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第4次スーパーロボット大戦によって、オーラロードは開かれた!

一番強いロボットは何だと思うかと聞かれれば、そんな難しい質問には答えられないと返すが、一番好きなロボットは何かと聞かれれば、聖戦士ダンバインに登場するオーラバトラーと答えるだろう。ちなみにどちらの質問も聞かれたことは、ない。


聖戦士ダンバインは80年代に放映された少し昔のロボットアニメで、異世界に召喚された青年が、その世界のゲリラ戦などの紛争に巻き込まれる形でロボットに乗り、活躍していく物語である。オーラバトラーとは、人間の「オーラ力」(オーラちから、と読む)を増幅したエネルギーで動作する10メートルに満たない小型の人型ロボットの総称である。
アニメ本編も非常に面白いのだが、聖戦士ダンバインや主人公が乗るダンバインをはじめとしたオーラバトラーを知ったのは、第4次スーパーロボット大戦というゲームがきっかけだった。
スーパーロボット大戦とは、様々なアニメに登場するロボット(ガンダムやマジンガーZなど)たちが集結して敵勢力を退治する、といったフォーマットのシミュレーションロールプレイングゲームのシリーズで、第4次スーパーロボット大戦はそのシリーズのひとつの作品である。
このゲームに登場するロボットは各種のパラメータが設定されており、そのパラメータの値がそのロボットの特徴として表現されている。強力なロボットは以下の特徴に大きく分類される。
①装甲(防御力)とHPが高いが、運動性(回避力)が低い
②運動性(回避力)が高く、装甲(防御力)とHPが低い
要するに、装甲及びHPと運動性はトレードオフの関係にある。
①若しくは②をバランスよく満たし、攻撃力がそこそこあれば、強力なロボットとして活躍が期待される。
以上がこのゲームにおけるロボット性能の一般論なのだが、オーラバトラーはこの一般論に当てはまらない。
オーラバトラーの特徴は、装甲が高く、運動性が高いのである。HPは若干低めに設定されてはいるものの、回避性能が高いためほとんど被弾することはなく、万が一被弾したとしても装甲が高いため、一撃で撃沈することもあまりない。
これだけでも強いのにここからさらに3つも反則級のオプションが付く。
1つ目は分身というスキルで、条件が整えば(すぐに達成できるゆるい条件)50%の確率で攻撃を回避してくれる。基本性能でさえ当たらないのに、そのうえ分身まで発動するとほとんど被弾しない。
2つ目はバリア機能(オーラバリア)である。ビーム系統の攻撃を無効化してしまう性能を持っている。ただし、非常に強力な攻撃(例えばボスクラスの攻撃)については無効化できないという制限付きではあるものの、通常の戦闘におけるビーム攻撃であれば仮に被弾したとしても、ほとんどの場合、無傷で済むことが多い。
3つ目は強力な攻撃(いわゆる必殺攻撃)にかかる消費エネルギーがゼロであること。通常、攻撃力の高い攻撃ほど、エネルギー消費が高かったり、弾数が極めて少なかったりとトレードオフの関係にあるのだが、オーラバトラーは無尽蔵に強力な攻撃を放つことが可能である。

当時まだ小学生だった私はガンダムのようなメカニカルな線のロボットこそかっこいいと思っていたが、本作に出てくるオーラバトラーはどれも虫のようなデザインをしており、第一印象としては正直あまりかっこいいとは思わなかった。
しかし、このゲームで反則のように強いオーラバトラーはわたしを虜にした。オーラバトラーは強くてかっこいい、心からそう思った。
とはいえ、反則なまでに強く設定されている理由はよくわからなかった。なぜ、マジンガーZでも、ガンダムでもなくオーラバトラーなのか。しかし、そんなことはどうでもよかった。強くてかっこいいオーラバトラーを駆使してゲームを攻略することのほうがはるかに大事だった。その後、本作を何度もプレイし、オーラバトラーはその度、大活躍したのだった。

大学生の頃にようやく聖戦士ダンバインのアニメを鑑賞することができたが、正直、最初の数話ではオーラバトラーの強さを感じることがなかった。
そもそもオーラバトラー同士で戦闘をしているわけだから、強さは伝わりづらいのかもしれないが、それにしても肩透かしを受けた印象だった。これがあのオーラバトラーなのか。
さらに、オーラバトラーは現地の虫の外殻に、召喚された現代人が作った兵器らしい。なんとも微妙なテクノロジーな感じがして、おおよそ強力なロボットの印象とはほど遠かった。
一方、物語は面白く、どんどん話数は進んだ。
そして第16話「東京上空」第17話「地上人たち」で物語は意外な展開をみせた。
敵との戦闘の最中、突如として現代に舞台が移ったのだ。この作品は中世ヨーロッパ風の異世界の物語が続いていくと思っていたので、現代に逆戻りするシナリオに非常に驚いた。
現代に移ったその後も戦闘は続いていたのだが、その過程で、オーラバトラーの撃った1発の攻撃で、東京の街(セリフによれば新宿)全体を火の海にしたのだった。異世界の環境では、それらの攻撃力は森の木々を燃やす程度の火力しかなかったはずだと、私も、主人公も思ったため、威力のギャップにふたりして驚いた。
説明によると、地上(われわれの住んでいる世界)にはオーラが満ち満ちているらしく、オーラマシンによる攻撃は異常に増幅されてしまう、らしい。それっぽい理由である。
しかしながら、異世界であるとはいえ、中世ヨーロッパ風の世界観である。そこに現代人がもたらした科学技術のほんの一部を導入したに過ぎないと考えていたのに、現代兵器と同等以上のものが開発されていたことが非常に面白く感じた。
そして同時に、すっかり忘れていたが、積み残していた疑問が解決した。
やはりオーラバトラーは強かったのだ。
第4次スーパーロボット大戦でのオーラバトラーの驚異的な性能は、まさに原作に忠実だったのだった。開発者もおそらく火の海になった新宿に衝撃を受けたのだ。だからこそゲームバランスを壊してでも、原作のままオーラバトラーの強さを表現したかったのだと、勝手にシンパシーを感じた。

スーパーロボット大戦シリーズはコンセプトからわかりやすく二次創作作品である。
聖戦士ダンバインはアニメ物語本編そのものがとても魅力的であるが、第4次スーパーロボット大戦におけるオーラバトラーの強さが魅力を大いに増していることは明白だ。少なくとも私にとっては、オーラバトラーの強さに惹かれなければ、アニメを観ようとは思わなかったかもしれない。このゲームでは作品の魅力のうち、オーラバトラーの強さを抽出し、その結果として、アニメ本編へのエンゲージに効果的に機能した。


その後のスーパーロボット大戦シリーズに、ダンバインやその他のオーラバトラーが登場していることがあり、私は必ずチェックしている。しかし、他のシリーズ作品では、十分強力ではあるのだが、ある意味健全に性能が弱体化しており、結果として第4次スーパーロボット大戦のオーラバトラーの性能がバランスブレイカーとして際立っている。ゲームとしては、バランスが良いほうが、ゲームとして素晴らしいのだろうと思う。しかし私の一番のお気に入りは反則のように強い、第4次スーパーロボット大戦のオーラバトラーなのだ。


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