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おそろしきもの


夏は夜。
窓をほそく開けると、
鼻の奥に
甘い山ゆり、
湿った苔と月の光、そして
しんと冷えた墨汁を混ぜた、
闇がながれこんでくる。
ねむれねむれと囁かれても、
頭は冴えてゆくばかり。
そり、と頬に怖気がはしって、
もう二度と
もとの世界に戻れまいと思う。

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