一を聞いて十を知る方法
友達のひろ○ちさんと話してて、桜庭一樹さんの直木賞を受賞した「私の男」について触れ、最初の一文を語りたくなったので書きます。結局のところ、一を聞いて十を知ることなど出来ず、一の可能性を十まで広げて、その十を解釈するしかないのではないかと思います。
以下が例の一文です。
私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。
当時は騒がれた有名な一文です。なぜこの文章が騒がれたのか僕なりに分析してみました。一を十まで広げて考えることの練習をします。
1.私の男という表現は恐らく、昔に流行った「俺の女」という表現を意識した文章であり、自分のものだから自由にしていいという傲慢で強い感情を抱き、性的な関係も含めて奔放な状態である。
2.私の男がぬすんだ傘を広げているのは、私自身も犯罪を許しているのであり、むしろそれをして当然と思っている。
3.ぬすんだ傘をゆっくりと広げている動作は、犯罪に対してとまどいがないことを意味する。
4.こちらに歩いてきたというのは、つまり私は動かず待っている状態であり、男に対して絶対的な権限を持っている。
5.傘を盗まなければいけない状況は天気予報などを互いに確認せず、世間に興味がないとを意味する。
6.傘を広げるということは舞台は雨である。雨は人の気分を落ちこませるが、私の男という表現から、むしろ雨の状況でも熱意を持っている。
7.男が私の所有物になるには、過去に返せない恩があるということであり、それは恐らく私に対しての犯罪行為を許したことにある。
8.犯罪行為を許しながら関係を維持するというのは、二人がよほどの深い関係性がある。
9.深い関係性というのは、ぬすんだ傘をゆっくりと広げていることから、互いの犯罪行為を通して繋がっている。
10.特に思いつきませんでした。
たった一文からこれだけの情報を詰め込んだ非常に優れた一文です。これだけでも直木賞の価値があると思うほどです。本当の国語力とはこのように一文にどれだけの価値を込められるのか、逆にどれだけ読み取れるのかだと思っています。
さて、国立大学の入試ではこれと真逆の要約問題が多いです。どちらかというと、他の文系科目の方が想像で書かなければいけない問題が多かった印象です。要約する必要がある文章を読ませてどうするのでしょうか? 僕は国語の入試は一文か詩でいいと思いますけど。
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