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『悩むからこそ人生は輝く。』大学と専門学校の中退を経てフリーライターになった“わたし”の夢の叶え方。

人は誰でも、自分を苦しめる「悩み」や「迷い」からはできるだけ避けて生きていきたいと思うものですよね。

今回は、大学と専門学校の中退を経てフリーライターになるという経歴を持ち、第一線で活躍されている鈴木しのさんにお話を伺いました。

「今やっている取材の仕事は、目の前にいる人の考えや想いを読者にわかりやすく記事にして届ける”翻訳家”のような仕事だと思っています。」

そう真っすぐ語る彼女は、数々の人生の修羅場を乗り越え、どのような生き方の選択をしてきたのでしょうか。

鈴木 しの
1995年生まれのフリーライター。大学・専門学校を中退後フリーライターになる。主な執筆分野は、スタートアップ企業の取材・採用・企業PR。オンラインサロン『旅、ときどき仕事』のコミュニティマネージャーも務め、旅と仕事の両立を目指す人達へのサポートもおこなっている。

ーー本日はよろしくお願いします! 大学と専門学校中退を経験し、現在フリーライターとして活躍されているしのさんのお話が、進路選択に悩む学生や20代前半の方の参考になればと思っています!

鈴木 しのさん(以下:しの)こちらこそ、よろしくお願いします! 進路選択のターニングポイントは高校時代だったのでそこから話した方がいいかなと思います。わたしの歴史はそこから始まったので(笑)。


はじめての大きな意思決定は大好きな吹奏楽を辞めることだった

ーーしのさんの高校時代はどのような感じだったのですか?

しの:高校は、小さい頃から続けていた吹奏楽をやりたくて、都内で一番強い吹奏楽部のある学校へ進学しました。そこで待っていたのは、もう絵に描いたような部活漬けの毎日でしたね。まさに、「朝から晩まで練習をして、授業中は寝る!」みたいな高校生活でした。

ーー部活の強豪校って感じがしますね......!

しの:大学付属の高校だったので、ほとんどの生徒が受験をしなくても大学進学は約束されていました。なので、「大学に行くために勉強もしなくちゃ!」という生徒はほとんどいませんでした。吹奏楽部だけではなく、学校全体が部活中心の校風だったんです。

わたしはその流れに逆らうように高校2年の春、部活を辞めました。今思うとそれが人生で初めての大きな選択だったように思います。

ーーえ! どうして辞めようと思ったのですか?

しの:朝から晩まで部活ばかりの毎日を送るなかで、日に日に「こんな高校生活でいいのかな?」と違和感を覚えはじめました。部活だけをして授業中は寝て過ごす高校生活が「なんだか高校生らしくないなぁ」と、いつも悶々としていました。

ーーかなり勇気のいる決断だったのではないですか?

しの:はい。その決断に至るまでは苦しかったです。ですが、部活漬けの毎日に疑問を持った以上、そこから目をそらさずに自分の人生と向き合えたことや、自分の意志で決断をくだせた経験は、人生においてひとつのターニングポイントだったなと思います。

ーーなるほど。自分を見直した結果、部活を辞めるという決断をされたんですね。そのタイミングで将来について考えたりもされたのですか?

しの:考え始めました。中学生の頃から薬剤師に興味があったのですが、付属大学には薬学部はなかったので他大学を受験しようと思っていました。

ただ、小さい頃から夢がたくさんあって、薬剤師はそのひとつにすぎなかったんです。他にも、医者や漫画家や詩人、音楽に携わる仕事やスポーツ選手にもなりたくて......(笑)。興味のあることが幅広くて、学部を絞るどころか受験シーズンになっても文理選択さえできませんでした。

ーー文理選択ができないほどにやりたいことがたくさんあるなんてすごいですね......!

