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【特集】第26回参院選(2022年)参政党――それは「追い風」を失った

 参政党は極右政党の一つとして挙げられることが少なくありません。確かに掲げる政策や、演説で述べられる歴史認識などからはそうした面がうかがえます。代表の松田学氏も、かつては次世代の党に所属していた政治家です。しかし他方で、参政党の支持者は独特なメンタリティをもっており、その点を察知しなければ今の社会の一角を見誤ってしまうと思われます。

 文字通りの極右というならば、核武装や排外主義を真っ向から掲げる日本第一党や新党くにもりを挙げることができるでしょう。しかしこれらはほとんど有権者からの支持を受けておらず、第26回参院選(2022年)でも当選ラインには全くおよばない結果に終わりました。それらの合計と比べても、参政党の集めた票は桁ひとつほど違うのです。それどころか参政党の得票数は、かつての国政政党である次世代の党や日本のこころ、保守党や保守新党が臨んだすべての選挙を超えています。それがなにゆえなのかということに答えなければなりません。

 参政党は2020年4月に結成された政党で、国政選挙に臨んだのは第26回参院選(2022年)のみであるため、情報の不足は否めません。したがって仮説にとどまる指摘が多くなりますが、ここでは出口調査、世論調査、選挙結果の地域的な分析などを総動員してその実態に踏み込むことを試みます。


参政党の票はどこから来たか

 まず、第26回参院選(2022年)で参政党に集まった票の内訳を検討してみましょう。次の図1は、明るい選挙推進協会による第26回参議院議員通常選挙全国意識調査をもとにして、「第26回参院選(2022年)で参政党に投票した人が、第49回衆院選(2021年)でどこに入れていたか」を逆算したものです。

図1. 第26回参院選(2022年)で参政党に集まった票の内訳
データは第26回参議院議員通常選挙全国意識調査(出典)p.43 表5-4を用いました。

 この図1は、棒の全体が参政党の票となっています。その内訳を見たときに、27%が第49回衆院選(2021年)の自民から流れ込んだ票、19%が当時の維新から流れ込んだ票、などとなっているというわけです。回答数が少ないことに留意が必要となりますが、参政党は自民党や維新など、右派とみなされる政党から多くの票を取り込んでいたことが示唆されます。

 これとは別の調査も見てみましょう。次の図2は、投票日当日の開票速報(TBS NEWS DIG)で報じられたTBSとJX通信の共同調査によるもので、参政党支持者に前回衆院選での投票先を質問した結果となっています。

図2. 第26回参院選(2022年)で参政党に集まった票の内訳
データはTBS・JX通信の共同調査を用いました。

 図1の「投票しなかった」や「わからない」がないぶん、図2では各政党が占める割合が大きくなっています。また図1と図2では維新、公明、共産などに差があります。この違いはひとまず受け入れることにして、そのうえでなお言えるのは、参政党は自民党などの右派政党から多くの票を取っているものの、一概にそればかりでもないことです。

 また、れいわ新選組から一定の票の流れがあったことは2つの調査で共通しています。従来れいわ新選組を支持してきた人たちには、反グローバリズムの意識をもつ層や、原発事故を通じて集まった環境や健康に高い関心をもつ層が含まれていました。それらの一部がコロナ対策に違和感を持ち、参政党に流れたという解釈は特に無理なく成り立ちます。しかしながら参政党は「次世代原発の推進」を公約の一つとしているため、そうした流れは限定的であったといえるでしょう。他方でれいわ新選組は、非科学的な右派層が参政党に流れたことによってスタンスが明確化し、支持が伸びやすくなる条件を得たといえるかもしれません。


沖縄県知事選における投票行動

 情報を補完すべく、また別の調査も見てみましょう。第26回参院選(2022年)で参政党の得票率が最も高かった沖縄県では、2か月後の2022年9月に知事選が実施されました。

