年末調整ってなんだ?意味を知ると大事な手続きだと分かります!
この記事は令和5年10月に書いております。これをご覧になっている方のお手元に保険会社から保険料控除証明書が送られてくる頃です。また、会社員の方は事務の方から年末調整の書類を渡される時期でもあります。
普段は税金に関心が無い方も、否が応でも「税」に関わる時期が年末調整と確定申告の時期です。また、全給与所得者に関係するので、関わる人数は国内でも最大級の公的手続きの一つと思われます。
「面倒だな」とか「適当にやっとけ!」と思っている方もこの記事を読むと、実は後々まで影響する大事な手続きだと気付いて頂けると思います。この記事では書類の書き方ではなく、手続自体の意味や、どの様に影響するかに絞って書いてまいります。書き方については、記事最後で紹介している動画にてご確認ください。
年末調整の概要
先ず、年末調整とは何なのか?制度の意味についてお話します。年末調整とはお給料をもらっている方の1年間の所得税の額を確定させる手続きです。1年間とは、その年の1月1日から12月31日の暦年のことを指します。
お給料をもらっている方は給料から税金を引かれてます。あの税金は源泉所得税と復興特別所得税と住民税です。年末調整の対象にしているのは源泉所得税と復興特別所得税です。会社は給与から必ず一定額の源泉所得税と復興特別所得税を差し引かなければなりません。しかし、その税金は大まかな概算で計算されています。
また、後述しますが住民税の給与天引きは手続きによって自分で納付することができます。これを「普通徴収」といい、給与から天引きされて会社が代わりに納めることを「特別徴収」と言います。
話を戻します。
源泉所得税と復興特別所得税は大まかな概算で計算されるため、1月1日から12月31日までに支給された給与を元に、正確な税金を計算して、税額の調整をしようというのが「年末調整」です。
年末調整を行う義務が有るのは会社です。年末調整の対象者は、その年の12月31日時点で会社に在籍していて「扶養控除等申告書」という書類を会社に提出した社員です。この場合、正社員、アルバイト、パートなど雇用形態は関係しません。また、個人事業者の家族で青色専従者として給与をもらっている方も対象になります。
ここで、ポイントです。会社が計算しなければならないのは、自社で支給した給料と社員から提出される書類の範囲に限定されます。よって、社員の副業などは計算しませんし、年末調整の対象になっていない医療費控除やふるさと納税の計算もしません。
年末調整で渡される書類の正体は税金を安くしてもらうための申告書
多くの会社員が年末調整を嫌いになるのは、正体不明の書類の存在が主な理由だと思います。一体この書類はなんでしょうか?主な書類は以下の4つになります。
扶養控除等(異動)申告書
保険料控除申告書
基礎控除申告書 兼 配偶者(特別)控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書
1の扶養控除等(異動)申告書は扶養している家族が居ない方でも提出が必要です。年末調整をしてもらうためには扶養控除等(異動)申告書の提出が要件となっているからです。
それぞれの書類の名称についている「控除」とは控えて除くと書きます。この書類の場合は税金の計算上で生じる何かしらの金額を差し引くことを指します。そして、各書類には「申告書」とも書いております。
つまり、これら4種類の書類は税金を安くするための情報を「申告」するための書類です。申告制なので自分でキチンと正確な情報を伝えないと適用されません。面倒だけど、正確な情報の記入と添付書類を忘れなければ得をする書類なんです!
年末調整と確定申告の関係
では次に、年末調整と確定申告の関係についてお話します。勤務先が1社だけで、収入もその会社からの給与のみであれば、殆どの場合、年末調整をやってもらってオシマイです。確定申告の必要はありません。
しかし、副業してるとか、給与とは別に不動産収入が有るとかで、会社の給与以外の収入が有る方は、会社の給与の分は年末調整はしてもらいつつ、給与それ以外の所得を合わせて、確定申告をする必要があります。
年末調整の対象になっていない控除…例えば医療費控除とかふるさと納税をした際に受けられる寄附金控除が有る方も自分で確定申告をしないと税金の還付は有りません。
確定申告は一個人の1年間の所得全体を対象にして税の計算をしているのに対して、年末調整は会社で支給した給与所得のみに絞って税の計算をしていることに違いが有ります。
年末調整は住民税にも影響する
年末調整が全て終わると社員には「源泉徴収票」が渡されます。ここに記載されている情報は1年間、その会社で払った給与や賞与、そこから引かれた税金や社会保険料、更に年末調整の結果と控除に関する情報が書かれています。
源泉徴収票は国に納める所得税と復興特別所得税の計算過程が書かれていますが、住民税のことは書かれていません。しかし、会社は、皆さんに渡した源泉徴収票と同じ内容を税務署と市区町村にも提出します。
市区町村への提出は給与を受け取った方の住民票の在るところに提出します。この源泉徴収票を元に、皆さんから徴収する住民税の計算をします。そして、新しい住民税額は6月から反映されます。つまり、住民税においては令和5年に行った年末調整の内容は令和6年の途中から影響してきます。
年末調整の修正は確定申告でできる
保険会社からの控除証明書を紛失して年末調整に間に合わなかったり、年末調整完了後に配偶者の収入が思ったよりも少なくなって配偶者特別控除の額が増えたりした場合、確定申告をすることで修正ができます。
この場合、年末調整よりも確定申告の内容が優先されます。また、住民税の計算にも反映されます。