しの:小さい頃からその時々で好きなことに打ち込んできました。でも、いざ進路選択となると結局なにを選べばいいのかわからなくなってしまって......。かなり混乱しました。部活も辞めて、進路選択もできなくて、路頭に迷うような気持ちでした。それに、クラスのほとんどの友達は付属の大学への進学が決まっているのでひとりで受験勉強に立ち向かわなければならなかった状況も辛かったです。

「わたしの人生なんだったのか......」と、生まれてはじめて自分の歩んでいた人生に後悔しました。

「当時の彼氏に教えてもらったパフォーマーに憧れ、美術大学に進学!?」

ーーたしかに、自分の人生を振り返って方向性をひとつにまとめるって大変な作業ですよね。そこからどのように進路決定をされたのですか?

しの:ひょんなことから道は拓けました。当時付き合っていた彼が、たまたまある演者を教えてくれたんです。その人は、舞台上で人を笑わすことを職業にしているパフォーマーでした。マジックを取り入れたり、とにかくいろいろな手法で人を笑わせる姿に憧れて、すぐにその人が出た大学を調べました。 

そしたら、ある美術大学の出身だと知り、その大学について調べ始めました。調べているうちに興味が沸きましたが、入学試験でデッサンが必須だったので絵が描けないわたしは受験を諦めかけていました。そんなとき、HPでデッサンの入学試験が実施されない舞台の学部が新設されることを知り、「もうここだ! 」と運命を感じるように直感で入学を決めましたね(笑)。

ーーすごい勢いですね!

しの:表現の幅を増やしてみたいという理由もありました。小さい頃から、漫画家や詩人に憧れたり、吹奏楽も経験して、総じて表現することが好きな自分に気づいたんです。今までの経験を踏まえて、次に飛び込んでみのが“舞台”という新たな表現の世界でした。

“優等生”という正しさが、ガラガラと崩れた大学生活。

ーーそれでは美術大学に入学後は、「舞台」をされていたのですね!

しの:はい。舞台やダンスが主な授業内容でした。でも、実際にやってみたらどちらも苦手だったんですよね......。そして何より、努力を積み重ねた才能のある同級生を前に唖然としました。すでに映画に出演している子や小さい頃から舞台一筋に生きているような子がざらにいましたし、初心者でも教授に目をかけられて舞台に出演する子もいて、ろくに授業に出ずとも実力だけでのし上がっていく人ばかりの世界に衝撃を受けました。

ーー才能がものを言う世界だったのですね......。

しの:才能のある同級生を前にして、自分が歩むはずだった道がパンっ! と閉ざされた感覚でした。高校生までは、優等生でいることが正しさだと思って生きてきたんです。しっかり勉強にも励んで成績もよかったし、無遅刻無欠席で学級委員も務めてきました。でも、そんな生き方は、この実力主義の世界では何の役にも立ちませんでした。

18年間信じて生きてきた自分に中の正しさがガラガラと音を立てて一気に崩れて、もう、何を信じて生きていけばいいかわからなくなってしまいました。

ーーそれは結構、精神的にもきつかったのではないですか?

しの:次第に、大学に行くと自分はダメなんだと自己嫌悪に陥ったり、同級生の才能に打ちのめされて自信をなくすようになりました。そんな状態が続いて、入学から1年後、ストレスから突然声がでなくなってしまったんです。精神的にはかなりボロボロでした。

ーーそれはもう限界を超えていそうですね......。

しの:でも、それに以上に、周りの同級生に勝る努力をしようと思えるほど舞台が好きと思えない自分にも気づいたんです。その後は半年休学したのち、中退することを決ました。

ーー決断できたことがすごいなと思います。でも、「舞台が好きじゃなかった」と認めることはすごく勇気がいることだったのではないですか?

しの:そうですね。自分の過去を否定することになるから認めたくない気持ちもありました。だからこそ、体調を崩してしまうほど頑張ってしまったのだろうと思います。でも、一生懸命に進路選択をした高校時代の自分や、頑張った過程を否定することは、いくらなんでも過去の自分に失礼すぎると思ったんです。

それに気づいてからは、過去の選択を否定することを辞めました。親から「逃げるの?」と聞かれても「逃げじゃない」と言い張りました。やらずに諦めたのではなく、実際にやってみて好きじゃないとわかったことですから。「新しい自分を見つけられた新発見だ」と考え、気持ちを持ち直していきました。

自分は「何で食べていくのか?」を見据えてデザインの専門学校

ーー中退後は何をされていたのですか?

