憂国者

三輪太郎さんの作品を読むのはこれで2冊目だ。三輪太郎さんの作品は1つしか読んだことがないが、その1冊にとても惹かれた。本作共に三輪さんの作品は小説というよりかは、何か議論を見ているように感じるからだ。

 1冊目はポルポトを絡めた作品であった。彼は1975年からの4年間で、カンボジアで170万人の虐殺を行った指導者である。そして、本作はラドヴァン・カラジッチ、三島由紀夫を焦点とした作品。カラジッチはボスニアヘルツェゴヴィナ1992〜1995スレブレニツァの大虐殺の中心人物である。2021.6に国連国際刑事法廷にて終身刑が決まった。

さて、本作品についてだがここまでの内容だと読み始める一歩が重たそうな印象があるかもしれないが、卒論を書く大学4年生2人とその教諭のやり取りをメインとしたストーリーであった。そう、つまりはテンポ良く話は進み、旧ユーゴ内戦や三島由紀夫についてを大学生2人の性格や思想に基づく会話などを客観的に感じていく作品であった。

では、感想はとなると中盤が1番愉しく感じた。では、何が愉しく感じてたのか。学生時代に地理を専攻していたため、旧ユーゴ紛争について紛争が起きていたという知識のみの私にとって内情を知るきっかけになり知りたい欲が高まっていたこと。カラジッチという人がどういう生い立ちで国際戦犯となっていったかを登場人物の考えをもとに感じることができたこと。同様の理由で、三島由紀夫の生い立ちや彼の思想、自決をしたことについて一つの意見、考えるきっかけを得ることができたことだ。冒頭のとおりこの作品も小説よりは議論に近い。議論をするには、2人の登場人物について、時代の背景について僕は知らなさすぎた。別に悪いことではないが、紛争・三島由紀夫のことを少しでも知ってからまた読もう思う。

最後に自決をした三島由紀夫について今の僕が思うことを。僕は自身の思想や周りのために死ぬことはできない。それに痛いのも嫌だ。虚しいことにそもそもそのような信念たるものが何にもない。彼が愛国者であったかは知らないが、命を持って自身の考えを日本国に発信した彼を日本最後の武士のようにも感じる。(Google曰く、1970年以降切腹をした記事は見当たらなかった。)彼に心酔したいわけでもないが、全てをかけて何かに取り組む人の生の話を聞きたい、知りたいと改めて思う作品だった。

※陰と陽を持つ彼は語り継がれる条件をいくつも持っていると思う。ノーベル文学賞候補、日本で最後の切腹者、過激政治犯。

終着点を考えず、バラバラな感想になってしまったが、今後も時々なにかを記録として残していこうと思う。


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