 この知事選は、オール沖縄が推薦する現職の玉城デニー氏に対し、自民党と公明党が推薦する佐喜眞淳氏が臨む事実上の一騎打ちとなり、投票の結果、玉城氏が当選を果たしました。ここで玉城氏を推薦したオール沖縄の勢力とは、立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党と、地域政党の沖縄社会大衆党、政治団体の「新しい風・にぬふぁぶし」となっています。

 当時のRBCの出口調査から参政党支持層の投票先を見てみましょう。興味深いことに4割近くが玉城氏に入れているのです。

図3. 沖縄県知事選 参政党支持層の投票先
データは当日のRBC開票速報によります。

 この選挙が行われているあいだ、右派はインターネットで中国の脅威を煽るなどして玉城氏を攻撃し、佐喜眞氏への投票を促していました。もしも次世代の党や日本のこころが今もあったなら、支持者の票が佐喜眞氏にまとまるのは想像に難くありません。けれど参政党の支持者の票は一概にそうは動きませんでした。

 このことは逆の側からいえば、第26回参院選(2022年)で参政党がオール沖縄の支持層の一角も取り込んでいたことを意味します。参政党副代表の神谷宗幣氏も、2022年8月18日に放送された日本テレビの深層NEWSで次のように述べています。

「この間、私、那覇に入りまして、沖縄の党員と話をしていたんですね。皆さんどう分析していますかと。今回、参政党に入れてくれた人たちは保守の票ですかって聞いたら、6割くらいは保守票だと思うと。4割はオール沖縄の方から来ていると、要はリベラルの方から来ているというふうに彼は分析していましたね」

 この沖縄の党員の分析は、沖縄県知事選の出口調査を一か月前にほぼ予見していたことになっており、妥当であったといえそうです。


地方では立憲や共産と歩調を合わせることも

 統一地方選(2023年)をはじめとして、各地の議会選で参政党の議員が誕生していますが、そうした議員は議案等の採決の際、一概に自公と投票行動をともにしているわけではありません。たとえば三鷹市議会において、参政党の蛯澤征剛氏は以下の意見書について立憲、共産、れいわと歩調をあわせた投票行動をしています。

●専守防衛を遵守した『武器輸出三原則』に立ち返ることを求める意見書
●防衛財源確保法の廃止を求める意見書
●マイナ保険証の運用中止と健康保険証廃止方針の撤回を求める意見書
●消費税インボイス制度の2023年10月からの実施について再考を求める意見書

三鷹市議会「令和5年第2回定例会審議結果」(出典)にもとづきます

 地方の参政党の議員や候補者にはこうした振る舞いがみられることがあります。しばしば「自民の補完勢力」といわれる参政党ですが、そうした描き出し方は必ずしも的確ではありません。また、そもそも参政党は第26回参院選(2022年)で全選挙区に擁立しているので、選挙では文字どおり自民党と競合する関係を持っています。


果たして極右と言えるのか

 いよいよ核心となる調査を見ていきます。参政党に投票した人たちは、他の政党と比べてどれほど右派的といえるのでしょうか。

 次の図4には、第26回参議院議員通常選挙全国意識調査より、投票政党内保革構図を示しました。これは、それぞれの政党に投票した人たちについて、自らを保守と革新のどちらだと考えているかを調査したものです。

図4. 第26回参院選(2022年)投票政党内保革構図(比例代表選挙)
データは第26回参議院議員通常選挙全国意識調査(出典)p.52 図6-2を用いました。保守を右に、革新を左に置いた方がこの後の議論に適するように思われたので、配置を入れ替える加工を行っています。

 それぞれの政党に投票した人たちの性格を簡単に位置づけるため、「革新的」を-2、「やや革新的」を-1、「中間+わからない」を0、「やや保守的」を+1、「保守的」を+2として加重平均し、数直線上に表示してみましょう。