しの:デザインの専門学校へ入学しました。中退後すぐに就職をせずに、学校に入学するという選択をした理由は、社会に出るまでの猶予時間をつくりたかったからです。

漠然と、このままの自分で社会に放り出されることが怖いという思いがありました。なので、中退後にすぐに就職というより、学生時代の活動を通じて「食べていける自分」になってから社会に出るという選択をしました。

ーーそれで手に職をつけようとデザインの専門学校へ入学を決めたのですね。

しの:でも実は、今回も中退するかもなという気持ちがありつつ入学を決めました(笑)。

ーーえ! 入学前にですか!?

しの:デザインを見ることは昔から好きだったのですが、実際に絵を描くことは苦手で、デッサンの授業なんかは本当に嫌いでした。でも、美大に通っていたときからデザインの分野を学びたいと感じていたし、知らないまま生きることも悔しいと感じていて。そこで、入学前に自分が身に着けたいスキルや知識やを明確にして、それらを身に着けられたら辞めても良いかなと思っていましたね。あくまで食べていく力をつけるために学生という猶予期間を使おうという考えだったので、かなり目的を意識して過ごしていました。

ーーなるほど。専門学生時代は、単にデザインを学ぶためというよりは、食べていく自分になるための期間だったのですね。

しの:はい。なので、入学と同時にライターの仕事も始めました。大学を中退してからデザインの専門学校に入学するまでの間に、ライターという職業を知ったことがきっかけです。表現することが好きな自分にとって、文章を書く仕事にもすぐに興味が沸きました。専門学校に通いながら傍らでライターの仕事もしていましたね。

ーーもうその時からデザインではなくライターとして食べていくことを意識されていたのですか?

しの:意識していました。たしかにデザイナーとして食べていけることに越したことはないです。ですが、デザインは好きなだけで得意な分野ではないことは認知していたので、中退をしてそのままフリーライターのなる道を選びました。

ーーライターを「好きなこと」以上に「仕事」として捉えていたのですね。

しの:そうですね。高校や大学ではキラキラした憧れだけを見て突っ走ってきたことで痛い目をみているので、その経験が活きているなと思います。ライターになってからは、食べていくことと興味のあることに重きを置いて仕事を選んでいます。

具体的には、市場や企業からのニーズを捉えて自分の価値を届けられる記事を書いていく戦略を立てました。わたしがライターになった当時、カフェやおでかけに関する取材記事を書くライターさんはすでに飽和状態でした。それらの分野に興味はあったものの、生き抜くには難しい市場だと感じて。そこで、市場やニーズがあり、若手ライターの少ない領域に絞って働くことに決めたんです。現在のメインの仕事であるスタートアップの取材、企業の広報・PRなどは、そういった市場と自分の興味との掛け合わせで選んだものです。

好きなことだからこそ仕事として成り立たせたい。そのために、「食べていける分野」=「世の中の困りごとに対する自分が価値提供できるもの」の一致点を常に模索して仕事をするようにしています。

ーーなるほど。ライターになるときはかなり現実的に将来を考えられていたのですね。でも、なぜ就職をせずに新卒でフリーランスという道を選んだのですか?

しの:専門学校を辞めた理由のひとつに、毎日「決まった場所・決まった時間・決まった座席・決まった人とばかりと話す生活」をすることが自分の気質に合わなかったからといった背景がありました。

会社員で働くとなるとそのような生活に苦しむことがわかっていたので、なるべく自分が過ごしやすい環境を考えたときに、フリーランスという働き方がベストだな考えました。ちなみに、中退続きで最終学歴が高卒なので、入社できる会社も多くないんです(笑)。

あとは、尊敬しているライターさんが続々フリーランスになっていたので、まずはフリーランスから経験してみようかなと思い踏み切りました。

「人には相談しない。」自分で選択できた理由とは?

