上渓三竿

むかーし昔の文章をちょっと書き直して載せる為に登録。 と言いつつまた新しく書きたい。

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恩師'94

 随分と気温の低い、涼しい朝の訪れに、僕は久々に目覚めることの素晴らしさを見出したというのに、テレビのアナウンサーが「これでも平年よりは高い値です」と言うものだから、興醒めしてしまった。  のろのろと遅鈍な動きで支度をし、漸く食卓に着いてミロを作り始めると、既にコーヒーを淹れてそれを飲みながら寛いでいた兄が、食卓の上に置かれた朝刊を指差して言った。 「お前、この人の本持ってるやろ?」  大江健三郎氏の、ノーベル文学賞受賞のニュースが報じられていたのである。  僕は、一面の見出

    • 【15分習作】 くもり

       くもりという天気が好き過ぎる。僕は、中三の夏に部活を引退してから、塾が休みである水曜の夕方には大体サイクリングに出掛けた。十四歳の僕は、降水確率など気にしない。流石に大雨であれば諦めもしたが、どんなに今にも降り出しそうな空でも、それは僕にとって“くもり”でしかない。よってサイクリングは決行。淀川に沿って只管上流へ走り、豊里大橋の手前で雨粒が落ちて来る。それでも進み、鳥飼大橋まであと二百メートル程の所で、どうしようもない土砂降りになって、僕は河川敷公園にある簡易トイレに駆け込

      • 【15分習作】 緑

         図書館から出たところで振り向くと、緑色のダサいママチャリに乗ったあいつが見えた。あいつというのは、彼氏の幼馴染。同じクラスで、私と同様帰宅部。ああ、文化祭の準備をサボって図書館に篭っていたのがバレてしまった。何か言おうとしたあいつを遮って、私は言う。 「ねえ、宮っちの家で稲木君待ってもいい?」  図書館の後で、彼氏の家に寄ることになっていた。どうせあいつの家の前を、彼氏は通るから。返事を待たずに、勝手に荷台に座る私。早く行ってよ。  私を乗せて走り出したあいつは、明らかに苛

        • 【15分習作】 チョコレート

           「バレンタインのチョコに血混ぜて手作りしたのを食べて貰えたら結ばれる、っていうおまじない、今でもあるみたいやな」  テレビを見ながらビールを飲んでいたら、妻がそんなことを言い出した。 「……え? 何やて?」  血の入ったチョコレート、なんて気が狂っているが、それより何より“今でも”と言ったのが気になる。 「昔そんなんする奴居ったんか?」 「居ったらしいで〜。私は勿論そんなんせえへんけどな、気色悪い。あんた、不味〜いチョコ貰ったことない〜?」  おちょくるように妻は言ってきた

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          【15分習作】 煙草

           高校3年の時に同じ組だった人間で、水沢というとんでもなく困ったのが居る。水沢は、高3の文化祭直前に自殺未遂をした。理由の一つとして、テストの結果が悪過ぎたから、というのがまことしやかに囁かれていたが、僕は水沢の点数を知っていた、数学なんてぎりぎり赤点ですらなかった水沢が死を選ぶのなら、百点満点中6点だった僕など、一体何回死ねば良いというのか。  自殺未遂以外にも様々な迷惑を掛けてきた水沢と、卒業すればもう会うこともないと思っていたのに、大学1回生の夏、友人の家に遊びに行った

          【15分習作】 煙草

          【昔の落書き】 突然ですが布施は良い町です

          '95.1.11 今日、K氏と布施散歩に出掛けたんやけど、布施戎のため出店だらけで、こんなんでは本来の布施が分からんなー、と言いながら戻って行くと、TSUTAYAの宣伝の看板があって、マクドナルドの向かい、“大スケール”、なんて書いてあるもんやから、こら行かなあかんーと思って、行くことに。しかしマクドナルド自体がどこにあるんかよう分からんので探し回って、やっと見つけた!!  外観はそんな大スケールじゃないけど中へ入ったらわっはっは(←?)。K氏の手帳に書いたリストを

          【昔の落書き】 突然ですが布施は良い町です

          【昔の落書き] なぜか日記形式。

          '95.1.4  昨日は卓球部OBの新年会で、私は朝から準備に行かなければならなかったのだが、K先輩が迎えに来て下さって乗せて戴いた。香川ナンバーが謎であった。←お姉さんの車とのこと……  乗ったらいきなり桑田佳祐で、酔うかと思ったけど、酔い止め飲んだから大丈夫、と気にしないことにして……。(中略)天神橋筋を北上し、長柄橋を渡り、北詰で左折して淀川通ではなく堤防沿いの細いとこを西へ。十三で中側の道へ入って、? と思ったらN先輩の家へ寄って電気釜とかを積まれたのであった。それ