 加重平均とは、たとえば参政党については 7.7×(-2) + 15.4×(-1) + 42.3×0 + 11.5×1 + 23.1×2 = 26.9 という計算をするわけです。これはあくまで一つのやり方であることに留意が必要ですが、結果として各政党は次の図5ように並びました。参政党に投票した人のイデオロギーは右端に位置する自民党よりかなり中央に寄っています。

図5, 第26回参院選(2022年)投票政党内保革構図の加重平均


 参考までに、第48回衆院選(2017年)について同様に計算したものを図6に示しました。日本のこころは次世代の党の後継政党にあたり、この時期は敗北に敗北を重ねた成れの果ての状態であるものの、自民より右に位置することがうかがえます。

図6, 第48回衆院選(2017年)投票政党内保革構図の加重平均


自民の右に立ってはならない

 かつて自民党に過剰に政策を寄せた政党や、自民の右に立とうとした政党はことごとく失敗の道を歩みました。たとえば2014年に、日本維新の会(旧)の分党によって2つの政党ができています。一つが橋下徹派38人が結いの党と合流する形で結成した維新の党で、もう一つが石原慎太郎派22人が結成した次世代の党です。その年のうちに行われた第47回衆院選(2014年)で両者の明暗はくっきりとわかれました。維新の党が議席をほとんど維持したのに対し、次世代の党は選挙前の議席の9割を失って見る影もない弱小政党に転落したからです。次世代の党は後に「日本のこころを大切にする党」に改称しますが、第24回参院選(2016年)や第48回衆院選(2017年)でも一人の当選者も出すことができませんでした。

 また、保守党と保守新党についても簡単に触れておきましょう。保守党は2000年に作られた政党です。結党時に所属していた20人の衆院議員は2か月後の第42回衆院選(2000年)で3分の1に減少し、続く第19回参院選(2001年)でも敗北を喫しました。再編を経て保守新党と改称するものの、第43回衆院選(2003年)でも議席を半減させて解党となっています。

 これらの政党はなぜこのような運命をたどったのでしょうか。たとえば次世代の党は、自主憲法の制定や国防軍の新設、愛国心教育、原発再稼働などを掲げて第47回衆院選(2014年)に臨みました。しかしそのような主張は自民党内の右派のグループと重なります。それと同じようなことを後からできた政党が主張したところで、1955年の結党以来の歴史と実績、全国的な利権と組織力を持つ自民党に対抗できる道理はありません。それでは逆に自らの票を自民党に奪われる結果に終わるのです。

 ぼくはこのことを指して「政党のデスゾーン」という仮説を立てています。デスゾーンとは元々は登山用語で、エベレストなどの高度8000メートル地帯の、滞在するだけで致命的な消耗をする領域を指しています。

政党のデスゾーン
 自民党には、その引力によって他の政党を粉砕してしまう領域があり、スタンスを寄せた政党は生き残れなくなるという仮説。かつての次世代の党、日本のこころを大切にする党、保守党、保守新党が臨んだ全ての国政選挙で惨敗したことによる。

 あらゆる政党は、その勢力の大きさに応じて、近傍に競合する領域を持つと考えられますが、なかでも自民党のそれは大きく、「政党のデスゾーン」を形成しているというわけです。もっとも、これはかなり曖昧な言い方なので、党と党の距離感をどう評価するのが適切なのか、何をもって近傍とするのかということはいずれ定める必要があります。

 国民民主党の分析(第26回参院選(2022年)国民民主党――それは「野党」と呼べるのか)で取り上げた例のように、相対的に左側からある程度、自民党に寄せることによって票を得ることはありえます。しかし、自民党と立ち位置を重ねることや、さらに右に立つことは、これまでの政党勢力の推移を振り返るかぎりほとんど不可能に思われます。

 この点において、参政党は自民党と一定の距離感をとっています。右派と左派、保守と革新という座標軸においては、参政党は次世代の党や日本のこころとはかなり立ち位置が異なります。

