初指名。自称彼氏な彼氏7(終)

ついに、終了の時間となりました。

大いに話が盛り上がっている彼に水を差すのは忍びないが、正直、偽物の惚気話にいい加減うんざりして来た所でしたので、つい、緩んでしまいそうになる表情を引き締め

私「あの、そろそろお時間が…」

彼「あ。そんな時間?」


彼は、チラリと腕時計を見て、お財布を取り出したので(喫茶店のお会計かな。定員さんを呼んだ方が良いかな)と店内を見渡す私の前に

彼氏「じゃあ、延長で」と、延長料金を置きました。


(・・・え、マジで?)


彼氏「ほら、お店に連絡しないとでしょ」

わかってる俺、とばかりに、固まっている私は催促してくる彼に、少し苦笑し、連絡を入れました。

※ 指名開始の時、終了の時、延長の時に、お店に連絡するキマリがありました。


私「連絡出来ました。(お昼時で)混んで来ていますが、お店変えられますか?」

彼「いや。俺、腹減ってないし、このままでいーよ」

すっかり冷えてしまった珈琲を少し啜って、再び彼の惚気話は再開しました。



先ほどまでは、うんざりしていた私の気持ちでしたが、次第に感心に変わって来ました。

話の内容から、間違いなく、彼女さんは【仕事の一環】として彼と付き合っていて、ですが、彼は彼女と【真剣交際】をしていて、彼女の仕事を応援している自分に陶酔している節もある。

それは、それで【彼の幸せ】なのかもしれない。

だとしたら、やはり外野の私がとやかく言うのは筋違いで、支持よりに見守るのがベストだろう。


ですが、個人的に気になるのは、その歪な関係はとても脆く危うくて、例えば、彼女がお仕事を辞められたり、彼の資金がつきたら、途端に終わってしまうという事だ。

先ほどの買い物の時、服一色を買ったものの、諭吉さんでも十分にお釣りが来る品だったし、お昼時でも軽食を摂らず、珈琲一杯で粘る様子から、経済的余裕はそんなにないのでは?と、思い始めていました。

女性(水商売)に使うなとは言わないけど、承認欲求や見栄を満たす為に(食費などの)身を削るスタイルは、賛同しかねる!

2回目の終了の時間。

私「(彼)さん。お時間です」

彼「本当だ。早いね。じゃあ、もう少し…」

私「あの。差し出がましいようですが、ひと言いいですか?」

彼「?なに?」

私「今の(彼)さんに、こういうサービスはあってないと思いますよ。もっと、ご自身を大切にされてください」


こうして、私の初指名は、大変失礼な私の発言で、終了を告げました。