ーー大学や専門学校の中退やフリーランスになる決断は、周囲に相談して決めたのですか?

しの:相談はしなかったですね。自分の周りに中退経験者やフリーランスの人がいなかったので、相談する必要が無いなと思いました。

周囲の人に意見をもらう代わりに、何かを選択をするときは必ずひとつの角度だけではなく多方面から物事を見るようにしています。

頭の中で何人もの自分が話し合って会議をしているイメージですね。「みんなはこう言うけど本当にそうかな?」「自分はなぜそうしたいのだろう?」と自分が後悔なく選択ができるような情報収集をしたり、いろいろな立場やアングルでものごとを考えることをしていました。

人生に必要なのは「悩むことを選択する強さ」

ーー最後に、進路選択に悩む学生さんや同世代の20代の方へ向けて、しのさんが生き方の選択をするときに大事にされているを教えてください。

しの:迷ったり悩んだときに大事にしていることは、「焦って選択をしないこと」です。死ぬほど迷ったらいいと思いますし、もう悩むことが嫌になるくらい悩んでくださいと言いたいです。

理由としては、当時の自分にとっては人生に絶望するような悩みでも振り返るとあんなこともあったなと思い出になってしまった経験が誰しもあると思うから。小学生の頃に悩んでいたことに今だに答えがだせず、頭を抱えてどうしようかと悩んでいることってほとんどないですよね。

時間の経過とともに自分なりに折り合いをつけてその時なりにベストだと思う選択をしてきたはずです。それと同じで、悩んでいるときは暗闇のトンネルがいつまでも続くように感じても、自分で決断ができるタイミングが必ずやってきます。

わたしの場合は、「AとBどちらの道を選ぶべきか?」 とすごく悩んでいてなかなか答えが出なかったのに突然表れたCという道に運命を感じて即決できたり。部活や学校を辞めるか辞めないかずるずる考えながら過ごしていたら、理屈ではなく心や身体が素直に反応してくれて後悔なく決心がつくタイミングがやってきたり。

迷っている時間は永遠には続きません。だからこそ、無理に答えを出そうとせずにその時が来るまで焦らず待っていて良いと思います。

ーーご自身の経験からくる言葉は説得力が違いますね......!

しの:わたしも高校生だった当時は悩んでいる時間が永遠に続くのではないかと思うくらい長く感じました。今となっては高校時代の悩みなんて人生の中のほんのひと時だったなと思えますが、当事者にとっては悩んでいる今が全てなんですよね。だから早く結論を出したいと思う気持ちも痛いほどよくわかります。

でも、後悔のない選択をするために中途半端に答えを出さず、迷うことができる人って素敵だなとわたしは思います。

人生には迷うことの強さも必要です。だからこそ、今は迷っていい時期なんだと思って存分に迷ってほしい。自分の生き方の選択を振り返って、今はそんなふうに思いますね。

ーーなるほど。物事から目をそらさずに悩みぬいて答えを出した経験って後の人生で糧になってくれますもんね。しのさんの言葉に救われる人はたくさんいると思います。

しの:もし今ひとりで悩んでいて苦しいなと思っているひとがいれば話聞くよって言いたいです。


*編集後記*

人は、自分の人生と真剣に向き合うからこそ悩むもの。人生には、その瞬間だけを切り取れば絶望するような場面もたくさんあります。苦しかったらその場から逃げてもいい。その代わり、自分の人生からは決して逃げない強さを持つこと。それが、「悩む強さ」なのではないかと、しのさんのお話を聴いて感じました。フリーライターとして活躍を広げるしのさんのさらなる飛躍が楽しみです!


執筆:みさとん@misaxx222
編集:カタヤマハルカ@happeter02
撮影:はっしー@hashii_2

取材場所:熱海 en nova guesthouse, cafe-bar, shops & places

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