英語は「影になった時間の積み重ね」から始まる
私もそこまで得意ではなく道半ばですが、たまに英語の勉強方法を質問されることがあるので、個人的に実践した(している)練習方法を書いてみました。
注意点
この投稿は、以下の方が「英語を仕事で使うための最初の土俵にあがれる」くらいになることを想定して書いています。
・現在、社会人である(学生ではない)
・今まで学校以外で英語を使う機会がなかった
・多少の聞き取りはできるけど、話すのは絶対無理
・出費を抑えたい(月一、二万くらいは可能)
・英語のためにそれなりの時間を割く覚悟がある
・英語圏に移住することは現実的に難しい
それ以外の方にはあまり参考になりません。大変恐縮ですがご了承ください。また、TOEICを含めたテストの点数向上ではなく、日常の言語利用を想定しています。
まず最初にすべきことと目指すレベルは?
言語は基本的に、以下の4つから構成されています。
・リーディング(読むこと)
・ライティング(書くこと)
・リスニング(聞くこと)
・スピーキング(話すこと)
この内、まず伸ばすべきはリスニングとスピーキングです。
理由としては、「リアルタイム性が高いものを最初に鍛えたい」からです。リーディングやライティングは(一部の状況を除き)時間を使って調べながらできるため緊急性が低いことが多いです。
リーディングも重要ですが、一般的な社会人であればある程度の力があるので最初の練習メニューから除きます。英文法も最初は必要ありません。
ライティングは更に低優先度で進めることを推奨しています。スピーキングができるようになればライティングも伸びます。また現在のデジタル文化の中では予測変換などもあるので、ライティングの優先度は下げて良いかと思います。
上記を前提に、まずは以下を目指します。
・日常スピードの英語で話している事が大枠理解できること
⇒情報を受けるためのリスニング能力を上げる。
・細かい文法や発音は問わず、非ネイティブとして意思疎通ができること
⇒ある程度相手に負担を強いても最低限のスピーキングができる。
質より量
言語学習は勉強というよりはスポーツやトレーニングに近いものです。そのため繰り返し体に覚えさせることが必須です。そこで、まず目標とすべきトレーニング時間は1000時間です。一日平均三時間を英語のトレーニングに使うと約一年間かかります。一日あたりの時間を少なくしても良いですが、ある程度の短期集中を推奨しています。
・平日は二時間のみ練習。休日の練習時間を増やしてトータル時間を調整する。
・週六日頑張って週一回は休息日を設ける
などは問題ありません。(というより週一の休息日をおすすめしてます)
尚、英語を習得するために一番重要なのは「練習法」ではなく「時間」です。時間さえかければ、ある程度のレベルまではいけます。言い換えると「如何に飽きずに継続できるか?」が最重要事項になります。時間の記録はつけても良いですが、個々の性格に依存します。記録をつけた方がモチベーション維持できそうでしたらやった方が良いと思います。
具体的にやること
トレーニング開始(0時間)から500時間経過までは、
・シャドーイング
・瞬間英作文
上記の二つのみになります。初めたばかりのタイミングで、英単語暗記や英文法、英会話の実施は推奨しません。
シャドーイングとは?
1.英語の音声を聞く。
2.その後少し(一秒くらい)遅れで同じフレーズを自分で声に出す
というトレーニングです。シャドー(影)のように英語についていく練習です。やり方については動画を見たほうがわかりやすいかもしれません。イメージできなければYouTubeなどで検索してみてください。
個人的に、このシャドーイングは「最強の英語トレーニング」だと思っています。やり初めた頃はなかなか上手くできずにストレスが溜まると思いますが、そこは頑張って継続してください。リスニングとスピーキングどちらにも多大な効果が期待できます。
以下の順番で徐々にレベルを上げていきます。
1.文章の意味は解らないけど、なんとなくもごもごと声に出しながら音声についていく
2.文章の意味は解らないけど、八割くらいの文章を声に出せている
3.文章の意味を理解して、且つ文章を声に出せている
最初はなかなか1から2へ到達できないと思いますが、気にしなくてオッケーです。反復トレーニングなので、繰り返していると自然にできるようになります。多分、最初の教材を3まで完了するのに映画などであれば数ヶ月かかります。最初の一ヶ月くらいは馬鹿になったつもりでやりましょう。尚、一度でも一つの教材を完了すると、二回目以降に別教材でやるのがすごく楽になります。そのため最初の教材で頑張るのが非常に重要です。
シャドーイングの教材について
教材の選定については必須の条件があります。
1.繰り返し聞けること
2.日本語/英語両方の字幕もしくは、スクリプトが用意できること
要は、日本語訳と英語が目で確認できて、繰り返し練習に使えるものを用意しましょう、ということです。また、可能ならスマホで持ち運べる教材がベストです。家でしかやれないと、必要時間の捻出に苦労します。電車などの公共の場所で実施する場合、声に出さなくても良いですが、イヤホン等から聞こえてくる文章を頭の中でしっかり追って声に出すイメージをしながら聞いてください。
上記の前提で個人的なおすすめ教材は
1.好きな映画や海外ドラマ