          【昔の落書き] なぜか日記形式。

          【昔の落書き】 なんか、猪名川で地震が凄いらしいです。

          '94.11.14  11.10に地震! というのを書きましたが、その震源地は猪名川町らしく、同町ではここんとこ何日間かで56回も揺れたらしいです。しかし付近に観測所がないからって、気象庁はその内の2回しか体感地震として発表してないんですよ〜〜なんか恐ろしいなあ……💧  で、思うんですが、猪名川で火山噴火したりして……と。猪名川に親戚or知人おらんからって呑気なこと言うとりますわ。しかしほんまに怖い。猪名川で火山噴火したらどの辺まで被害及ぶんかいな。  何故かこの時は文章

          【昔の落書き】 なんか、猪名川で地震が凄いらしいです。

          【昔の落書き】 恐怖の地震!!

          '94.11.10  9日の21:30頃にいきなりゆっさゆっさ揺れて、こら絶対地震! と思ったのにテレビで何も言わんから、近所の散髪屋の息子がまた暴れただけやったんやろか、と不安になった。ら、京都とかが震度1って出たけど大阪が出ん。でも震源地は大阪と兵庫の境(ってどこら辺かなー)とか言う。おかしな話。  能勢かなー池田かなー……いや意外にも西淀川区かなー!! と色々考えたが、寝る用意する頃になると地震のことすら忘れてたのに、10日0:40に突如またゆさゆさ! 今度のは家が

          【昔の落書き】 恐怖の地震!!

          【昔の詩】 0系時代

          0系新幹線の時代も そろそろ終わりを迎えようとしている 丸い目に丸い鼻 丸い顔ももう頻繁には見られなくなった これからは 100系と300系の時代になるのか いつか500系の時代が来たら 私は0系の素晴らしさを大いに語ろう 夕暮れの新大阪を すごすごと去って行った 0系の謙虚そうな姿について語ろう 0系時代の輝かしい思い出について語ろう

          【昔の詩】 0系時代

          【昔の詩】 秋が来ない

          高校野球も疾うに終わって 始業式も済んでしまって一週間 それでもまだ秋は来そうにない 駅前のハンバーガー屋では 今日もコーラのLを飲み干した 外では堪らない暑さが待っている 白の半袖のTシャツを着て帰ると もうそれはおかしいと母に言われた しかしリュックを背負う背中が汗で濡れていた 文化祭の写真部の展示で見た 滝の写真を撮りに行ったというのに 水不足で滝は涸れてしまいそう 窓を全開にして夕方の風を入れる 風鈴が鳴り出していい気分だったが 急に蝿が入って来て部屋を十周

          【昔の詩】 秋が来ない

          【昔の詩】 己の行く道

          己の来た道を振り返るのが好きである これから行く道も そのようになれば良いと思う 惚けた己は てくてく歩いて行く

          【昔の詩】 己の行く道

          【昔の詩】 呪われた薄緑色のドア

          集団は見えない小屋の中に居て 中に閉じ籠って時々外へ出て行って 外の人と外の世間話をする 外の人と同じであるふりをして笑っていた 見えない小屋の見えないドアは 木漏れ日を浴びたエメラルドグリーン色で そのドアに手を触れると 意思もないのに小屋の中に入っているのだ 気が付けば 私は何も出来なかったのだ その小屋の中で そして合鍵を持たずにそこを後にした日から 私は外の人を見る目で小屋の全景を見て懐かしむのだ

          【昔の詩】 呪われた薄緑色のドア

          【昔の詩】 うどん

          男子だらけの学校で、 ご飯の量が男子に合わせてある食堂で、 定食がまともに食べられないからと言って、 彼女はうとんばかり食べている。 きつねうどんばかり食べている。 唐辛子を、人がびっくりするくらいにふりかけて。 きつねうどんばかり。

          【昔の詩】 うどん

          【昔の詩】 別辞

          「さようなら」 人の波に揺られて 気まぐれな小舟が 漂白の旅に出掛ける時が来た 木々はゆらゆら揺れているが 別に 手を振っているのではないのだ! 木にはそんな意思などないのだ!

          【昔の詩】 別辞

          【昔の詩】 空の色

          予想は出来ていた 今日が曇りであることぐらいは それでも 階段の踊り場に 光が差し込んでいないと知った時 絶望する人が居る 雲はこんなに大きいのに 空いっぱいの雲は しかし誰も 灰色の雲に憧れたりしない コップの中に映る白い雲のように 風に消されることもなく 空の色を一つにしているというのに 嫌われる

          【昔の詩】 空の色