[エッセイ]これの作り方

好きな料理は何ですか?

と聞かれたら「卵料理」と答えます。
卵で作られたものなら、大抵好きなのです。
出し巻き卵、スクランブルエッグ、オムレツ、茶碗蒸し、プリン、そして目の前のこいつ。

先日、こちらのお題を見たときに、卵好きとしては、やらねばと思ってしまいました。

それで連日二つも書いてしまって、そろそろうるせえ奴に見つかったなと、思われているんじゃないかと思います。
しかし、毎朝目にしているものですし、見れば書きたくなるというものです。

こいつはかなり奥深い料理なのです。
フライパン生の卵を落として焼くだけですが、黄身は半生派と固め派がいたり、調味料は、ソース派、醤油派、塩胡椒派など多くの派閥が存在します。
私はどれもその日の気分で決めるので、派閥には寛容ですが、ただ一つ、両面焼かれるのは我慢ならないのです。
裏側には焼き目があり、こちらを向いている表側は、フライパンに落とされた時のそのままの形状を保っていて、白身の部分は綺麗につるんと照り輝き、少し盛り上がった黄身の部分は色を持った中身が完璧な形で白身の膜に覆い隠されていて、その日の卵の状況や種類、焼き加減、によって微妙に色合いが異なってくるのです。ここに焼き目がつくなんて悲しすぎると思いませんか?

というわけで作り方書きます。
まず、ガラス製の蓋の付いたフライパンを用意します。
フライパンに油を敷き、火をつけて、油を全体に馴染ませながら熱しておきます。火は中火くらいでしょうか。

フライパンが暖まったら、卵をフライパンに割り入れます。この時うっかり黄身を割ってしまうと、一日落ち込む日になります。そういう時は諦めてスクランブルエッグにしましょう。ケチャップで食べればまだ少し救われます。

無事割り入れられても気を抜いてはいけません。すぐに蓋をして、火を弱火にしましょう。そのまま白身全体に色がつき始めるのを待ちます。この間にサラダやらパンやらを用意しても良いでしょう。しかし、耳はフライパンに向けていないといけません。音が変わった時が、白身の焼け始めたサインです。
湯気で中身が見えていない時は、蓋をつけたままフライパンを傾けて蓋の水滴を中に落としても構いません。その水はまた水蒸気になって、卵に熱を通してくれます。

白身が不透明になったら、火を止めます。蓋は絶対に開けてはいけません。
ここからは経験と勘です。好きな固さの黄身になるまで置いておきます。
固めが良い場合は、黄身の部分までしっかり色が変わるまで放っておきましょう。パンが焼けた頃ではないでしょうか。マーガリンでも塗って待っておきましょう。
生が良い方はあまり待たずに取り出してください。
半生が良い場合は、パンやサラダを皿に盛り付けながら、よく様子を見ていてください。何度か失敗すると、そのうち良い固さの色とタイミングを覚えます。心が折れないようにしましょう。

これで、綺麗に焼きあがります。
ああ、君は何度見ても美しい。黄身だけじゃなくて、白身も美しい。

半生の黄身に、フォークをいれた瞬間がいいのです。
黄身がとろりと流れてくる景色はここ以外では見られません。
これを眺めて始まる1日は素晴らしいということをもっと多くの人に知ってもらいたいと思うのです。

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