2.TED
3.英語教材
の3つです。
1.好きな映画や海外ドラマ
一番おすすめです。理由としては
・所謂日常会話のスピードで色々な人がそれぞれ独自のアクセントで話してくれる
・好きな内容だと飽きにくいし、ストーリーを知っているので理解しやすい
からです。繰り返しになりますが英語の習得に最重要なのは「飽きずに続ける」ことです。Netflixは日英両方の字幕がある動画が多く、教材としての条件に合ったものを見つけやすいと思います。有名な映画やドラマはスクリプトを販売していることもあるのでamazon等で探しましょう。
日常を扱ったストーリーの作品が一番良いのですが、ここは好みを優先で良いと思います。ただし、アクション映画などはセリフが少ないのと、大多数の人にとって非日常な言葉が多いので若干練習になり難いです。また医療や法廷ものは専門用語に苦戦するかもしれません。まずは好きな映画を選んで軽く実行してみてから決定する、でも大丈夫です。
2.TED
ビジネスのプレゼンテーションという意味では映画や海外ドラマよりおすすめです。個人的にはTEDと映画の両方を使っていました。
具体的なトーク内容は、映画同様にこちらも好みを優先で良いと思います。あえて言うなら欧米系の方のプレゼンを選んだほうが良いかと思います。非ネイティブの方のトークを選ぶと慣れない内は訛り(アクセント)に苦労するかもしれません。映画も同様なのですが、TEDは基本的に複数人の会話ではなくずっと同じ人の話を聞くのでより注意が必要です。TEDはスマホアプリも色々あるので、それらも活用できます。
3.英語教材
所謂、学校の勉強や受験に使う教材です。特別指定はありませんが、個人的には「速読速聴英単語」を使っていました。
https://www.zkai.co.jp/ca/toeic/booksvocabulary/
・レベルごとに細かく教材がわかれている
・比較的、話の内容が飽きなかった
という辺りが選んだ理由です。尚、レベル分けされていることはメリットですが話すスピードが遅めです。そのため、これだけではなく1か2を併用した方が良いと思います。
瞬間英作文とは?
複雑ではない簡単な英語を、日本語を見た後に「反射的に」「大量に」声に出して作るという基本的にスピーキング向上に効果のあるトレーニングです。例えば、「(混雑した場所で)通らせてください」という日本語を見て、すぐに「Excuse me」と発声する、という練習です。解りにくければ瞬間英作文で検索すると色々出てきます。
日本に住んで、日本語で考えて話してきた私達は、
1.伝えたい情報を日本語で考える
2.その文章を英語に訳す
3.声に出して話す
という流れで英文を話すことになりますが、そうではなく「ある特定の状況の時に反射的に使える」文章のストックを用意するというのが目的です。普段、「ありがとう」という言葉を「有り難い」という言葉の元の意味を気にせず場面に応じて反射的に使っていると思いますが、それと同じような定型文を英語でもストックしておくイメージです。
瞬間英作文の教材について
所謂、中学英語のような文章で瞬間英作文を実施しても良いのですが、個人的にはあまりにも非日常的な文章だと飽きるので、あまりおすすめしていません。それよりは、日常会話集やビジネスのフレーズ集のような利用シーンがイメージできる本を利用するほうが続けやすいと思います。
以下は個人的に利用していた書籍です。これらの書籍じゃなくても構いません。ポイントは「簡単な文章で且つ実際の利用イメージができる英文」が「たくさん載っている」ことだけです。
・絵で見てパッと言う英会話トレーニング 基礎編
・絵で見てパッと言う英会話トレーニング 海外旅行編
・英会話ペラペラビジネス100
・英語フレーズサクッとノート
使い方はやり易い方法で問題ありません。本の中から十から二十くらいの文章を選び、日本語を見て英作文を発声する作業を繰り返します。覚えたら別の文章を選び、同じように練習をしていきます。シャドーイングの箇所でも似た記載をしましたが、電車などの公共の場所で実施する場合、目で見た文章を頭の中で声に出すイメージをしながら作文してください。
買った本をそのまま利用しても良いですし、エクセルやgoogleスプレッドシート等で覚えたい文章の日本語と英語を本から抜き出し併記してトレーニングに使っても良いです。また暗記帳関連のスマホアプリに文章を登録して使うのも良いと思います。
トレーニング時間の配分について
一日三時間トレーニングするとして、
・二時間:シャドーイング
・一時間:瞬間英作文
が推奨です。例えば、起床してからと通勤電車で一時間のシャドーイング、昼休みに三十分の瞬間英作文、仕事の帰り道と寝るまでの時間で一時間のシャドーイングと三十分の瞬間英作文です。
一つのシャドーイング教材で続けても良いのですが、常に一つの話だけで二時間継続し続けるのは結構厳しいかと思います。なので、飽きてきたら教材を二つに増やし交互に練習して継続しましょう。
また、仕事が忙しくて疲れていたり、体調が悪くてできない時は、好きな映画やドラマを見るだけの時期が少しはあってもいいと思います。ただし「英語の作品」を「できるだけ字幕を見ずに」視聴するようにしましょう。何より重要なのは「飽きて投げ出さずに続ける」ことです。回復してきたらシャドーイングに戻りましょう。
