音楽とはまた違った上品で静謐なsaudadeに溢れています。気の利いた私小説を読んでいる様な充足感があります。弾むようなEsdra Ferreiraのbateriaもいい味をだしています。


5 MAX DE CASTRO / MAX DE CASTRO

この人は突き抜けました。今まで2作のimageは、programもありのmellowなclub系samba/soul、良くも悪くもTRAMAの典型と言う感じ。それはそれで注目に値する素晴らしい作品でした。が、3作目の本作で突き抜けました。これほど鮮烈で刺激的な音楽に出会ったのは久々です。過去2作までに彼が築いてきた音楽をbaseに、rockやjazz、funkやsoul、sambaやMPB、そしてsurとpopが、1つの濁流となって迸る、なんと強欲な音楽であることか。guestもNana Vasconcellos、Toninho Horta、Trio Mocotoと多才なのに、guestのことに注意が向かない。それほどMax de Castroの独創性が凄まじい。作曲、編曲、produceも自力ですからね。この一枚を聴き終わるまでに、何回「おもしろい!」って言ったかわかりません。2世世代の中では抜きんでた存在になりました。


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