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アクロストンさん性教育ワークショップレポ(前編)

「セックスってなに?」

 一緒にテレビを見ていたムスメ氏が、テレビから流れ出たワードを拾って何気なく聞いてきたのは数年前。不意打ちをくらって動揺してしまい、「うーん」とか何とかお茶を濁してしまったことを強烈に後悔し続けた。改めて向き合うきっかけも作れないまま時が過ぎ、(小)学校での性教育も全くの期待外れ。そもそも「セックス」という言葉自体がNGワード指定されていて、それを教わる機会が子ども(たち)にないのだと気づいて衝撃を受けた。どゆこと?

 どゆこと?

 なんてすっとぼけて他人事でいるわけにはいかぬ。そしてこれは我が子と私だけの問題じゃなくて、「発達段階に応じて子どもたちに性の知識をきちんと教えていない」という社会全体の問題であり課題であるとも思った。そうして性教育に関心を持って情報を集め、梟文庫で性教育の学びの場を持ちたいと助成金の申請をすることに。そこにお招きしたいと思った講師の先生は、実のところ私の中では一択だった。あれこれ自分なりに調べて本当は選択肢一つじゃなかったんだけど、

 「アクロストンさんがいい!」
と熱烈に思っていたのである。

 アクロストンさんの存在を何で知ったのか今となっては思いだせないのだけれども、とにかくアクロストンさんのnoteがとても面白かった。「性」について、「学ぶ」ということについて、大事にされておられることがよく伝わってきて非常に共感できた。そして色とりどりの素材を使った工作を取り入れた体験的な学びを提供されているというところも、これまで梟文庫で大切にしてきた学びの形に通底するものがあると感じた。あるようでない、「おはなしを聞く」にとどまらない「ワークショップ」形式の性教育。これだ!とものすごく嬉しくなった。

 けどね。
アクロストンさんは京都から遠く離れた東京を拠点にされている。
そして、医師のご夫婦。超専門家の方々。
こんな遠くまでいらして頂けるのか、おまけに資金力もない、助成金頼り・・・

 無理だよね?無理だよな。
でも私、これだ!!って超思ったんだよ?
聞くだけ聞いてみてからでもいいよね、諦めるの。

 そう思って恐る恐るお問い合わせをさせてもらったら、なんとすぐにご快諾頂けたのである。わーあ、夢みたい!

 さてアクロストンさんに性教育ワークショップをして頂いておよそ1週間たった今、「あの時のワタシ!諦めないで厚かましくお願いしたワタシ、グッジョブ!!」と心の中で拍手喝采状態である。・・・いやいや、ちゃうやん、自分の手柄ちゃうやん・・・そうではなくて、素晴らしいワークショップをして下さったアクロストンさんに、心から感謝している。

 アクロストンさんから授けてもらった知の内容については、梟文庫のinstagramや「ふくろう文庫のせいきょういく」Twitterで写真メインの詳細レポートを投稿しているので下記をご参考にして頂きたい。

梟文庫instagram:https://www.instagram.com/fukuroubunko/

ふくろう文庫のせいきょういくTwitter:https://twitter.com/kyotowledu

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 ご覧の通り、色とりどりで様々な触感の素材を用いながら、性にかかわるからだ(女性生殖器・男性生殖器)を工作で作っていく。どれもアクロストンさんによって選び抜かれており、細かいところまで気が配られ、手作りで準備されている。子宮になるフカフカの生地は触り心地満点で、ある子どもさんは子宮の上にほっぺたをくっつけていた。お腹の中の赤ちゃんはどんなことを感じているんだろう?なんて、自然と思いを馳せたくなる。

 医学的・科学的に正しい性の知識を子どもたちへ伝えるというミッションを携えて活動されているアクロストンさん。でも正しい知識をそのまま「こうですよ」と伝えるだけではなくて、受け取り手となる子どもたちがイマジネーションを広げて考えることができるように、そしてその先に「なるほど!」「わかった!」がつながっていくように、配慮と工夫が凝らされている。手作りで準備された教材は、子どもたちがワクワクしながら知を受け取ることのできる重要な「しかけ」である。

 公教育で教わることのないセックスについても、「精子と卵子が出会う仕組み」として、工作で作った子宮の上に、同じく作ったペニスを逆さにして重ね合わせて教わる。精子と卵子が出会って受精卵になるんだけど、精子と卵子はどうやって出あうんだろう?と問いかけられて教わるのだけれども、工作からの流れがあるので「そうだよね。そうしかないよね。」とすっと入ってくる。事実、以上!という感じで、何も特別感がない。もちろん子どもたちも「いやらしい」とか「エッチ」なんて思ってざわっとすることなく、あぁなるほどねって淡々と受け取っている様子だった。あぁ、私があんなに構えてしまっていたのは一体何だったんだろう・・・と拍子抜けしてしまった。

 アクロストンさんはこちらの記事に、科学的・医学的知識を伝えることについてこのように書かれている。

科学的・医学的な事実を知ったうえで、どう考えるかは子ども達に任せたいのです。自分で考える力をつけられるように全力で手助けをしたいと考えています。
正しい知識を知ったうえで性の話をオープンにするのか、しないのかも一人一人の自由。自らのスタンスは自らで決めてほしいし、そのための知識を楽しく学べるように提供しています。 ※acrosstoneさんnote「科学的・医学的に正しい性の知識を、楽しく子ども達に伝えたい」より引用

 まずは伝える側の価値判断(恥ずかしいとかエッチだとか)をくっつけずに、「こういうからだの仕組みを携えている」という事実をありのままに伝えること。事実はその後自分が価値を判断する時の素材になるものであり、その素材がなければ自分で考え判断することができなくなってしまう。その結果起こることは「他者の価値判断の受け売り」であり、他者の意見に左右されることを余儀なくされてしまう。ひとが価値を自ら選び、主体的に生きていくためには、できるだけ他者の価値判断がくっついていない「ありのままの事実」がまず第一に必要なのだと改めて思う。

 性に関しては、自ら考え判断するための材料(事実)さえまともに伝えられていないという現実。そのような状況に子どもを置くことで、利益を得ているのは誰なのか。子どもに限らず「ひと」を性的に搾取したい人々を利するような状況を作っているのは、「セックスってなに?」という子どもの問いかけにお茶を濁した自分でもある。そのことを思うとひどく落ち込んでしまうが、きっかけをもらった今からできることをしたいと思う。

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