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二次創作考~MIROKUの推理~

※10/16、1-Bに追記。
ロボ娘系VTuber・カミカミちゃんの配信(https://www.youtube.com/c/KAMIKAMICh)にて、「勇気の推理 海苔3 バランスの良い食事」の終盤の展開やエンディングに納得がいかないので二次創作のファンゲームを作ろう、という話に。しかし、カミカミちゃんはゲームを作ったことはなく、どこまで原作の雰囲気を出すか、どこまで真面目にするかを悩んでいるとのこと。

そこでゲーム作りの専門家ではないものの、二次創作に長年親しんでいる者として少しでも協力できればと、創作においてどのような選択肢が考えられるかの一例を提示するためにこの記事をまとめています。
よってほとんど私信のようなものではあります。

念押ししておきたいのが、あくまでもこれらは「こういう選択肢があるよね」という提示であって、こうすべきとかこうしてほしいという提案ではないということです。
カミカミちゃん自身で決めてもらうか、ゲーム作成配信をしていただいて視聴者のみなさんで方向性を考えられればいいなと思っています。

私自身もゲーム作成には興味があるので、自分が作ることになったときに方向性を定めやすいよう咀嚼する意図もあったりします。結構楽しんで書いているわけです。

それから、ゲーム作りについての実践的な参考資料としては『星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』などのディレクターである桜井政博さんのyoutubeチャンネルがおすすめです。
https://www.youtube.com/@sora_sakurai_jp


1.終着点はどこか

まずはどこを目指すか決めておくことによって、どういう方向性で作成していくのかを定めやすくなるのではないかと思います。これを決めずにノリで進めていくのも楽しいかもしれませんが、頓挫する危険性が高まると言えます。

A.身内だけでプレイできる環境に留める

Xやyoutubeを見ている人だけがプレイできる環境にし、身内だけで楽しむ。
この場合、ゲーム内で内輪ネタを盛り込むことのデメリットが無くなったり、不具合や問題点に対する懸念が薄まるため、気楽に楽しめるかもしれません。

B.ゲーム紹介サイトなどに登録して不特定多数に発信する

今回カミカミちゃんが制作ツールとして選んだティラノビルダーでも、ノベルゲームコレクションという紹介サイトが用意されています。こういったサイトを利用することで、カミカミちゃんや「勇気の推理」のことを知らないユーザーに遊んでもらえる可能性が生まれます。
※10/16追記。ノベルゲームコレクションでは二次創作ゲームの投稿は禁じられているため、原作者の許可を得ているとはいえNGかもしれません。
この場合内輪ネタは一切通用しなくなりますが、むしろここからカミカミちゃんを知ってもらえるチャンスにもなります。場合によっては原作のように、有名実況者にプレイしてもらえることもあるかもしれません。

2.全体の方向性

カミカミちゃん自身が言及されていた、"どこまで原作の雰囲気を出すか、どこまで真面目にするか"という部分です。

A.原作完全再現路線

手触りや見た目、つまりゲーム性やビジュアル面を再現することで、原作ファンはより親しみやすくなります。幸い原作がめちゃくちゃシンプルなので、単純に見た目を寄せること自体は難しくありません。
ただし、原作のBGMは11,000円の有料素材集で、背景画像も一部を除いて有料素材が使われているため、完全再現を目指す場合はそれなりの費用がかかります。(幸い、ゲームの舞台である渡海街の俯瞰図はフリー素材。)
また、原作特有の言語感覚の再現は簡単ではないかもしれません。
作者のご友人いわく"天然ではなく本物"とのことで、他人が再現しようとしてもわざとらしさが感じられてしまう恐れがあります。
また、その独特の作風ゆえに原作を知らないと楽しめない可能性が高くなります。
ボタン押下に対するレスポンスの悪さなどは、ツールの仕様で再現できないので無視するしかないでしょう。

B.あくまでも二次創作と割り切った路線

マンガで言えば公式アンソロジーや同人誌などのように、作者自身の作風に落とし込んで原作を料理する路線。
「勇気の推理」をテーマにして普通にゲームを作ってみる、ということです。これが最も労力が少なくて済む方法でしょう。

