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古装劇専門の私がうっかりはまった家族を描いた中華ドラマ「都挺好」

2019年上半期に中国でヒットした「都挺好(All Is Well)」を見た。

中華古装劇を専門にしている私には珍しく現代ドラマ。きっかけはTwitterで「都挺好っていうタイトルなのに、1話見たけどうまくいってることがひとつもない」と見かけて、ちょっと見た。
見たらおもしろくなちゃって全話見た。

その感想です。ネタバレはほぼないです。

蘇州を舞台にした家族の物語「都挺好(All Is Well)」 全46話

アメリカに住む長兄、マザコンの次男、母親に虐待されていた妹の3兄妹が母親が亡くなって久しぶりに集まり、父親をどうするかから話が始まる。

年老いた親をどう面倒みるか

といっても都挺好に登場する父親は63才。まだまだ若いのに、この年齢になると年金と子供に面倒を見させてのんびり暮らすのが一般的らしい。子供も親の面倒を見るのは当然という意識がある。自分たちの生活に影響があっても、経済的に苦しくても体面を重んじようとする。

アメリカで暮らす華僑の問題

アメリカでなにかあっても、大出世で国を出て来ているので今更帰れない。長兄夫婦を通じてそんな中国の一面も見せる。

一人っ子政策の歪み

都挺好の苏家は3人兄弟。ん?中国は一人っ子政策じゃなかった?とぐぐると、一人っ子政策(計画生育政策)は1979年から2014年まで。2015年から2021年までは2人まで。ほんとについ最近の話。この3人兄弟は30代なので「???」と見ていたのだけど、なるほど、最後にこの政策の影響が物語の根幹にあることを知る。

このお父さんがほんとに酷くて、途中まで、いや後半残り1/3近くまでイライラの連続なのだけど、脚本が素晴らしくグイグイ物語に引っ張られるし、最後は家族があることの喜びに結ばれているので視聴後感は一応爽やかである。

だけど、子供の頃は貧乏だったこの兄弟たちは大人になってみんな経済的に豊かで、中国では中産階級以上だけど、お金なかったらこんなきれいな話にはならないよねって思ったので、多分中国でもそう思う人はたくさんいるんだろう。


中国は、儒教思想からくる「家族を大事に」がものすごく強いんだなって思った。

このドラマで描いている「家族」は、血縁者の繋がりだけではないのだ。苏家のドタバタを通じて、会社、国も家族と描いている。

日本人はここまで”家族”を大切にはしない。それは日本の特徴だし、私はその自由さが好きだけど、ちょっと羨ましいなという気分にもなった。

特に印象に残ったシーンがふたつ。

明玉(苏家の末っ子)は大手機械製造業の凄腕中間管理職。社長の息子が「機械なんて古い。日本やドイツに勝てない。これからはITやエンタメとか最先端ビジネスの時代だ。そういうのをやりたい。」と言うと「その通りだ。でもそのビジネスを支えているのは製造業なのよ。」「今は確かに日本やドイツには勝てない。だけどいずれ競争に勝てる高品質のものを造れる国内企業が出てくる。それを支えることが国力をあげていくことになる。それが私達の使命だ。」というシーン。

考えてみれば当たり前なんだけど、中国の経済界はリアルにこんな風に考えているんだろう。ITはすでに中国は先進国。うん、近い将来日本は製造業でも抜かれるんだろうなー。

もうひとつは、さんざん騒ぎを起こし子供たちを振り回す身勝手な父親が川に投身自殺をしようとして警察沙汰になるシーン。うんざりしながら迎えに行く子供たちに「親を大切にしなさい」と一方的な説教をする警察官。(事情も知らないくせにこっちもイライラするわ)と見ていたのだけど、「君たちがちゃんとお父さんと向き合って見ていないから(お父さんはこんな事件を起こすの)だ。」というセリフに、はっとさせられた。

お金は出すし、なんとか父親の言うことを聞こうとがんばってはいるのだけど、ちゃんと向き合っているかと言うとnoなのだ。ああ、そうだよね。お父さんだって大変な人生だったんだと許した時にやっと都挺好になった。

人はいろんな確執がある。特に家族となるとこじれたまま何十年もなんて人も少なくないだろう。

でも、手放すとすべてうまくいく。そんなことを見せてくれるドラマだった。

良いドラマってあとからもじわじわくる。中国に興味なくてもお勧めできるドラマ。なんといっても素晴らしい俳優陣。

中華話数が多いので最初ちょっと引くかもしれないけど、それだけ丁寧に描かれているので、映画よりも満足度が高いのだ。

You Tubeで全話無料で見られるので興味を持ったらぜひ見てみて。(日本語自動翻訳有り)

*記憶で書いてるのでセリフは正確なものではありません。

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