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『私飽きぬ私』キュウソネコカミ 【ディスクレビュー#10】

2021年よりライブ活動を一時的に休止していたカワクボタクロウ(Ba)が復活し、満を持してリリースされたフルアルバム。物件探しの苦悩を綴った「住環境」や、貸した100万円が返ってこないことをありのままに歌った「Tくん」という癖の強い楽曲のほか、たったひとつの言葉が凶器にも生きる希望にもなり得ることを歌ったメッセージソング「ひと言」ら10曲を収録。表題曲「私飽きぬ私」では、心が不安定で前向きな言葉が受け入れられない様子を描き、冒頭から<不安だ>と思い切り叫んでいる。心に余裕がないのは良いことではない。でもそんな日もあるからこそ、自分が自分に飽きずにいられるのだ。1秒聴いただけで彼らの曲であることがわかるようなアイデンティティを各曲に持ちながらも、「既視感」や「類似」といった言葉は当てはまらない。キュウソがキュウソで居続けてくれることへの安心感を抱きつつも、一皮剥けたような頼もしさを感じる。


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