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うつのみや花火舞台裏~その16:葛藤~
「花火ってね、別に雪でも雨でもあげられるんですよ」
ステージ横の本部テントでは暗雲が立ち込めていた。2度にわたる中止を繰り返し、3度目の中止を引き起こした雨はなかなかやまなかったからだ。
そして天気予報を見る限り、夜12時まではしっかりと赤色の雨雲が会場一帯を覆い尽くしていた。
去年は雨で順延したと聞いていたけど自分の中ではこれをもう一日繰り返す体力はなかった。このテンションを明日まで維持することが想像できなかったのだ。
そしてその時花火師さんの言葉をふとおもいだしていた。
花火の筒は雨除けしているから雨でも特に問題ないんですよ。ただ冬にやらないのと一緒で、外で見る人がいなくなっちゃうんですよね。と。
私はだめもとでリーダーに確認してみた。
「雨でもあげたらいいんじゃないですか?もうこんなに人も来てるし。」
しかし返答は至極当然のものだった。
「ダメだ。それじゃ誰も幸せにならない。ずぶぬれになりながら見るなんて楽しくないし、見てくれる人は少ない。誰も見てくれない花火なんてあげる意味ないですよ」
そうだった。あげるのが目的じゃないんだ。これをみる子供たちや市民にとって特別な日になるように、笑顔を希望を届けるためにあげているということを忘れていた。
それはわかるんだけどな・・・私は小さく吐き捨てるように言い放っていた。
「ちくしょう、ここまできて、ここまでやってもあがんねぇのかよ。」
つづく・・・
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