【15分習作】 窓から見た風景

　妻の実家が取り壊されることになった。両親は健在であるが、昔、商売をしていたスペースを持て余していてどうも勿体ないし、何より掃除やメンテナンスが大変、とのことだ。一時期、我々との同居も考えられていたが、相談しようという頃に新型コロナが流行し始めた為に寄り付かなくなり、有耶無耶になって、今に至る。
　妻の両親の引越しを手伝いに行った際、元々妻が使っていた部屋から窓の外を見た。妻の通った中学校の運動場が全部見える。運動場の隅でよく“達磨さんが転んだ”や“靴隠し”をしていたという話を大学時代に妻から聞いたことがある。中学生女子がそんな遊びをするか？　と友人は即座につっこみを入れていたが、私にはセーラー服で走り回る妻の姿が容易に想像出来たのだった。実に面白い。
「あ。今、私が靴隠しで保護色を駆使してた話思い出してたんちゃう？」
　妻には全て見透かされていたようだ。