30歳の誕生日にホールケーキをひとりで食べた。

2022/05/02当時の記事です
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2〜3年前から密かに楽しみにしていた30歳をやっと迎えた。

私のことを誰も知らないこの街で、30歳の誕生日にホールケーキをひとりで食べる人生になるなんて誰が想像できただろう。

みんなは30歳の誕生日をどんな風に迎えるんだろう、そんなことを思いながらスプーンで突きながら食べたショートケーキは美味しかったし、この状況もおいしくなるなぁ…と思ってしまった。

ネタになると思ってショートケーキを頼んだわけではなく、せっかく30歳だしこれまでやったことのなかった贅沢をしようと思った。
昔からひとりでホールケーキを食べてみたいという願望があったことを思い出し、数日前にショートケーキをポチったのだった。

ケーキを目前にして初めてこの状況の異様さに気がついた。

30歳独身ひとりケーキを食べる。

この言葉の並びを見て一般的な尺度からみれば惨めな状況と感じるのだろうけど、私の中に起こるこの感情には惨めさや寂しさが微塵もない。

この異様さは起こっている状況と私の感情の温度差にあるのだと思う。


驚くほど冷静に淡々とケーキを食べている自分。
物憂げな表情もなく、むしろこの状況が可笑しくてニヤついてしまう自分に引くほどだった。

ケーキを突きながら自分の30歳の誕生日を祝う私。こんな日が人生にあるなんてやっぱりどこまでも私らしいなと誇らしくすら思った。

私には私がずっとそばにいるのでこれほどまでに心強いことはないのかもしれない。
自分からはどうしたって逃れられないから、時々うんざりするけど一緒に生きていくには頼もしいパートナーだ。