グンデルでラジオ放送デビュー
ひとつ嬉しいことがあったので書いておきたい。
グンデルは、ガムランの中の鍵盤楽器の一種で、私は、2018年に初めて留学してからというもの、いちばん力を入れて勉強している。両手で弾くというテクニックや、旋律の型の複雑さ、楽器や声についていくということの難しさからガムランの中では最も難しい楽器のひとつである。こうしたことから、合奏の練習では、何曲か弾かせてもらえることはあっても全曲にわたってグンデルを担当するということは、これまでのわたしには難しいことだった。
しかし、ついに一つの演奏会で全曲グンデルを任されることになった。それが今回の国営ラジオ局(RRI)スラカルタ支局のラジオ放送であった。わたしは今回の滞在を開始してから、よく太鼓とルバーブ(胡弓のような弦楽器)を演奏する友人とグンデルを弾くわたしの3人で練習をしていた。留学中はコロナ禍を挟んでいたこともあり、習ったものの実際に合奏する機会がない曲がどんどん増えてゆくという状況が長く続いたわたしにとって、ありがたいものだった。その友人の誘いで今回ソロのとある地区のアマチュアのibu-ibu(おばさまたち)のグループが出演するお昼のラジオ放送での演奏会に参加することになったのである。こういう番組はよく行われているらしく、そういえば留学中にもこの放送に参加したことがあった。その時はbapak-bapak(おじさまたち)だったっけ。
もともとわたしはプログラムの全曲ではなく、その一部の数曲を弾くという話だったが、実際、2月に入ってから練習に行き、別のグンデル奏者に会って話をしたら、「この曲はそんなに難しくないかから、いけるでしょう。何を弾けばいいか教えてあげるから。」と言われて、気づけば全曲グンデルを弾くことになってしまった。今回の難関はパラランpalaranという拍節のない歌と、ランガムlanggamという歌がメインの楽曲でこれまであまり勉強したこともなければ本番でやったこともないという状況だった。だけど、幸運なことに今回のパラランは比較的シンプルだったのでなんとか間に合わせることができた。あるあるなことだけれども、練習の中で、知らないうちに歌う曲目が変わったりしていたので、話と違うじゃないか…とよく戸惑っていた。本番でも、知らないボウォbawa(歌の一種)が始まったので少しパニックになった。本番が近くなると、ibu-ibuたちとの合奏以外に、別で練習を友人にしてもらったり、気がついたら変わっていた曲をなんとか間に合わせるために先生に突貫でレッスンをしていただいたり、色々な方に助けていいただいてなんとか当日を迎えることができた。
当日は朝9時に集合してリハーサルをしたあと11:30から演奏開始というスケジュールだったけれど、実際には、ラジオ局に着いてみたらほとんど人が集まっていなかった。そのため、目の前のソト屋さんで朝ご飯を食べることになった。このソト屋さんは朝やっている屋台で、個人的に思い出があったりするので、それについては別の記事に書こうと思っている。久しぶりにここのソトを食べたけれど、おいしかったなあ。
本番は思いがけないところで自分や誰かがずれたり、知らないボウォは友人のハンドサインを見ながらその音を弾いて乗り切ったり、練習ではやっていなかったのにrangkep(irama 4)に行ったりとヒヤッとすることもあったが、大事故にはならなかったのでとりあえずよかったと思う。何より、シンプルなプログラムではあったけれども、一つの演奏会で全曲グンデルに耐えられるくらいになれたことがとても嬉しかった。
当日の演奏の様子はこちらから見られます。(あれ、ラジオだから音声だけだよっていう話をしていたのに、ばっちりビデオ撮影されているではないか…)
よかったらぜひ。
また書きます。
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