60. 大企業病の正体

先日、大企業と仕事をした人の話を聞いていて、自分的には「あるある」と思うことが、予想外な人もいるのだということに気づいた。

いわゆる大企業病と、それによって引き起こされる結果の話だ。

せっかく大企業からスタートアップまで働いたことのある身なので、そのへんを書いてみよう。

なお、これらは全ての大企業に適用されるものではないが、特に大手製造業はだいたいこんな感じになっていると思う。

セクショナリズム

まず、大企業というのは全体最適を失いがちだ。

例えばこんな会話が当たり前になる。

営業「この機能がなくなったらうちの製品を使ってくださってるお客さんに顔向けできないよ!売りづらくなるし!絶対なくしちゃダメ!」

品質管理「バグはとにかく出さないでくださいよ。報告とか色々大変なんですから」

企画「ぼくが考えた最強の企画を承認通しましたから、この機能をつけましょう。その他の機能は全部前のモデルから据え置きです。だって、その機能が欲しい人がいたからつくられてきたんでしょう?営業もなくすなって言ってるし。昔の話はわかんないので、手を入れたくないです」

ソフトウェア開発「このモデルの開発予算はこれだけです。だから、予算に収まるように機能を調整してくださいよ。品質基準もこのぐらいだとしたら、このぐらいお金かかりますね」

皆、勝手なことを言い放題である。なにがおかしいか、大企業の人にはわからないかもしれない。

要は「自分たちに与えられた仕事を満たすこと」が最優先であり、ユーザーは不在なのだ。

年功序列

大企業で働いていると、例えばこんなルールが存在していたり、こんな現象が起きたりする。

・28歳になるまで昇格試験を受けることができない(なので、昇給も小さく、場合によってはチームリーダーを務められないようになっていることもある)
・26歳のリーダーより、31歳の部下のほうが手取りが1.7倍ぐらい多い

これがどこかおかしいことは、誰でもわかると思う。当然、優秀な若者はどんどん辞める。

変えられないもの多すぎ

大企業には、変えられないものが多い。そして、実際ほんとうに変えられないのかどうかは、誰も知らない。

歴史を積み重ねる中で、なぜそれが必要になったのかがわからなくなっているものが非常に多い。

それに従っている人数も多いので、もし変えて何か悪いことが起きたら?と考えてしまう。

そして、誰も責任を取る気はないので、変えるのをやめておこうとなる。

変革できない企業がどうなっていくかは、最近の製造業の会社を見ていればわかる通りである。

実際、なにかを変えるのは不可能なんじゃないかと思ってしまうぐらい大変なので、正しく正しいことをやりたい人は「じゃあここでやるより外に出たほうが早いや」となってしまう。

真面目

大企業の社員の傾向は、真面目だ。

「ルールでこうなっているから、それを守る」が第一優先である人が多いと思う。

だが、逆に例外をつくって突破するようなことができない。

たとえ成果が出なくても、ルールを守ることのほうが大事なのである。

そして、「俺たちは"真面目に"仕事をしたのだから、会社も"真面目に"昇給を果たしてくれよ」と主張するのだ。成果が出ていないから原資がないとかは、自分たちには関係がない。

成果が出る出ないに関わらず、"真面目に"仕事をすることが自分たちのやるべきことなのだから。


かなり大企業をディスった内容になってしまった!が、今回はたまたまアレなところを取り上げただけで、悪くないところもあるし、当然だが全ての大企業がこうなわけではない。

個人的には、死にゆく大企業と、なぜそうなるのかをリアルに目の当たりにできた経験は、マネジメントの仕事をするうえでとても大きい学びだった。特にスタートアップにはそういう経験値を持っている人が少ない。

今はVUCAの時代だと声高に言われるが、なぜわざわざそんなことを言うのかは、一度大企業をリアルに体験してみると腹落ちすると思う。

以上!

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