【15分習作】 コウモリ
体育大会が終わり、後片付けが行われている運動場。時折誰かが写真を撮り、なかなか片付けが捗らない。灰色の雲に覆われた空に、何処からともなく黒い欠片がちら、と舞い込んで来た。何やら落ち着きのない動きでそれは空を動き回り、滅多なことで苛立ちはしない僕を苛々させた。一体何なのだ、と目を凝らして見ると、一匹のコウモリではないか。「あ、コウモリ」と無感情のまま僕が指差して言うと、女子の誰かが「不吉やわ」と呟いた。何が不吉なものか、コウモリぐらい昔から飛んでいるだろう、と思いはしたが、僕は女子に意見などする気はないので黙っていた。「この棒は何処へなおすん?」と訊かれてそちらへ目を遣ると、不意に背後で「うわ!」と叫び声がした。振り返ると、声の主の宮谷が僕に訴えてきた。
「今、俺の首にコウモリぶち当たって来た!」
周りで女子達が「めっちゃ不吉」「汚そう」と笑っている。いつか見た光景のようですらあった。
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