ちなみに、一日に行う練習時間を増やしても構いませんが、燃え尽きないように注意してください。自分でも気が付かないうちにストレス / 疲労が溜まっていることがあります。適度な息抜きは必要です。
500時間を超えたら
トレーニングが継続して500時間を超えたら実践メニューの追加です。このタイミングで「英会話」を取り入れましょう。英会話は最低限英語に慣れてから取り入れたほうが効率が良いです。オフラインの英会話スクールでも良いですし、オンライン英会話でも良いと思います。
英会話スクールの良いところは、実際に会って話せることや英語を学ぶ仲間ができること。オンライン英会話の良いところは、単価が安くて数をこなせることです。個人的には両方併用するのがおすすめです。
・ニ時間:シャドーイング
・三十分:瞬間英作文
・三十分:英会話
トレーニング時間の配分は、平均で上記の比率を推奨します。そのため、週に三時間半は英会話の時間をとることになります。例えば英会話スクールに週一回一時間、三十分のオンライン英会話を週五回やると達成です。
ちなみに、英会話をやり始めると自分の力のなさに愕然とする可能性が高いですが、それは自然です。英会話の授業の中で言えなかった文章については瞬間英作文の教材として利用すると良いと思います。しつこいくらいに繰り返しますが、英語力の向上方法は一つだけで、「めげずに続ける」ことです。
1000時間を超えたら
英語のトレーニングを継続して、1000時間を超えたら
・英単語
・英文法
・発音
・多読
を徐々に追加すると良いと思います。
どれから追加するのかは、既存の練習(シャドーイング、瞬間英作文、英会話)の中で足りないと感じたものから追加すれば良いと思います。追加した分、既存の練習時間を減らしても良いですがトータルの時間は減らさないようにした方が良いです。
英単語は、「難しい単語を覚える」必要はありません。それよりも「中学くらいに習った簡単な単語だけど、実際の会話ですぐに出てこないもの」を集中的にやりましょう。やり方は瞬間英作文と同じやり方で問題ありません。
英文法も、「複雑な文法を覚える」必要はありません。それよりも「シンプルな文法がなぜそうなるのか」を確実に理解しましょう。「1億人の英文法」はすごく良い教材だと思います。若干難しいですが「例解 和文英訳教本」も良い本です。
発音については、そこまで神経質になる必要がないと思っています。ただし、可能なら綺麗な発音が良いし、発音の違いを理解することはリスニングにも役立ちます。なので、一冊だけ発音の本を読みましょう。「日本人のための英語発音完全教本」がおすすめですが、自分が理解しやすそうな本が良いです。
多読は、初めてのリーディング用のトレーニングです。ちなみに「読む」と言っても、いきなり英語ニュースやペーパーバックの小説を読むのはやめましょう。心が折れます。
https://www.seg.co.jp/sss/learning/
詳細は上記のサイトを見ていただければ良いのですが、辞書を使わなくても読める本を読んで、楽しくスラスラ読むことが重要です。トータル百万語を目指しましょう。個人的なおすすめは「cambridge english readers」です。尚、多読は「簡単な文章を素早く理解する力がつく」のでリスニングにも効果があります。
最後に
1000時間の英語練習を継続できれば、基礎力がつくので将来の成長がしやすくなります。また、一度このラインまでくると、忘れにくくなるので仮に多少のブランクがあっても英語力が落ちにくいです(落ちることは落ちますが…)
近年、自動翻訳の性能が向上しており、外国語学習がいらなくなると一部で言われています。今後も自動翻訳の性能向上が進むこと自体は完全に同意なのですが、「習得の必要性が全くなくなることはない」と思っています。
インターネットが世の中に普及して、以前より「記憶」の必要性が下がりましたが、頭の中への記録そのものがいらなくなった訳ではありません。色々と知識のある人の方が概してインターネット上の情報も上手く使っています。言語の習得というのも似たような方向に向かうのでは、と考えています。
最後に、自身での英語対応に自信がない時に、他者へ翻訳や通訳を依頼する場合の注意点を書いておきます。
1.訳しやすい日本語を使う
英語が使える、とはどういう意味でしょうか?
・英語圏の地域に十年以上住んでいた
・TOEICで900点とった
など、色々な基準があり万人が認める「使える」という基準はありません。更にそれぞれの言語は一対一で対応している言葉があるとは限らず、真に完璧な変換というものは存在しません。そのため、翻訳や通訳を依頼する時は「変換しやすい日本語」を意識的に使うようにしましょう。
・読点で区切られた長い文章は二つに分割する
・難しい単語や勘違いを生みやすい単語は使わない
2.専門用語に注意する
英語が得意な方でも、特定の専門分野については知識があるとは限りません。そのため、仕事上の専門分野の翻訳や通訳を依頼する場合は、依頼先と事前のコミュニケーションを取って
・依頼先の対象専門分野における知識レベル把握
・依頼先に送付できる専門分野の英語表記や、その分野の概要知識が解るドキュメントの有無
を確認すると事故を防ぎやすくなります。
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