C.原作超えてるやん路線

原作がシンプル極まる作風なので、これをとことんリッチなものにしてしまうことで別の面白さを狙う路線。
選択肢によってストーリーが分岐したり、UIが充実して見た目が良かったり、キャラクターの立ち絵があったり、まともなゲームとして成立させることを目指すやり方です。
あるいはビジュアルは再現しつつゲーム性を充実させたり、ビジュアルがリッチなのに原作通りのゲーム性にしてみたり、など。
これなら原作を知らなくてもゲームとして楽しめる可能性が高まり、原作を知っていればまた別のおかしみを感じることもできるかもしれません。
ただし、かかる労力が大きいために熱量を維持するのは難しくなると考えられます。

3.ゲーム性をどうするか

原作である「勇気の推理」シリーズはノベルゲームであり、ゲーム性と言える部分は選択肢を選ぶというただ一点です。ただし、選択肢を誤った場合はストーリーが分岐することもなく即ゲームオーバーになる上、作品によってはどの選択肢を選んでも同じ結果になったり、選択を放棄(パス)することすら可能だったりします。これについてどうするか、というところ。

A.原作通りにする

上記のゲーム性だからこそ「勇気の推理」シリーズである、という見方も考えられます。作者いわく、"選択肢を誤ってやり直しになるのはかわいそう"ということで選択肢が無効になったりしている経緯もあります。
かかる労力も少なくて済みますが、原作を知らないと怪訝に思われるところではあります。

B.最低限のゲーム性を持たせる

選択肢の無いノベルゲームはただのノベルです。ボタンを押して読みすすめるだけなのでゲーム性と言える要素がありません。
原作のように即ゲームオーバーになってしまうにせよ、選択肢を設けることでノベルゲームとしての体裁は保たれます。
また、結果としては一本道になるものの、選択肢によってメッセージのみ変化するというゲームは実際に多く存在します。

C.ゲーム性を強化する

選択肢によってストーリーが分岐するようになったり、キャラクターの好感度が増減して結末が変化するようになれば、ゲームとして楽しめる可能性が高まります。
ただし原作の雰囲気が損なわれる恐れがあり、なおかつ制作にかかる労力が大きく跳ね上がります。

4.文章の方向性

A.原作を再現する

「勇気の推理」シリーズは突飛なストーリー展開が特徴ですが、突飛であると感じる一因として「"作者の頭の中ではわかっているが、読み手には全く伝わっていないまま話が進むこと"がよくある」という点が挙げられます。
例としては1作目に登場する美紀が、太美を死に追いやった動機についてです。
劇中では「教室で太美がダイエットの話をしている際に、美紀の手が震えていた」という描写がありますが、なぜ手が震えていたのか最後まで説明されることはありません。
しかし作者のご友人のポストによれば、「『手が震えてる』の一行で“自分の引き立て役である太ってる女子が痩せるかもしれないという女の嫉妬心"が動機なことくらい、普通分かるでしょう?」と言われたとのこと。
これを再現すること自体、あるいは良い塩梅にするのもまた難しいところではありますが、"らしさ"を感じさせることができる大きなポイントでもあります。

B.通常の文章にする

普通に読める文章にすることで、余計な引っ掛かりを排除して作品自体を楽しんでもらえる可能性が高まります。
"らしさ"が損なわれる恐れはありますが、描写や展開でカバーすることはできるでしょう。
また、作者としては読みやすさには腐心しているようで、いわく「余計な風景描写などが入ると読みにくい」とのこと。そういった最低限のこだわりは守っていればそれらしくなるかもしれません。

最後に

幼い頃から「RPGツクール」などに親しんできた身として、今回のようにゲーム作りについて考えることはとても楽しいです。自分の好きな配信者がそれに取り組むということで、少々はしゃいでいるところがありますがどうかご容赦いただきたいと思います。

カミカミちゃんの視聴者さんの中には実際にゲーム作りの現場に携わっている方や、各方面のプロフェッショナルもいらっしゃるので、カミカミちゃんの強い味方になってくれることでしょう。
風変わりなゲームを好んで実況配信するカミカミちゃんと「勇気の推理」シリーズのファン層の相性は悪くないと思いますので、今回の件で面白い化学反応が生まれることに期待しています。


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