綿棒浣腸という秘技


『綿棒浣腸』
この言葉は、子を持ってから知りました。

1人目の子は、生後1週間から便秘で。
1人目で何もかも不安で、『うんちがでない』ことがこんなにも心配なのかと思うくらい心配で。

お腹をのの字でマッサージしたり、足を持ち上げて自転車漕いでるみたいに動かしてみても、
出ない…でない!!
お腹がパンパンでもない、じゃあ母乳が足りてないの?ミルク足すの?どれくらい??

育児書には、一番大事なことが一番不明確に載ってある。
『これはあくまで参考程度に、目の前の赤ちゃんの様子をみて決めていきましょう。』

これじゃあわかんないよ!

産院に電話する。「綿棒で浣腸してみてください」

…綿棒?浣腸?

助産師さんや親御さんたちが、ブログや動画で綿棒浣腸のやり方を教えてくれている。
すがるように見て、読んで、頭に叩きこんで、やってみる。

(大丈夫?痛くない?もっと入れていい?)
震える手で、震えないように、

「大丈夫やで、痛くないよ、もう少し入れるで」
と、気持ちとは反対の言葉で我が子に語りかける。
語りかけながら、グリグリ、綿棒をゆっくり、大きく、まーるく、回す。
まだかな、あと少し、もう少し、頑張れ…


次の瞬間。

ちょっと、想像以上に、すごく出てきて、
それを見て私は、

「っっっしゃーーーーー!!!よーがんばった!!!!!」

と、涙を流して喜んだ。言い過ぎでも何でもなく、うんちをみて大号泣して大満足した。

最初だから下手くそで、新聞紙をひいてても汚してしまったけど、それでも、
うれしくってうれしくって、
泣きながら片付けた。

「でた!でた!うんちがでた!!!」

と、仕事中の夫に、歓喜のうんち出た報告をした。


子育てってすごい。
新しい世界が広がった。

お医者さんによるのかもしれないけれど、綿棒浣腸はクセにならない(毎回綿棒浣腸をしてると、綿棒浣腸しないと出なくなっちゃうということはない)と私は言われたので、
最初の頃は2日出ないとやっていました。ほぼ毎回やっていました。生後4ヶ月まで毎回やっていて、それで出していたので、
「本当にクセにならないかな。中学生になってもやってたりして」と想像して、笑ってましたが、
4ヶ月過ぎから急に自分で出せるようになり、
綿棒浣腸はそれから数回しかしてません。

毎回綿棒浣腸をしてた頃、毎回だったので、慣れてくるし、分かってくる。
いまやっても泣き叫ばれて暴れて失敗するから、機嫌がいいときを狙おう、とか、
でもそれはきっと、子どもによって違う。
違うから、育児書も、

『目の前の赤ちゃんをみて決めましょう』

と書かざるをえない。
でもそれだと、新米の親はわからない。

わからないことを、それが当然だというスタンスでいれるから、2人目以降は少し、肩の荷を降ろして育児できるのかもしれない。
それでも、1人目と違ってアタフタしたり、びっくりしたりすることも多いけれど。

あの頃の私は、人に会う度、
「いま自己紹介してって言われたら、『特技は綿棒浣腸です!』と自信をもって言うわ」と言ってました。本気でした。

ありがとう綿棒浣腸。
あなたのおかげで、私は、うんちが出なくっても、そこまで心配にならなくなりました。

育児の必殺技、いくつあっても困りませんからね。

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