 あるいは次に触れるように参政党の支持者には若い世代が多いため、こうした座標軸で支持者の性格をとらえることそのものが難しいのかもしれません。そしてその点が、参政党がデスゾーンに抵触しないバランスを生んでいます。


若い世代の支持

 すでに図1や図2で、参政党が自民党をはじめとする右派政党の票を多く取り込んだことを見てきましたが、自民党に投票した人といっても、イデオロギー的に支持している人から、単に選挙に行きなさいと言われて知っている政党を書いた人まで様々です。参政党はその全体から満遍なく少しずつとったのではなく、特定の一角を取り込んでいるはずです。

 NNNと朝日新聞が第26回参院選(2022年)でそれぞれ実施した出口調査からは、参政党に投票した人には若い世代が多いことが示されます。

図7. 参政党に投票した人の世代分布
データはNNNの出口調査(出典)と、朝日新聞の出口調査(出典)によります。

 昔の若者は地縁・血縁や、会社の同僚、労働組合などの人間関係の中で政治的な立ち位置が規定されていました。けれどそうした世代はすでに高齢になっており、今の若者は保革の対立とも無縁な、イデオロギー的には薄弱な層になっています。すなわち参政党が取り込んだのは、世代としては総じて若く、イデオロギー的には薄い層だと考えられるのです。

 なぜ一概に「自民の補完勢力」と言えないのか、第26回参院選(2022年)で保守政党の票を多く取り込んだのにもかかわらず、なお存在する自民党との距離感は何なのか。答えはこの辺にありそうです。

 参政党が自民党の票の一部を取ったといっても、決してそれは伝統的な保守層や、強く右派的な支持層を取り込んだわけではありません。地方議員としても、別に右派的な路線が支持者に響いたから通っているわけではありません。だから採決の際に立憲や共産と同じ投票行動を示すことがありえるし、支持層の性格も次世代の党や日本のこころとは異なっていて、政党のデスゾーンにも抵触していないという見方ができるのです。

 では、参政党の支持者はなぜこの党に惹かれたのでしょうか。その支持の根幹はどこにあるのでしょうか。


透明なシンボル

 第26回参院選(2022年)で行われた各党の街宣を見返すと、候補や看板、選挙カーなどを隠しても、参政党の支持者は明確にそれと判別できる特徴を一つ持っています。マスクを着けていないのです。それは当時としては2020年から続いたコロナ対策への否定にほかなりませんでした。

 演説に集った支持者といっても、オレンジ色(参政党のカラー)のグッズをそろえていた人はあくまで一部にすぎません。けれど当時の支持者たちは、一人一人がノーマスクという透明なシンボルによって連帯のサインを送り合えたのです。それは日々の生活に最も密接に結び付く形で行えた意思表示でもありました。体制への違和感や閉塞感を抱く人たちにとって、仲間意識を生む象徴となっていたことは想像に難くありません。

 参政党の候補者は、マスクやワクチンの有効性を否定する演説を繰り返してきました。松田代表にいたってはワクチンを「兵器」と呼んで非難したほどです。もちろん、ワクチンを打つか打たないかは、それぞれの人の健康状態や生活環境などの条件によって、どちらも合理的な判断となりえる事柄です。しかし参政党の支持者には、ノーマスクでいることを誇りとし、打たないことをアイデンティティのようにしている人がいることを指摘しなければなりません。このことを世論調査から捕捉することは困難ですが、次のようなデータであれば提示することができるのです。


ワクチン忌避層との相関

 以下の図8は、第26回参院選(2022年)の参政党の相対得票率を縦軸に、投票日当日までにワクチンを接種しなかった人の割合を横軸にとって、47の都道府県を散布図として描画したものです。この図では一つの点が一つの都道府県に対応します。

