古代ギリシア語の超初歩解説! 続き

 前回はギリシア文字の読み方までいきました。それだけで大体読めます。しかし!ギリシア文字には変な記号がついているんですね。これからその意味を α(アルファ)を例にして解説していきます。

 ά ὰ ᾶ
これらの記号は全部アクセント記号になります。順に鋭アクセント、重アクセント、曲アクセントと呼ばれます。古代ギリシア語は日本と同じ音の高さを変える高低アクセントでしたので、アクセントがあるときはそこを高く発音することになります。基本は鋭アクセントです。これは要するにアクセントがある、ということなので高く発音します。続いて重アクセント。これは鋭アクセントが脱落したということを示す記号なので発音上特に気にすることがない。最後に極アクセントですが、これは鋭アクセント+重アクセントと同じなので最初にアクセントがあるということです(長母音や二重母音のときにか使われない)。ά や ᾶ がきたらアクセントがあるということを覚えておけば良いと思います。

 
ἀ ἁ  
これは気息記号と呼ばれ、通常語頭の母音にしかつかない記号です。ギリシア文字見て気づいた方もおられると思うんですが、ギリシア文字には H(エイチ)にあたる文字がないんですよ。しかし息の音(ハヒフヘホの音)自体はあるんですね。だから発音上の違いが生じて、ἀは「ア」 ἁ「ハ」という発音上の違いが起こります。勾玉みたいな記号の先っぽが右を向いている方が気息有ということを示しています。
例えば「真理」を意味する ἀληθεια は「アレーテイア」と発音することになりますが、ハーモニーの語源である ἁρμονια は「ハルモニア」と発音することになります。ここらへんはややこしい。また二重母音の場合は記号は後ろの母音の方に着きます。οὐσίᾱ がまさにいい例ですね。
この記号先頭の ρ にもつきます。ῥίζα「根」みたいに。しかも必ず気息有りです。気息があるんだから昔のギリシア人は強く息を吐いて発音していたのでしょうか、カタカナで書く場合は変わりません。上の例だったら発音は「リザ」です。


この棒線は長母音であることを示します。だからこの場合は ᾱ は「アー」と発音します。


「下書きのイオータ」と呼ばれるあまり意味のない記号。あのアルファの下についている小さい点は ι 「イオータ」のことで、元々は長母音の α の次にイオータの音が添えられていたのだが発音されなくなり、こんな形で残ってしまったらしい。だから発音上は何も関係がないが、ギリシア語の冠詞によくくっついているので見かけることは多々ある。

他の発音上の注意点

γ+γκχξ
γ「ガンマ」の次に γ「ガンマ」κ「カッパ」χ「キー」ξ「クス」が来るときは最初のガンマは ng「ング」のように発音します。例を出しますとἄγγελος「使者」という単語は「アゲロス」ではなく「アンゲロス 」と読みます。そっちの方が確かに読みやすいですね。

複母音
ου
他の単語はそのまま音価を読めば良いのですが、ου は「オウ」ではなくて「ウー」と呼びます。υ 自体音価が「ウ」ではなくて「ユ」ですので、「ウー」の方が発音しやすかったのだと思います。 
 そしてこの複母音とからんでもう一つ記号が登場します。ほとんど見ませんがウムラウト「¨ 」です。これがあると複母音の綴りでありながら、短母音が二つ並んでいることになります。例 Αργεϊ「アルゲイ」。意味は不明。

もう一つ恐ろしい記号があります「˘」という記号です。ブレーヴェと呼ぶらしく単母音であることを表します。なぜかLiddle&scottのGreek-english lexiconというギリシア語辞書にはこの記号が登場するんですね。しかし発音が変わるわけではないので特に気にする必要もないかと思われます。



というわけで超初歩の説明は終わり。
これで φιλοσοφίᾱ も οὐσίᾱ も臆することなく読めると思います!!!!!

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