友達がバイトを辞めた

アルバイト先の同い年の友達が辞めた。
理由は、職場の人間関係に嫌気が差したからだと言う。

彼女はいつも冷静で、物事をよく見ている子だった。いくつか他の職種も経験してきたという彼女は、この職場が他と違う部分が多く魅力的だったと語った。単純に時給が良く、もう慣れたからという理由で続けている私にとっては新鮮な意見であったし、いかに自分が何も考えていないかを思い知らされた。

きっかけは、ある土曜日の閉店後のことだった。
業務中、彼女と同じ業務に入っていた社員同士が仕事上の問題で言い争っていたらしい。その時の口調や、周りに配慮をしないが故にどんどん悪くなる空気感に辟易としたそうだ。

私は今回、なにも人間関係の難しさについて語りたいわけではない。この話には続きがある。

実は、その日は私が別の友人との約束があって休んだ日だった。
元々私は毎週土曜日にシフトを入れているのだが、その日は前々から友人と出かける約束をしていて、シフトを入れていなかった。なので、私に落ち度があるわけではないし、私のせいで彼女が辞めたなどと自意識過剰なことを言うつもりもない。
ただ、毎週土曜日私が入っている業務を、彼女が私の代理で入った。その代理の業務の時間に起きた出来事で、彼女は仕事を辞める決意をした。

きっと、誰が悪いという話ではないだろう。
その言い争っていた社員達も、なにも私的な問題で喧嘩していた訳ではない。
私がその日いなかったのも、前々から決まっていたことである。
そしてきっとその言い争いも、私から見れば何てこともないことだっただろう。その業務はトラブルが起きやすいので、度々空気が険悪になるし、私はそれに慣れてしまった。しかし、彼女に忍耐力が無かったというわけではなく、それが彼女にとっては我慢ならないことだったというだけだ。

つくづく不思議に思う。
人の出会いは奇跡だとか、よく見るクサイ文句だと思っていたが、人の出会いも別れも偶然の積み重なりであるのだ、と。

もし、私が通常通り出勤してその業務に入っていたら。もし、トラブルが起きていなかったら。
そうでなかったとしても、彼女がこの職場に嫌気が差すのは時間の問題だったのかもしれない。そもそも、大学生の間のアルバイトなのだから、あと一年もしたら辞めてしまうのに。

結局長々と語って「人との出会いと別れは偶然の積み重なりである」だなんて結論はあまりにつまらないのだが、今回の出来事ほどそれを感じさせられた出来事は無かった気がする。
「人の縁は案外簡単に切れてしまうから気をつけろ」と散々親に忠告されてきたが、その忠告がやっと実感として伴った瞬間だった。

この話をどうにかして小説にしたいけれどどうにも難しいな、と四苦八苦している。

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