図8. コロナワクチン非接種率と参政党の相対得票率(比例代表)
非接種率は、デジタル庁「新型コロナワクチンの接種状況」(出典)によります。

 図8の点のまとまりは右上がりの分布となっており、ワクチンを接種しなかった人が多い地域ほど、参政党の相対得票率が高くなる傾向が示されます。沖縄県を含む相関係数は0.681、沖縄県を除く相関係数は0.617でした。これはいずれも、統計においては相関があるとみなされます。

 なお、類似の関係は同志社大学の飯田健氏によって先に確認されており、ここで掲載したものは後追いにあたります。ただし飯田氏がワクチン3回の接種率との相関を調べているのに対し、ここでは非接種率を用いました。ワクチンの接種は投票日前後にも進められていたため、3回接種では自治体ごとの普及状況の影響を受けます。しかし1回目の接種に関しては投票日当日の全国集計が77.29%であるところ、2023年8月20日時点でも77.99%となっており、1回も接種しない割合は投票日の時点でほとんど固定していたと考えることができます。それはおそらく、都道府県ごとの高齢化率や若年層の比率、県民性などによっているのでしょう。そこで図8のように非接種率を用いると、やや相関は明瞭となります。なお飯田氏の研究では、沖縄を含む相関係数が-0.651、沖縄を除く相関係数が-0.601とされています。

 もっとも、ワクチンを接種しなかった人の多さと比べて参政党に投票した人は少なく、両者は桁ひとつ違っているので、こうした統計の見方には十分な注意が必要です。参政党に投票した人と非接種者の関係をとらえるのには、世論調査で直接的に質問をかけるのに越したことはありません。


低下するコロナ意識

 参政党が支持を得たことに新型コロナの要因があることを間接的に見てきましたが、それでは新型コロナに対する人々の意識は最近どのようになっているのでしょうか。

 日経新聞の世論調査より、政策課題の質問を見てみましょう。政策課題とは、「首相に期待する政策」「自民党総裁に期待する政策」「首相に処理してほしい政策課題」などとして聞かれたもので、時事的な関心の推移がうかがえます。時期によって質問文はやや異なりますが、回答の選択肢に共通性があるため、ここでは一枚のグラフにまとめました。

図9. 日経新聞世論調査 政策課題

 オレンジ色の太線で示した「新型コロナウイルス対策」に注目してください。実にこの項目は、一時は政策課題の調査が行われるようになった1987年以降で最大の関心事となりました。けれども最近は低下が顕著で、ほとんど最底辺に張り付いてきた「憲法改正」を下回る水準となっています。

 これを「コロナ疲れ」と表現することはできますが、踏み込んで直言するならば、新型コロナの蔓延という事態から目を背けることしかしなかった政治の敗北の軌跡でしょう。疲れてもウイルスは存在するし、命は失われ続けます。現在は第9波の深刻な感染のさなかにあり、医療が逼迫していることを統計は日々示し続けています。政治はこの深刻な事態と向き合って、人々の命と健康を守らなければなりません。しかしながらそうした対策を、与党はおろか、主要な野党もまた、都合よく見ないことにして忘れようとしているありさまです。


それは「追い風」を失った

 この政治の無残な状況は、しかし、参政党にとっては不利な条件となりました。政治の側が新型コロナを見ないことにして積極的な対応をほとんど放棄してしまった結果、コロナ対応への反発が参政党の追い風になることも今後はおこらなくなるからです。

 第26回参院選(2022年)の後、ABEMA Prime開票速報のなかで副代表の神谷氏が「2類から5類に下げるべきだし、マスクももう外していい」と述べたシーンがありますが、現在は自民党の主導で5類への変更が行われ、人々の多くがマスクを外すようになっています。そしてその結果、参政党はノーマスクという共感を呼ぶシンボルを失ったわけです。

 イギリスがEU離脱(2020年)をするまでに、離脱が多数となった国民投票(2016年)の結果をただちに反映しない政治にいらだった人々の支持が「ブレグジット党」に集まるというできごとがありました。この党の支持は急速に伸び、2019年の5月から6月には、二大政党の保守党と労働党をしのぐほどになります。しかし7月にテリーザ・メイ氏からボリス・ジョンソン氏に首相が交代して離脱の見通しが定まると、ブレグジット党の支持率は急落に向かいました。掲げた目的が実現するならば、その政党に集まった支持は再び散っていくからです。参政党が今後も支持者をつなぎとめておくためには、コロナ以外の争点を作っていくことが不可欠になるでしょう。


直近は支持を伸ばせていない

 以上がおおむね、参政党が支持を得て、また直近で伸び悩んでいることにたいする答えです。

 結党以来の参政党の支持率を振り返ってみましょう。

図10. 参政党の支持率の推移
各社世論調査の政党支持率について、固有の偏りを補正した後に平均をとっています。

 現在、参政党の支持率は、いまだ次期衆院選で議席獲得の可能性をもつレンジにあると考えられますが、勢いがあるとはいいがたいものになっています。地方選挙で議員が誕生していることについては、代表や副代表が入るなどして正面から突破しているケースもあれば、無風の選挙区に擁立して取っているケースもあるため、これも単純に数では評価できません。

 ここで自民党と参政党の支持率を合わせたものを図11に示しました。こうしてみると自民党と参政党の支持率はいかにも差があるようですが、参政党の支持率が過小評価されがちな点には留意が必要です。これは、若い世代ほど世論調査への回答率が低いため、参政党の支持者が捉えにくいことによっています。

図11. 自民党と参政党の支持率の推移

 自民党の支持率は、昨年は旧統一協会の問題や国葬などによって、今年の6~7月には保険証問題や物価高、増税路線や相次ぐ不祥事で落ちています。産経新聞などは「先の国会で成立したLGBTなど性的少数者への理解増進法の影響で『岩盤保守層』の離反を招いたとの見方が根強い」(7月25日)と書いています。しかし産経は、この時期に右の側から一貫してLGBT法に反対した参政党の支持率がわずかでも上がっていないことを見落としたようです。

 いわゆる右派や、右派が言う「保守」の路線をめぐって自民の支持が動くことはほとんど考えられません。すでに述べたように政党のデスゾーンの論理があるからです。たとえばLGBT法に反発した百田尚樹氏が新党をつくると言ったところで、かつて石原慎太郎氏が最高顧問となった次世代の党でさえ比例で1議席すら取れなかったことを思えば結果は目に見えているのです。

 右へ、極右へと寄せていっても支持も票も伸びません。そうしたイデオロギーで野党が得るのはわずかな票にすぎません。しかし参政党は第26回参院選(2022年)で、新型コロナを媒介にして一時的に大幅な票の搭載を得るチャンスを得たのです。そしてだからこそ、いま伸び悩んでいる――今回、浮かび上がってきたのはそうした姿でした。ですから参政党は、勢いがあるように描かれることが多いものの、その前途は多難なものとなるでしょう。全体的な情勢としては、こうした条件のなかで次期衆院選に臨むのです。


 以上で前半部分の議論を終わります。後半では、参政党の票の分布を地理的に検討し、次期衆院選にどのように臨もうとしているのかを分析します。また、環境政党や、次世代の党、旧統一協会との関係を全市区町村の票の検討によって議論します。ただし旧統一協会については、現段階では明確な結論が得られないという結果になりました。これは無関係であるということではなく、ぼくのアプローチのしかたと探索力の限界から分からなかったということです。分かることを分かる限りで論じ、分からないことを分からないと言うのはぼくが守るべき一線ですから、このようにするしかありません。その点はご了承ください。

 みちしるべでは現在、各政党の選挙分析をとりあげていますが、個別の選挙や政党に限る話が内容の全てではありません。それらを通じて、今の社会はどのように見えるのかといった全体像の把握、何をすれば変わるのかといった展望を描くことを目指します。ぜひ各政党の記事を読んでみてください。

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三春充希(はる) ⭐第50回衆院選情報部

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